ラナークエスト   作:テンパランス

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#121

 act 59 

 

 貴重なアイテムを消費して問題を解決しても次が控えている。そして、それが日常だ。

 高レベルとなったナーベラルはチームでの戦闘では役立たず、とは言わないが悪影響になる事は必至。

 モンスター討伐においてマグヌム・オプスでの戦闘は控えてもらうことになる。といっても彼女にとっては大した問題ではない。ようは実戦でチーム戦が出来ればいいので。

 

「……貴重なアイテムを使わせてしまい、申し訳ない」

 

 それも超がつく一級品の筈だ。それをアインズに知られると、と考えたナーベラルの身体が目に見えて震え始める。

 とはいえ、他の至高のメンバーが目撃しているので彼らが何も言わなければ多数決によってお咎めは無い筈だ。

 別にアインズの所有物を使ったわけではないので。多少の影響はあるかもしれないが。

 一先ずナーベラルをペロロンチーノ達の元に送って慰めてもらう。

 

「次は君たちか。血気盛んなのは結構だが……、折角の命は大切にした方がいい。そんなところで散らせるのは馬鹿げている」

「大きなお世話だ」

 

 レメディオスは腕を組んで鼻息荒く言い放つ。

 不満を示しているのは彼女だけで他の者は何事もなくて良かったと安心していた。

 それよりも男声の女性体自動人形(オートマトン)では何か不都合は無いのか、と今更な事を尋ねてみた。

 元々はイビルアイに気付いてもらう為の処置で声はある程度変化させられる。誰の声でも再現できる、という便利機能は無い。

 声の変え方は『変声機』を使う。

 機能としては単純な事だが、現地の人間には疑問符が浮かぶものだ。

 この世界に機械文明はまだまだ未発達なので。

 気を取り直し、最初の一人としてレメディオスを選ぶ。というか、この女性を最初にしておかないとうるさいだけだと思い知った。

 

「とにかく強く、という単純な要望だと筋肉お化けにしかなりませんよ」

「そう言われても……」

 

 そもそもどうやって増強するのか、その原理が全く理解出来ない。

 聖騎士(パラディン)は通説では知性の値が低い脳筋気味だと言われている。その点では確かにレメディオスは見事に当てはまる人物だ。

 徹底した正義の執行者。その(かがみ)とも言える。

 

          

 

 まずは他の者たちを休憩に入らせ、オメガデルタとレメデイオスの二人は地上の建物に移動する。

 地下ではいけない理由は建物の存在にある。

 それとペロロンチーノ達には適当に寛げと言いつけておいた。どの道、彼らと今日触れ合えるほど暇が出来ないと知ったので。

 イビルアイに戸締りを頼んだ後、この『マグヌム・オプス』の地上にある一軒屋。オメガデルタにとっては本来の住まいに入った。

 

「この家は何だ? ただの一軒家にしか見えなかったが……」

「普通の一軒屋ですよ。私の執務室を兼ねてます」

 

 地上二階建ての一軒屋。

 一階はごく普通の広間と厨房といくつかの部屋があるだけ。

 二階は執務室と寝室程度があるくらい特徴の無いものだった。

 まずレメディオスを執務室に案内し、用意した椅子に座らせる。その後でオメガデルタが手を叩くとメイド服を着た人間が転移によって現れる。

 

「この施設にはどれだけのメイドが居るんだ?」

「たくさん居ます。多くは地下専門ですが。この子達の説明は無駄に長くなるので省きますよ」

「……う、う~む」

 

 まず最初にする事は面接。

 出来るだけ増強の方向性を知るためだ。

 多少小難しい単語が飛び交うがレメディオスは頑張って答えた。

 

「君の経験値では今ひとつ目標に達しない。……それだけイビルアイが苦労したという事だが……。本国を離れてだいぶ経つそうですが……、大丈夫なんですか?」

「部下の報告は密にしてある。今のところは大きな動きは無い」

属性というか『カルマ』をあまり動かせられない聖騎士(パラディン)の増強は中々難しい。……とはいえ」

 

 討伐者(スレイヤー)系の(クラス)をメインに伸ばせば化けるかもしれない。

 既に一つ取得しているし。

 問題は()()だ。

 やりようによっては極悪人にも出来るのが困ったところだ。

 


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