ザッザッと、森を歩く音が響く。
「あの、シャナオウさん」
「なんだ」
「僕たち研究所に向かってるんですよね」
「そうだが」
「道とかないんですか」
「あるかもしれんが俺は知らん。俺が知らされたのは研究所の場所だからな」
「いろいろと、不備があるところなんですね。シャナオウさんの設計局って……」
「そう嘆くなよあんちゃん。森ん中歩けば、ひょろひょろのあんちゃんも足腰が鍛えられていいじゃねえか」
「……フォローになってないよベンケイさん」
「研究所まであと少しだ。気張れゼロキス」
「はーい……」
武者一行は研究所を目指して歩き続ける。
「おいあんちゃん。あの実が成ってる植物、なんて名前かわかるか?」
「知りませんよ」
「ほう、大将は?」
「俺も知らんな。ベンケイなら知っているだろう」
「いんや、俺も知らねえ」
「は?」
「待てベンケイ。お前生まれた瞬間にこの世の全てを悟った、とか言ってなかったか」
「ああ言ったぜ」
「じゃあなんで知らないんですか」
「そんなこと俺が知るかよ。別の世界のものなんじゃねえのか?闇みてえによ」
「……そうか」
「それで納得していいんですかシャナオウさん……」
「っ!待て!」
「へっ!?」
シャナオウが鋭い声で止める。
見ると視線の先には草木でわかりにくいが剣を担いだコボルトらしき姿があった。
「……なんだコボルトじゃないですか」
「いや様子がおかしいぜ」
「ああ、やけに痩せている。腹を空かして気が荒くなっているかもしれん」
「でもコボルトですよ?」
「あんちゃん、ありゃカースだぜ」
「……はい」
「こっちには気付いてないようだしやり過ごしてもいいが……帰りに出くわしでもしたら危険だな」
「出くわさなければそれで「ザュッ」」
肉が裂ける音がした。
「なっ……」
「ベンケイ!」
ベンケイの背中からは鮮血が噴き出し、木々や草、そしてベンケイの後ろに立っているクリーム色の魔獣を赤く赤く染める。
(俺が……こいつの気配に、気付かなかった……だと?有り得ねえ……)
掠れる意識の中、ベンケイは拳に気を篭める。
「ぬぅん……」
ゼロキスにはこれが痛みに苦しむ声に聞こえた。
倒れながらもベンケイは足を出し踏ん張る。そのまま身体を捻り、振り返りながら怒声と共に拳を突き出す。
「去ねえぇい!」
その瞬間、気は黄金色の衝撃に変わり、血に染まった魔獣を吹き飛ばす。
大木に強く打ち付けられた魔獣はドサリと地面に落ち、動かなくなる。
「かっ……」
魔獣が動かなくなったのを確認するとベンケイは崩れるように片膝を付いた。
「ベンケイ!」
「ベンケイさん!」
「……構うな。コボルトを「ヒュォン」」
次は空気が裂けた。
ベンケイの傷を見るためにしゃがんだシャナオウの頭、そのすぐ上が裂けた。
三人の声に反応したカースコボルトが、剣を構えて突進してきたのだ。
「ちっ!」
シャナオウはしゃがんだ体勢から転がり、コボルトと距離を置く。
「ゼロキス!こいつは俺が引き付ける。お前はベンケイを連れて研究所へ行け!このまま真っ直ぐ進めば着く!研究所に治療具があるはずだ!」
そう叫ぶとシャナオウは研究所とは逆方向へ走り出す。
魔獣は、特殊なことがない限り最初に目をつけた者を狙い続ける習性があるのだ。
「わ、わかりました!さあ、ベンケイさん」
「……すまねえ」
ゼロキスに肩を預けるベンケイ。損傷は背中だけだがやはり足取りは重い。
そして、
(お、重い……)
大柄なベンケイを支えるのは、ひょろひょろのあんちゃんにとってえらい重労働だった。かなり足元がふらつく。
また、
(血を見たせいか……頭は痛いし耳鳴りもする……今日は、もうダメだ……)
この夢魔は精神的にもひょろひょろだった。
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鬱蒼とした森の中を走り続けたシャナオウは一転、開けた場所に出た。
「……ここらで良いか」
振り向くとちょうどコボルトが森から出てくるところだった。
(出来るだけ早く倒してベンケイのところまで行かねばならん……他の魔獣に見つからないとも限らないしな)
そう考えるとシャナオウは足を開いて構え、目の前にディスプレイが浮かぶ。鶴翼アサルトだ。
「い……!?」
しかし、奇妙な声を上げると構えたまま動きが止まり、関節の節々がギシギシと音を立てる。
(なん……だ!)
開いていた拳を力強く握り右腕は腰に、左腕は前に出しながら両肘を直角に曲げる。さらに腕を腹の前でクロスさせ、今度は左腕を腰に、右腕を前に出す。
シャナオウの意識と反して、身体は流れるように動作をこなす。
構えを解くと、一歩一歩、踏みしめる様にコボルトに向かって歩いて行く。
剣のリーチ内まで近づくと、コボルトは剣を上段から振り下ろした。
が、あろう事かシャナオウは刃を掴み握り潰す。
そのまま剣を放るとコボルトの腕を引き、首の後ろを拳で打ち下ろす。さらに前屈みになったコボルトを殴り飛ばした。
コボルトと距離を取ると足を開き再び拳を握る。
足元には紋章が浮かび、
「すううぅぅぅぅぅ……」
大きく息を吐く。
エネルギーを足に集中させると、高く跳び上がり落下の勢いを乗せて片足蹴りを叩き込む。
コボルトは抗おうとするがただの悪足掻きに過ぎない。
その衝撃に耐え切れず木々をなぎ倒し断末魔と共に爆散した。
一ヶ月ぶりの更新です
フォースターギャラクティカに急かされたとかじゃないですよ←
純粋に時間が取れなかったので何卒御容赦を……