ラナークエスト   作:テンパランス

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#129

 act 67 

 

 絶唱を歌ってもらっても何かもらえそうなものが新たに現われる気がしないので、普通の変身によって出せる武器を頼んでみた。

 

「ペンダントを寄越せ、と言っても私には恐らく使えそうにないので」

 

 『適合係数』とかよく分からないし、壊す事になっては困るので。

 

「手を離すと消えるとか?」

「それは我々の意思で自在に出来る」

「……既にそこにある時点で可能なのは証明されているけれど……」

「ちなみに、これ爆発とかしませんよね?」

 

 散弾のように破裂させることは出来ると答えた。

 

「一つ分からない事がある。奏は絶唱を歌いきっていない。ただの聖詠までだ。それだけで不調になったのだが……」

 

 風鳴は天羽の経緯を改めて伝える。

 その間に準備運動やら屈伸運動している彼女の様子を見て、本当に安心した。

 

「そもそもシンフォギアに詳しくありませんから。何ともいえませんね。転移の時点で既に不調だったならどうです?」

 

 この言葉に風鳴は一つ思い当たる原因を思い出した。

 絶唱を歌って塵になった光景だ。というかそれ以外に思い当たる節は見つからない。

 何らかの原因により、転移先で復活した。しかし、身体は完全に復活していないとすれば何となくだが理解出来る。

 

「身体が軽くなったし、あたしは過去は拘らないよ」

 

 多少は拘るかも、と小さくつぶやく天羽。

 

「こうして運動も出来るし、喉の調子も悪くない。治癒魔法は凄いね」

「絶唱を歌わない限り大丈夫なのは分かったけど……。変身は可能なの? 肉体の負担の点で」

「実際に歌って調査するしかないね。ここには君たちが望む調査機器などは存在しない」

 

 魔法だけで出来ることには限界がある。それをそれぞれ理解し、話しを終えた。

 だが、報酬は忘れていないとオメガデルタが言うと一部は笑い、一部は唸った。

 別に全員の胸を揉ませろ、とは言っていない。ただ武器をよこせと言っているだけだ。

 

「未知の素材には興味がある。そもそも物質を生み出しているわけだが、それらはどうして生まれるのか」

 

 肉体の何らかの材料で武器を生成しているのならば生み出す事自体が危険であらねばならない。

 雪音の場合は無数の弾丸を撃ち続けても特に変わった事は無いと言っている。

 何処から金属が生まれ、自分達はどんなエネルギーを使っているのか詳しい事は実は誰も知らない。

 知っているのは研究者だけだと風鳴は答えた。

 

          

 

 本来ならば秘匿情報の塊であるシンフォギアの秘密は異世界であっても開示してはならない。と、自分達の上司に当たる人間達は言う筈だ。

 だが、大切な友人を救ってくれた恩には報いなければ気がすまない。それが風鳴の出した結論である。

 

「……でも元の世界に戻れる場合はあなたも一緒なの?」

 

 マリアの疑問に対し、首を傾げるオメガデルタ。

 

「私と君達が同じ世界の住人だとは限らないよ」

「そ、そうなの?」

「……だいたいシンフォギアだの君たちの言う敵性体『ノイズ』とやらは私の知識には無いし、そんな被害には覚えがない。それはつまり違う時間軸を生きる者達ということではないのかな?」

 

 あるいは平行世界の住人たちだ。

 とても興味深い事だが共に地球に帰還する事は出来ないし、してはいけない気がする。

 オメガデルタが戻る地球は少なくとも彼女達にとって住みやすい環境ではない。

 更にはそんなに都合のいい方法があっても素直に帰りたくない事情がある。

 個人的な事を部外者に語る事はしないが、そんな理由があるとだけ忘れないでほしいと伝える。

 律儀に規則を守る姿勢は感心する。

 天羽には外に出て軽く運動してくるように言い含めて退出させた。

 

「君達の事も興味深いが……。別に裸の鑑賞会がしたいわけじゃないよ。ただ、まあ色々と欲しいわけだ。なにせ私はとても欲深い」

 

 (あかつき)月読(つくよみ)はあからさまに不満の顔になり、マリアも一歩下がった。

 

「ここに雪音が居れば……。いや、そうだな。対価は必要だ。私にやれるものは刀だ。それをどう保存するのか分からないが……。軍隊でも作る気なのか、それくらいは教えてほしい」

「単に材料だ。手持ちの資源だけでは突破できない問題が出てくる、かもしれない。多くの資源を使い、私は旅人として星から出て行く、……予定だ」

 

 その為に現在建設中の施設がある。

 といっても宇宙旅行は人類の悲願であり、願いそのものだ。

 更には他の星で生活する事は夢物語。

 

「普通に移動するだけで途方も無い時間がかかる。それくらいは私でも分かっているさ」

 

 とはいえ、()()()の『』には既に到達しているけれど。

 確実に予定を一つ一つクリアしている。

 このまま行けば夢は現実へと変わるかもしれない。

 

 その前に解決しなければならない()()()がある。

 

 その解決方法は未だに糸口が見つからない。というか、もし仮にあるとしても新たな()()()()()()()()()()()()()が発生する。それは今現在この世界に居るペロロンチーノ達には関係ない事で、オメガデルタだけの問題だ。

 

「楽な方法があって君たちが戻れる場合、私も連れて行ってもらえるものかな?」

「そ、それはもちろん」

 

 本当にそんな事が実現されると困る事態に陥る筈だ。

 風鳴達はオメガデルタの事情を理解していない。

 

「その返事だけで嬉しいよ。そう簡単にはいかないと思うけれど、研究はさせてもらう」

 

 もし元の世界に戻れる方法があるならば研究しないわけにはいかない。

 折角手に入れた魔法の文化を今の段階で捨てる事は考えたくない。

 煩悩にまみれた自分は何も捨てたくない。

 だからこそ楽が出来ないなら苦労してでも自力で帰ってやる、と決めた。

 無理なら無理で計画を修正するだけだ。

 例えば自分だけの銀河系の創出

 さすがに無茶だが、宇宙は広い。

 


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