飛行島の空を鳥が飛翔する。
郵便帽子を被り郵便カバンを提げた鳥は、目当ての人物を見つけると下降していく。
「こんにちはー!郵便屋さんですよー!」
声をかけられた女性は立ち止まり振り向く。
こちらも帽子を被っているが、郵便帽ではなくナースキャップだ。
また彼女の脇に浮いている人形は、さながら人体模型のようでかなり不気味でグロテスクである。
というか臓器がドクンドクンしていた。
しかし鳥は人形に目もくれず女性の前に降り立つと、鳥から人間の少女へ変身した。
郵便屋の少女はカバンから封筒を取り出すと、
「お手紙、お届けに参りました!」
元気な声と共に差し出した。
「あら、ありがとう。……かわいい郵便屋さんね」
「えっあっ、ありがとう、ございます……。えっと、それでは失礼します!」
褒められたことに照れたのか、赤面した少女はまた鳥に変身して飛び立っていった。
少女が見えなくなるまで待ってから、彼女は封筒の差出人を見る。
「……遅いのよ。もっと早ければヒストリアの件もあんなに大きくならなかったでしょうに」
そう呟くと彼女は飛行島の中心へ向かって行った。
――――――――――――――――――――――――――――
飛行島の中心には飛行島の主のアジトがある。
飛行島に滞在している冒険家たちはここでパーティを組んだり、ギルドの討伐依頼を受けたりするのだ。
「それくらいならお易い御用だぜ?俺に任せときなナツミちゃん!」
「ありがとうございます。オズマさん」
その受付嬢にオズマはおつかいを頼まれていた。
「いいってことよ♪……にしてもあのモヤシ野郎はどこいった?女の子が困ってたらお助けすんのが男ってもんだろうが」
「はあ……なんか『これが俺の役割らしい』とか言って飛び出して行っちゃって」
「あいつの役割は雑用だろうが……」
オズマがボヤいているとアジトの扉が開く。
「オズマ?いるかしら」
「おお!ハーブちゃん♪なんだい?今夜飲みに行くお誘いかい?」
バチン!と音が出そうなウィンクをしながらオズマは答える。
「違うわ。ほら」
オズマのウィンクをかわしながら手に持っている封筒を見せるハーブ。
「ようやくお許しが出たのよ。あなたが申請してもこんなに時間がかかるなんてね」
「ああ〜……やっとか。まったく、頭のかた〜いお偉いさんを動かすのはなかなか骨が折れるぜ」
「あ、あの」
ナツミがおずおずと話しかける。
「そのお話、私聞いちゃいけなかったんじゃ……」
「あ〜……いや、ナツミちゃんならいいぜ?他人にペラペラ喋り回るとは思えねえしな」
「まだ抽象的な事しか言ってないし、他に人も居ないしいいんじゃないかしら」
時刻は午後5時の少し前。ギルドではだいたい午後4時ごろに新しいクエストが開放されるのでアジトにたむろしている冒険家たちは出払っていた。
「そう……ですか」
「そういうことだから、船を出してもらえるかしら。島まで行く船」
「おう、任せときなハーブちゃん!なんなら黒の飛行船でも送っていくぜ♪」
「あなたがそう呼ぶなんて珍しいわね」
「……おろ?」
「というか飛行船じゃなくて飛行艇でしょ?」
「……おろおろ?」
オズマは自分の言ったことについて考える。
(なんで俺はレディ・キラーを黒の飛行船なんて呼んだんだ?しかも黒の飛行船でも間違ってやがる……)
思考するオズマをよそにハーブは背を向ける。
「それじゃあ船の件、頼んだわよ」
「……ちょっと待ったハーブちゃん」
「なにかしら?」
「やっぱりハーブちゃん1人じゃ心配だ。護衛を付けさせてくれ」
「……わかったわ。精々足を引っ張らないような護衛をお願いね」
そういうとハーブはアジトから出て行く。
「さて、と。それじゃあ俺もこいつを届けてくるぜ。じゃあなナツミちゃん!」
「あ、はい。お気を付けて」
出て行くオズマを見送ってからナツミは呟く。
「本当に士くん、何処にいるんでしょうか……」