ラナークエスト   作:テンパランス

120 / 183
#119

 act 57 

 

 仕事を終えたオメガデルタはラナー達の下に戻り、金貨の事はもう興味から無くなっていた。というより何度も見慣れた光景だから。

 イビルアイも最後まで見学する気は無く、オメガデルタの後を追う。

 最後まで見るのは良いが、黄金の魔性に取り憑かれないように、と一言投げかけておいた。

 六の宝物庫(ユーノー)に戻った後、イビルアイは自分が今まで(おこな)ってきた仕事で不味い点は無いかと質問を投げかける。

 メイド達が暴れていないのであればイビルアイは正しい仕事をしてきた筈だ。

 心配してはいたが、今も無事ならそれで充分だ、とオメガデルタは答える。

 

「任せた分際で後で文句を言うのはおこがましい。それとアイテムも後で補充しておくよ」

「ありがとう」

「……本格稼動するとは思わなかった……。それと……」

 

 と、七の宝物庫(ケレース)へと続く入り口附近に何体かのモンスターの姿があった。

 一体は鳥人間のペロロンチーノ。

 他は赤い粘体(スライム)のぶくぶく茶釜。

 骸骨ぽっい外観で鎧武者のような雰囲気を思わせる装備に身を包む武人建御雷

 忍者装束の弐式炎雷

 黒い山羊姿のウルベルト・アレイン・オードル

 図体の大きなやまいこ

 

「後半の説明が雑だな」

「説明が難しい服の人は仕方が無いですよ」

「姉貴は全裸で楽だよな」

「……粘体(スライム)だもんね。これで服を着ても……、意味があるとは……」

 

 見覚えのある面々が揃っていることにオメガデルタは()()()()()()()()で身構える。

 

「出たな、妖怪ども」

「……そんな対応するのはお前だけだよ」

 

 六体のモンスターはそれぞれ肩をすくめたり、呆れたりした。

 忍者は苦笑しているようだった。

 

「……原作で姿が公開された奴らばかりじゃねーか」

 

 六人の友人として呼んだようだが、無関係なのが居る。

 本来ならば一番居なければならない『たっち・みー』の姿が無かったのが残念な点だ。

 

「それは否定できないな」

「気長に待つしかないよね。あまのまひとつ君なんか出番あるの?」

 

 蟹なのかザリガニなのか分からない鍛冶師のメンバーだ。

 創作系は基本的に引きこもりに似ている。

 自分の作業に没頭する傾向にある。

 

          

 

 至高のメンバー六人が姿を見せたのと同時に彼らの世話を担当する六人の一般メイド達も現れた。

 ()()()交代制を取っているので常に同じ顔とは限らない。

 

「天上の世界はどんな暮らしなんだ?」

「時間を忘れてしまう。……その前に世間話し出来る環境とは思えないんだが……」

 

 それと姿はシズ・デルタだ。

 本来の姿は魔法の影響で眠りについている。もちろん、呪い対策なので仕方が無い。

 

「顔を見に来ただけだ」

「こっちは今、とても面白い事態になっているでござる。ぜひ、王都に来てほしいところだ」

 

 王都と聞いて首を傾げる。

 転移によって移動してきたので。

 金貨の部屋は放置して、オメガデルタは新たなメイドを呼び、彼らに椅子などを出すように命令する。

 それに対して一般メイド達が自分たちがやります、と鼻息荒く迫ってきたので任せる事にした。

 備品の場所は知っているので、メイド達は笑顔で仕事に取り掛かる。

 

「君らがこの施設に出入りしているから大事は無いと思うけれど……。久しぶりに見ても気持ち悪い姿をしているな」

「うるせー、バカ」

「大きなお世話だ」

「で? 私に何か用でもあるのか?」

「無い」

「興味本位」

 

 簡潔な解答にオメガデルタは苦笑する。

 用が無いならそれはそれで構わない。

 特に魔導国のメンバーに今更見られて困るものは無い筈だし、アインズに殆どの権限を許している。

 天上の世界について話せる事はあまり無い。

 単に作業を任せて眠っていただけなので。

 

「せっかく来たところだが、すぐに帰るのか? ……()()()()は邪魔だからさっさと消えてしまえばいい、という風潮があるかもしれないけれど……」

「今は単なるオリキャラだから問題は無い。……しかし、扱いが酷いな。このストーリーに何が起きた? 私は今回はほぼ無関係の筈だが?」

 

 主役はラナーだ。だからオメガデルタは脇役に過ぎない。

 そうだとしても折角来たのに帰れ、ではなく消えろ、とは穏やかではない。

 世の中はそこまで荒んでしまったのか、と悲しくなる。

 

          

 

 ペロロンチーノ達と話すほどのネタは無く、むしろ『たっち・みー』が居ないことに疑問を覚える。

 聞けば王都で巨大生物の監視をしているとか。

 それは『るし★ふぁー』にでもやらせればいい、と思った。

 

「……猛獣に嫌われたせいか、本人も乗り気ではなくてな」

「王都に巨大な猛獣、ねー……。すぐにでも様子を見たいところだが……、こちらの用も無視できない」

 

 側に控えるイビルアイが手伝ってくれ、という雰囲気を身体で表現していた。

 人数が多くて自分の手に余る、とでも言いたげに。

 

「急ぎでなければ様子を見てくるよ」

「それは心強い」

「……で、ウルちゃんが外に出てくるとは珍しいね」

「ここは()()()だ。……聖王国の連中の顔を見るついでだからすぐに帰るよ」

 

 ウルベルトが腕を組んで見つめる先には至高のメンバー達を見つめる聖王国の面々が居る。それに対抗するような眼差しを向けているのだが、山羊の表情では何も伝わらない。

 おそらくウルベルトは意味も無く睨みつけている。

 根暗な性格だから友達がとても少ない。

 

「単なる被害妄想だろ」

「お前がヤルダバオトか?」

 

 レメディオスが棒読み気味にウルベルトに言った。

 ずっとこちらを見つめているので何か言わなければ、と思ったようだ。

 

「……それは原作での話しで……、このストーリーにはあまり関係ないと思う……」

 

 はい、ヤルダバオトです、と言ったところで戦闘が始まるわけではない。それはウルベルトが聖王国を攻めている亜人の首魁などではないからだ。

 確かに現在進行形で亜人の軍勢に攻められているのは事実なのだが。

 

「だったらなんだ、この野郎」

 

 大人気ないウルベルトは威圧しながら言い返した。

 元々が底辺の出身で弱者体質がある。それゆえにレメディオスのような国家権力の犬のような(やから)が生理的に嫌いだった。

 もちろん、国を守る任に就いているレメディオスにとってはただの言いがかりに過ぎない。

 

「亜人討伐の前に一勝負しろ。今日までの鍛錬の成果が本物か確認したいのでな」

 

 と、武器を黒山羊に向けて言い放つレメディオス。それに対し、ペロロンチーノ達は一切、庇わず。むしろ無視した。

 やるならどうぞ、なのか。ウルベルトに勝てるわけないだろ、という気楽なものか。

 どちらにせよ、挑まれた勝負をウルベルトが断るのは弱そうな相手と普通の冒険者くらいだ。だから、聖騎士を率いるような相手なら大歓迎で受けて立つ。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。