『並行世界』へと赴く   作:舞茸の都市

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皆さんこんばんわ、舞茸の都市です。
リアルの方で少々事情があり、少しずつ執筆ペースが落ちていくと思います。ぜひお付き合いいただけると幸いです。



では、早速START‼︎


第9話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵のうちの1人、土田の個性によって珱九郎と分けられてしまった優姫は考えていた。

(恐らく操司君をあそこまで痛めつけたのは子供とリーダー格の男の2人。この3人は別にどうでもいいんだけどな。しかも、異形型の奴もこっち来ちゃってるし、クロ君こいつ倒すって意気込んでたのにな)

 

「なぁ、待村。こいつをさっさとやっちまって切屑さんの所行かないといけないよな」

 

「あぁ、すぐ殺るぞ」

 

2人の会話を聞いて優姫は思わず笑い出す。

腕が8本の男が苛立って声を荒げる。

 

「おい!何がおかしい!」

 

「だって、その言葉ってすぐやられるフラグじゃないかなって思うとさ…」

 

「テメェ‼︎」

 

激昂した土田が地面を掴むようにして動かす。

土田の個性は【粘土】触れたものを粘土みたいに動かせる。手を離すと硬度は元に戻る。

 

「行くぞ、お前ら!」

 

その言葉を合図に2人は真上に飛び上がる。何をするのだろうと優姫が見ていると、土田は2人に向かって掴んでいた地面を投げつけた。地面は勢いよくこちら側に迫ってくる。2人は地面に乗り、同じ勢いで近づく。傍から見れば2人の男が津波に乗って襲いかかっているかのようだった。

そんな中、

 

「わーぉ、こわーい」

 

と言いつつ、優姫はその土の塊を片手で受け止める。そう、片手で。

 

「は?」

 

「おい、行くぞ!」

 

待村は動揺するが、腕が8本の男は迷わず飛び出してくる。

 

「死ねぇ‼︎」

 

「勇気は認める。けど、それは愚策だね」

 

ふぅ、と優姫が息を吹きかけると、その吐息は直様吹雪へと変化する。

 

「うぉっ」

 

寒さに少し身じろぐ腕が8本の男。その隙を見逃さず優姫は彼の顔を掴む。そして、

 

「よーいしょっと」

 

それを地面に叩きつける。ドスンと鈍い音がして地面には蜘蛛の巣状のヒビが入った。

 

「なっ!どんな怪力だよ‼︎」

 

 

 

皆さんは雪女に関してどの程度までご存知であろうか。というのも、雪女の伝説は至る所にあり、その1つ1つにおいて、姿や年齢、悪さをする者から良い事をする者まで様々なのだ。呼び名ですら、雪女、雪娘、雪女郎、雪降り婆など多様に存在する。

雪女の伝承話の1つとして吹雪の晩に子供(雪ん子)を抱いて立ち、通る人間に子を抱いてくれと頼む話が伝えられる。その子を抱くと、子がどんどん重くなり、人は雪に埋もれて凍死してしまう。また、頼みを断わると、雪の谷に突き落とされるとも伝えられる。次第に増える、雪ん子の重さに耐え抜いた者は怪力を得るともいわれている。そのため、雪女はよく怪力であるとされている。

その個性を身に宿している優姫は、鍛えれば鍛えるほど筋力が容易につく。優姫も珱九郎と同じ師匠に享受しており、その師匠によって優姫はここまでの力を得ることができていた。

 

「んー、地割れまでいきたいなぁ」

 

まだまだ向上心はあるようであった。

 

 

 

 

「よし、捉えた‼︎」

 

と、ここで先ほど臆してしまい動けなかった男、待村が優姫の腕を壁に縫い付ける。

待村の個性は【縫い付け】その名の通り何と何の間でも縫い付けられる。ただし、それには専用の針(もはや短剣ほどの大きさがある)が必要。

 

「え、動かないな」

 

左手に男の顔を握りしめ、右手は縫い付けられた優姫。なんとか自由になろうともがく。

 

 

「2人で行くぞ!」

 

男達はそれぞれの武器、短剣のような針と土を固めてできた棍棒で同時に優姫に襲いかかる。が、彼らはその時頭になかった。優姫が怪力である事を

 

 

 

「んじゃ、えーい」

 

 

優姫は土壁に縫い付けられた腕を思いっきり押しこむ。すると、押し込んだところを中心として土壁が壊され、辺りには土埃が盛大に舞う。前が見えない中2人は猛進を続けようとするその時、

 

優姫が左手に持っていた男を振り回した。

 

2人はそれに反応できず、男、兼棍棒に打たれる。

思わぬ衝撃に意識を持っていかれそうになりながらも、2人はそこで肌に何か突き刺さるのを感じた。それは、氷柱であった。優姫は腕が8本の男の腕それぞれに氷柱を仕込み、それを2人に向かって振りかぶったのであった。

 

「とんでけ」

 

そのまま2人は隣の崩土たちが戦っているところに吹き飛ばされたのであった。

 

 

 

 

 

 

*****************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優姫、それは流石にやりすぎじゃ」

 

「ん?なんか言った?珱九郎君」

 

「……いや、なんでもない」

 

珱九郎は優姫の笑顔の圧力に屈してしまった。

 

「うん。んじゃ、早くあいつらを血祭にあげよ……捕らえようか」

 

「優姫⁉︎」

 

