ラナークエスト   作:テンパランス

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#128

 act 66 

 

 身体を守るだけではなく身体強化も(おこな)う不思議な能力シンフォギア。

 各種パーツを駆使すれば武器も作り出せる。

 その武器は変身を解いても残る場合があるらしい。なので早速槍に様々な魔法をかけて手に取ってみる。

 おそらく他の装者達も同様だと思う。

 さすがに装者でない者は武器を更に変形させたりは出来ない。

 

「まだ出せるようだし……。さて、次は『絶唱』を頼みます」

「……いいぜ」

 

 防御を一段と厚くし、最終確認の為に歌ってもらう。

 

「ガトゥランディ~ス、バ~ベル、ジ~グレット、エ~デナール。エミュストーロンゼン、フィーネ、エル、バ~ラヅィール。ガトゥランディス、バ~ベル、ジ~グレット、エ~デナール、エミュストーロンゼン、フィーネ~ル、ヅィール……」

 

 少し長めの歌の後で周りに衝撃波が発生する。

 すぐに防御魔法を展開し、様子を窺う。

 絶唱は最終手段の必殺技。

 歌ったら最後、装者は命を落とす可能性がある。その代償に見合った力を授けてくれるのだが乱用は基本的に出来ない。

 天羽は正式な適合者ではなく、薬物投与によって強引に力を勝ち取った経緯があった。それゆえに身体的な負担は正式な装者よりも爆発的に高くなっている。

 

「……レベル60相当の数値に上昇……。これならば良い戦いが出来そうだ」

 

 HPが急速に減少。それに伴い、様々なバッドステータスが姿を現す。

 肉体崩壊。限界まで後何秒、とか物騒な単語が出て来た。

 腕が腐敗しないのはシンフォギアの加護を受けているからだと思われる。そうでなければただの人間に起きるのは納得できない。

 天羽に歌を止めさせる。すると身体のあちこちから血が噴き出した。

 血管が破裂しているようだ。

 治癒の手段が無ければこのまま病院送りだが、()()()()事に治癒の手段はここにはたくさんある。

 

「ご苦労様」

 

 満足な治癒を(おこな)わなかったので天羽は神経とか断裂したままになり、日常生活が困難となっていた。それが()()()()答えだ。

 他の装者が平気なのは先駆者の苦労を研究し、改良していったからだ。そうでないと納得など出来はしない。

 

          

 

 治癒を終えてぐっすりと眠る天羽。

 残念ながら彼女達の能力は簡単には手に入れられないものだとオメガデルタは知り、がっかりした。その代わりに武器は手に入ったので、色々と研究の役に立てようと思った。

 原因を知れば対処など容易い。

 その方法を確立するまでが遠い道のりとなっているだけだ。

 事を終えた後、風鳴達を呼びつける。

 

「もう大丈夫だと思います」

 

 安心させるようにオメガデルタは言った。しかし、彼女達は何か気になるようで、部屋の片隅に顔を向けていた。

 そこには見知った槍が立てかけられている。

 

「これは報酬として……」

「そ、そうですか」

「ちょっと強引に聞き出しましたが……。不可抗力という事で……」

 

 シンフォギアの情報は彼女達の組織にとって極秘事項に当たる。それは聞かれなくともそうだろうな、と思ったオメガデルタは秘匿を約束する。

 というより異世界なので約束を守る事に意味があるのか疑問だが。

 

「結論から言いましょう」

「うむ」

「『絶唱』は歌わせないように」

 

 風鳴は難しい顔をしていたが頷きで応える。

 

「治癒魔法とかアイテムを持っていないうちは駄目です。肉体崩壊によって神経も寸断される。君たちも同じようであれば使用は控えた方がいい」

「治癒の手段があれば歌い放題デスか?」

 

 緑色の女の子。いや、服装が緑色だからそう感じただけだ。

 (あかつき)の質問に苦笑気味で頷く。

 

「可能は可能だ。……それは自己責任という形で……」

「寿命とか命に関わると思うのだが……。天羽は……、その……これからも生活できるのか?」

「出来ますよ。見たところ魔法も効果がありました。この先、絶唱とか使わない限りは大丈夫だと思います」

 

 そういうと満面の笑みを浮かべる風鳴。心底嬉しそうな顔だ。

 だからついつい意地悪したくなる。本当に悪い大人だとオメガデルタは思った。

 


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