『並行世界』へと赴く   作:舞茸の都市

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こんばんわ、舞茸の都市です。


前回出した崩土は個人的にお気に入りだったりするので、この物語にはどんどん関わってきます。信念持ってるふりして屁理屈こねるキャラ、好きなんですよねー。おっと、筆者の悪趣味が露呈されてしまう。自重自重っと…



では、START‼︎


第5話

 

 

 

 

「ねぇ、クロ君。私どうすればいいのかなぁ」

 

「何がだよ。って言っても最近の行動であからさまだな。操司の事か?」

 

「うん。そう」

 

写生大会が始まる前。いつからか優姫は操司に対してもやもやした感情を抱いていた。

 

「私ね、最近操司君に会って話してると、急に鼓動が速くなる事があるんだ。運動した後とも違うし、病気かな、とは思ってたんだけど。なんかそれがさ、操司君を見た時に限るんだよね。

これってさ、いわゆる、恋、なのかな」

 

「しらねぇよ。俺はそんな感情持ったことないからな。でも、そう思うってことはなんか特別な思いはあるんじゃねーのか?」

 

「特別な、感情?」

 

首をかしげる優姫に対して、珱九郎は続ける。

 

「そう。だってそうだろ。もし恋ってもんがただの動悸ですって言われたら世の中のラブストーリーは全部崩れ去ってしまうだろ。そこにある種の特別な感情が有るから、ラブストーリーっていう分野は何百年も不動の位置にいる。それこそ源氏物語の頃からな」

 

恋、という言葉は世の中に広く浸透している。しかし恋について定義をしろと言われると誰もが納得する答えを出せるものは恐らくいない。それは恋というものが人によって感じ方の違う、多面的なものであるからだろう。恋愛小説というのはそうした感情の一部分を見せているに過ぎず、だからこそ飽きられることはない。

 

 

「…………んーーーー、もうわかんないよ、そんなの!」

 

大体それがわからないのだから相談しているのである。

 

「んじゃあ何だ。お前は俺にお前の感情を決めつけて欲しいのか?あれは恋でこれは恋じゃないってか?そんな自身を他人に縛られる行為、嫌じゃないか?」

 

「やだ」

 

優姫の即答に珱九郎はおもわず笑ってしまった。

 

「なら俺が話せるのはこれだけだ。自分が恋だと思ったらそれは恋だ。きっと。だから、自問自答をしっかりして答えを出せ。んで答えが出たらそれに自信を持て」

 

優姫は黙って珱九郎の話を聞いている。

 

「なぁに、焦るな。もしそれが傍から見て絶対恋なんかじゃない!ただのエゴだ!とか思ったら俺が止めてやるから」

 

「……途中まで感動してたけど、最後の言葉はクサすぎない?」

 

「うるせぃ。それが俺なんだ」

 

「ふふ、でもありがと。もう少し考えてみる」

 

そしてあの写生大会である。あの日を境に優姫は完全な自信を持ってこう言えた。"これは恋なんだ"と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*******************

 

 

 

 

あれから優姫は操司に対して何度かアプローチをしてきた。それは操司の心にどきりとくるものであったが、操司はそんな感情を他人に見せないようにしていたため、優姫は効果なしだと誤認する。つまりは、進展がないということだ。

3人はそのまま冬を迎える。

この日の朝もいつも通り3人で登校していた。

 

「そういえばさ、今日は一斉下校日だよね。部活もないよ」

 

「え、ほんと⁉︎コンサート近いのにな」

 

操司は音楽系の部活に所属していたため、冬のコンサートの準備で忙しい。その為、最近は3人で帰ることが少なくなっていた。

 

「そうだな。なら帰りは3人で、か」

 

「久々だねー、操司君も一緒に帰るのは」

 

「2人とももう帰る話?早いって」

 

そんなことも話しつつ3人は登校した。校門前では優姫の友達が話をしており、ばったりと出くわした。

 

「あ、ゆうきー、おはよー」

 

「おはよー!んじゃ2人とも帰りね」

 

