コンビニに佐倉は入った。眠そうな顔で何を買おうか迷ってると、とりあえず新発売のカップ麺に手を伸ばした。が、別の手と重なる。
「「ん?」」
横を見ると、ホストっぽいイケメンが立っていた。
「えっと……カップヌードルキムチハバネロ唐辛子?」
「カップヌードルキムチハバネロ唐辛子。え、カップヌードルキムチハバネロ唐辛子?」
「カップヌードルキムチハバネロ唐辛子」
黙り込む二人。
「参ったな、一個しかねぇや」
「実はよ、俺の部下のなんかゴーグル付けてるアホがどうしてもこれ食べたいっつーんだ」
「いやいや、そいつ男でしょ?実は俺も同じようなものなんスよ。うちの……まぁ妹みたいなツインテールと花飾りがいてよ、そいつらがどうしても食べたいってんだ」
「あ、違った。ゴーグルじゃなくてホステスっぽい貧乳女だった」
「ゴーグルとホステス間違えるか⁉︎」
「ま、そゆことなんで。すんません」
言いながら男はカップ麺を持ってレジに向かった。その肩に佐倉は手を置いた。
「いやいや、こっちはもうコンビニ7〜8軒くらい回ってようやく見つけたもんなんでそれ」
「それ言ったら俺だってコンビニ50……じゃない、15軒くらい回ってるから」
「おい、今のはさすがにバレてんぞ。カップ麺のためにコンビニ15軒も回るアホがどこにいんだよ。精々、9軒だろ」
「ああ?何、自分の範囲はセーフですみたいな顔してんだ。普通、5軒が最大じゃボケ」
「うるせーよ、どーせホステスの女も嘘なんだろ?百歩譲っていたとしてもテメーで買うためなんだろ?」
「それ言ったらテメェの妹みたいな後輩もパチだろクソボケ」
「うるせーよ。そもそも俺が先にとったんだよ、テメェは引っ込んでろ」
「いや俺の方が早かった」
「つーか、テメェ高校生だな?中学生に譲るくらいの器量があってもいいんじゃねぇの?」
「歳上だと分かってて敬語を使えねークソガキに譲るもんなんてねーよ」
「小せえ男だなオイ」
「は?」
「あ?」
睨み合う二人。すると、ピポピポピポーンとコンビニに客が入って来た。
「ちょっと、いつまでモタモタしてるのよ」
ドレスを着た女だった。男の方にそう声を掛けると、佐倉の方に目を向ける。
「誰?この人?」
「知らねーよ。こいつが俺が先に取ったカップ麺譲らねーんだよ」
「あ?だから先に取ったのは俺だって言ってんだろ?」
その会話で何が起きたか大体分かってしまった女は、ニヤリと笑うとカップ麺を取り上げた。
「とりあえず、買っちゃいましょう。お店の迷惑になるわ」
と、いうわけで女がお金を出し、コンビニを出た。
「で、どうすんだよ」
「簡単な話よ」
言いながら女は二人に言った。
「じゃんけんしなさい」
「「は?」」
「当然でしょ?それが一番公平だわ」
「「……………」」
「負けても恨みっこなし。いいわね?」
そういうわけでじゃんけんした。勝った。
*
翌日、いつものように風紀委員支部へ。
「うぃーっす」
呑気な挨拶で佐倉は入った。中にはまだ誰もいない。
「あ、珍し。俺が一番乗りか」
そう呟きながら、パソコンを点けた。そして、ニコニコ動画を見始めた。
しばらくそんな事をしてると、固法が入ってきた。
「あら、珍しい」
「うるせっ。花とグドンの餌は?」
「今日は休みよ。学舎の園に行ってるんだって」
「へー」
「さ、仕事しましょう。今日はこの事件よ」
「あー待った。今、これいいとこだから」
「怒るわよ」
「すみませんでした」
見せられたのはパソコンの画面、常盤台を狙った事件だ。
「へぇ……学舎の園で……そんなら、オレの出番はないな」
「と、思うじゃない?」
「………えっ?」
固法はニヤリとほくそ笑み、佐倉は嫌な予感がした。