恋する乙女は時には残虐にもなり得た。

 

 

 

 

 

 

 

「…ぇ。…ぇぇ」

 

急に俯いてぶつぶつと呟きだす崩土。2人は少々緩めていた気持ちを引き締め、崩土の動きに集中する。今まともに動けるのは異部器と崩土のみ。その他は気絶ないしは重傷を負い動ける状況ではない。

 

「(俺が巨漢の男をやるからお前はリーダー格の男を頼む)」

 

「(わかった)」

 

小声で2人が合図をとった直後。

 

 

「調子に乗ってんじゃねぇ!!!!」

 

崩土がすごい勢いで迫ってきた。

 

「きたぞ!」

 

「分かってる」

 

優姫が前に出て崩土の両手を抑える。崩土が優姫の腹を蹴りあげようとするが、優姫は脚で蹴りをいなす。崩土の背後から異部器が迫ってくるが、優姫がふぅっと息を吐くと2人の間に氷の壁ができる。優姫がちらりと氷の向こう側を見ると、珱九郎が神足通で異部器の背後に回り込み、そのまま異部器のことを下腹部から蹴り上げているのが見えた。

 

「くそっ、くそがぁ」

 

「あなた、くそしか言えないの?もうちょっとボキャブラリー増やそうよ」

 

「黙れ!」

 

そう言って崩土は優姫に頭突きを仕掛けたため、優姫は崩土の手を離して後ろに避けた。2人は睨み合う。

 

 

 

*************************

 

 

 

珱九郎の蹴り上げは異部器には全く効いていなかった。

 

「きかねぇよ!お前の蹴りなんてな!」

 

豪快に笑う異部器に対し、珱九郎はさして動揺していない。

 

「(やはりな)」

 

そう思いつつまた珱九郎は攻めていく。胸部、左脛、右臀部、右前腕……数秒の間にあらゆる場所を殴り、蹴り、掴んでいた。

 

「ははは、効くはずないだろ!さっきは油断したがもう油断はしない!」

 

そう言って振り下ろされた拳を避け、珱九郎は距離をとる。珱九郎は異部器に聞く。

 

「なぁ、お前。本当に俺の攻撃は効かないんだな?」

 

「あぁ、効くはずないだろ!」

 

「なら、言っておこう。次の攻撃でお前はうずくまる」

 

そう言って珱九郎は駈け出す。狙ったのは右腋窩。つまり、脇の下だ。

 

「なっ、」

 

異部器は明らかに動揺するが珱九郎は止まらない。指を一点に集中させ、相手の攻撃をかいくぐり、正確に当てた。

 

「ぐぉ」

 

男は思わぬ衝撃にうずくまった。

 

「お前の個性、名前はよく分からんが、顔から内臓から何から何まで場所が普通のところにないだけだろ。あとはそれをわかりにくくするために脂肪で隠してるだけだ。なら、それを探ればいい。あいにく、俺には眼があるんでな」

 

異部器の個性は【部位転換】である。大まかには珱九郎の言った通りであるが、違いは1つだけ。異部器はその時その時で内臓などの場所を変えられる。その動きを隠すために太っている、という意味もあった。しかし、相手は珱九郎である。天眼通の力の前では効果はなかった。

 

(くっ、少し使いすぎたか?まだ制限時間は過ぎてないはずだが)

珱九郎がそう思案していると、

 

 

 

ドォン

 

 

背後から大きな音が聞こえた。珱九郎が背後を見ると、そこには……

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

崩土と優姫の方は、まだ決着がついていなかった。

 

 

2人がにらみ合っている最中、崩土がふと思いついたように優姫に話しかける。

 

「なぁ、お前。さっき、恋するとかなんとか言ってたよな。

その相手ってあのガキか?」

 

「だったら何?」

 

優姫の不愉快そうな顔を見て崩土はニヤリと笑いつつ、仰々しく続ける。

 

「はぁ、もう俺らの今日の計画は失敗だよ。金は手に入らない。ガキどもに俺の部下達がやられる。そのガキどもは未だ1人たりとも殺せていない。あぁ、今日はなんて最悪な日だ!」

 

訝しげに優姫は崩土を無言で睨んでいる。崩土は続ける。

 

「もうそろそろヒーローも来ちまうんだろうなぁ。あの屑どももな」

 

「だから、あんたらは終わりだって」

 

「なら、せめてあのガキだけでも殺そう」

 

そう言って崩土は個性を使う。そう、操司の真上の天井を。

 

 

「なっ!」

 

優姫が駆けつけようと一歩を踏み出すと、その床も途端に崩れ去る。それに躓き優姫は地面に顔をつく。

珱九郎はまだ異部器と戦っており、操司の危機に気づいていない。

 

「操司君!」

 

優姫が操司の方に顔を向けると、操司も顔を優姫の方に向けている。

彼は、笑顔だった。死ぬ間際であるというのに。

と、そこで、操司の真上の瓦礫が操司を呑み込んだ。珱九郎は優姫達の方に振り向き、操司のいた筈のところに瓦礫が固まっているところを見て呆然とする。

 

 

 

 

 

 

「1人目、死刑完了」

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「なっ……」

 

 

 

 

 

 

運命の時は訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




てな訳で、第9話でした。恋する乙女に衝撃の事実が重くのしかかります。



次回もお楽しみに



感想、評価の方も是非宜しくお願いします。
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