「あ、うん……」

 

優姫が離れていった。少し儚げな顔をみせる操司の事を見た珱九郎は小さくため息をつき操司に話しかける。

 

「なぁ操司。お前朝やらなきゃいけないことってあるか?」

 

「ん?ないよ」

 

「ならこのまま俺についてきてもらってもいいか?」

 

「分かった」

 

2人はこのまま一階にある1年教室には目もくれず屋上へと辿り着く。

 

「んで、なに?」

 

「あのさ、お前、俺に隠してる感情があるだろ」

 

操司は急に真面目な顔になって黙る。

 

「俺、分かってるぞ。お前さ、優姫に対して何かしらの感情を持ってるよな」

 

「そんな、優姫さんはただのともだ…「隠すなよ‼︎」」

 

普段滅多に感情を見せて怒鳴る事のない珱九郎の大声を聞いて操司は驚く。

 

「なら今日の朝何でお前優姫が離れていった時にそんな寂しそうな顔してたんだよ‼︎何で最近毎朝俺らと会う時に最初に優姫のこと見て嬉しそうに笑うんだよ‼︎なんで…何でお前は俺に自分の感情を隠そうとするんだよ‼︎!」

 

珱九郎の叫びに思うところがあったのか、操司も言い返す。

 

「だって、そりゃ、言いたくなくなるだろ!僕が言ったらこの関係は崩れる。誰が好き好んでこの楽しい日々を壊しに行くんだよ!

僕には、無理だよ…」

 

操司も自身の優姫への恋心には気づいていた。しかし、今の状況が心地よいばかりに優姫へさらに近づこうとは思えなかった。

その考えを珱九郎はぶち壊そうとする。

 

「なら何か?お前が暴露したら俺と優姫がお前から離れていくとでも思ったのか?そんなに俺と優姫のことが信用できないか?」

 

「それはちがう、違うんだ…」

 

操司は黙ってしまう。

 

「………そうか。お前はさ、自分を信用できてないんだな」

 

珱九郎の指摘に操司は身体を小さく震わせる。

 

「自分のことが嫌いで、自分に自信が持てないんだな。だから、周りのことも信頼しきれない。周りが自分と仲良くしてくれるのはただの社交辞令だって考えが頭をよぎる。そうやって周りに対して自分を取り繕うとしてたんだよな」

 

「………そうだよ。そうだよ!悪いかよ、自分のことが嫌いで‼︎」

 

 

甘野操司は自分のことが嫌いだ。一人称は僕でなよなよしいし、頭がいいとは言っても自分よりも良い優姫だっている。他人の夢を潰そうとする夢まで持ってしまう。そんな自分は社会に必要ないものと心の奥底では感じていた。

そんな操司が考えついた、操司に出来ること。それは自分の思う理想の自分を演じることであった。自分の思う理想の自分になることで(あえて悪い言い方をすれば)周りを欺こうとする。

そのことを露呈されて剥き出しの自分を曝け出してしまう操司に対して、珱九郎はこう続ける。

 

「おまえ、初めて俺に本心を曝け出したな」

 

「えっ?」

 

「ずっと他人に対してフィルターかけてたよな。んで外界と接しないようにって感じだった。フィルターを外せていたのは優姫だけだったな。あいつはきっと気づいてないだろうけど」

 

珱九郎は操司に近づき、手で顔を固定して目を見ながら話し続ける。

 

「ちょ、珱ちゃん?顔が痛いよ」

 

「黙ってろ。いいか、操司。俺は人の感情に対してどうこう言う気はないしそんな権利はない。でもな、お前は別なんだよ。俺にとってお前は親友だから。だから何も気にしてほしくないんだよ」

 

操司は黙って話を聞く。操司にも何か思うところがあったようだ。

珱九郎はそんな彼の目を見て固定していた手を離す。

 

「話はこんだけだ。うだうだするんだったら俺に相談に来いってだけ。んじゃ、教室行くか」

 

珱九郎は戻ろうとするが、操司はまだ考えている。見兼ねた珱九郎が続ける。

 

「そんなにうだうだするんだったら俺が先越しちまうぞ」

 

「………そんな気ないくせに」

 

操司の答えに珱九郎は笑いながら答える。

 

「正気になったらいい。行くぞ」

 

「うん、分かった。

珱ちゃん?」

 

「なんだ?」

 

「…こんな僕のために、ありがと」

 

「はぁ、お前は自分を卑下するの禁止な」

 

「え、それはきついよ〜。僕のアイデンティティが8割なくなる」

 

「嫌なアイデンティティだな、てか残りの2割はなんだよ」

 

「んー、メガネ」

 

「それはうちの中学の8割と被るぞ」

 

「おー、すごい。それって個性の浸透率と一緒じゃん」

 

「視点そこかよ」

 

ようやく普段のようになった2人は教室に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

*****************

 

 

 

 

 

場所は変わり、とあるヒーローの巡回中。

1人の少年が路地裏に入っていくところをヒーローは見る。まだ小さく弱々しい少年の不審な行動を見てヒーローは少年に声をかけることにした。

 

「おい、きみ。1人でそんなところに入るのは危ないぞ!きみは一体何をしようとしてるんだい?」

 

「………ぷっ、あはははははははははははははははははははははは」

 

急に笑い出す子供をヒーローは訝しげに見つめる。

 

「何がおかしい」

 

途端に少年の雰囲気が変わる。

 

「そりゃ、質問の内容だよ、クズ野郎が。

何をしてるんだって?見てわかんないの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーロー狩りに決まってんじゃん」

 

 

直後、ヒーローの頭上にいつの間にかあったコンクリートがぬるりと崩れ去る。

 

「なっ」

 

そのままヒーローはコンクリートの山に埋められてしまう。

本来ヒーローならばこのくらいの攻撃は避けることはたやすいはず。しかし出来なかった。何故か。

胸にナイフが数十本と突き刺さり、足は何かに掴まれていたからだった。

 

「始末、完了」

 

「はーい、皆お疲れー」

 

少年の合図とともにガラの悪い男たちが数人影から出てくる。

 

「んじゃ、この町はもうめぼしいヒーローいないから一旦もどろっか」

 

「はい!了解です!」

 

少年の合図に男たちはそそくさと立ち去っていく。その場には少年と若い男の2人のみが残った。

 

「よくやったな、照久」

 

「いえいえ、あの阿保どもまとめてヒーロー1人ぶっ殺すくらい訳ないですよ。全ては崩土さんのためです」

 

崩土は照久に問う。

 

「…お前の正義はなんだ」

 

この問いに照久は即答する。

 

「僕の正義は崩土さん、貴方そのものです。そんなわかりきったこと言わせないで下さい」

 

「…そうか。なら良い」

 

そんな崩土に対して照久は話しかける。

 

「それより、あの短気な阿保どもは僕らの帰りが遅いと何やらかすかわかりませんから、さっさと帰りましょうか」

 

「そうだな。帰ろう」

 

 

 

この時、源氏照久、既に11歳。あの事件から四年が経っていた。照久と崩土は『ヴィラン盗団』というものを結成する。約60人の大盗団だ。団長は源氏照久、参謀は切屑崩土が勤めている。奪うものは金品というオーソドックスなものからヒーローの命まで。

 

「次の場所は、保須市。インゲニウムというヒーローが大量のサイドキックを雇っているらしい」

 

「へぇ、面白そうですね。大量のクズを一斉駆除、か。楽しみだ〜」

 

 

 

悪は確実にすぐ傍まで来ている

 

 




という訳で第5話、珱九郎くんの活躍回でした。

友達によく恋愛相談をされるのですが、大抵の場合そいつは既に答えをを出してるんですよね。だから、こっちがその答えを言い当てることを待ってるように感じてしまうんですよね。なのでたまに大変に感じます。その点珱九郎くんは優しいですね。見習います、きっと。そう、きっと………


てなことで、次回もお楽しみに〜
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