ラナークエスト   作:テンパランス

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#136

 act 74 

 

 レメディオス達が今の二倍近い実力を得るのに一日では足りない。けれども提供側が万全の体制を整えればギリギリ、または経験値だけでも規定値に達せるかどうか、という具合だ。

 他の騎士については余裕があれば面倒を見る程度。

 急に忙しくなったので冷静になる時間はどうしてもだと判断し、来客の相手を試みる。

 オメガデルタとて誰よりも強靭な精神を持っているわけではない。混乱するし、間違いも(おか)す。

 

「実力の向上はつまるところ君たちが取得している職業(クラス)の限界、または発展系の発現があるのかの確認だ」

 

 宿舎の中にある大広間で説明を始めるオメガデルタ。

 

「単なる鍛錬による向上ではなく?」

「その辺りは卑怯な方法だが……。ゲームの概念が分かればそうだと思ってくれても構わない」

「……ゲーム」

 

 実際にゲーム的な概念が通用している。

 それはとてもバカらしいのだが存在しているのだから仕方が無い。

 

「槍を鍛えたらどうなる?」

「馬上用の新しい職業(クラス)になるか、今よりもっと上位の特殊技術(スキル)を得たりするかもしれない」

「歌もですか?」

「この世界だと吟遊詩人(バード)という職業(クラス)がある。その発展系に組み込まれればありえない事はないかもしれない。歌の特殊技術(スキル)は仲間のステータスを上昇させたり、魔法に似た効果を扱えたりする」

「新しい必殺技を覚えるようなものか」

 

 レオンミシェリの言葉に頷くオメガデルタ。

 どんな技などを得られるのかは調べてみないと分からない。

 

「君たちの場合は自然と技などを身につけていくのが主流だと思う。魔法という概念のお陰である程度人為的に操る事が出来たりする」

「……人為的……。それはとても不穏な単語に聞こえるな」

 

 魔法という未知の概念で天羽(あもう)(かなで)は救われた。他にも色々と出来たりするかもしれないが風鳴(かざなり)(つばさ)には()()よく理解出来ない分野だった。

 数々の摩訶不思議な現象を見て来たはずなのに。

 未だに世界には知らない事がたくさんあると思い知る。

 

          

 

 オメガデルタとしてはそれぞれ強化してみたい欲求があった。けれども戦闘が苦手の者を強制的に操るのも気が引ける。

 ならば出来る事は()()()()()()()()を手に入れる事だ。

 それが出来たとしてオメガデルタが軍団を創設し、世界を支配するのかと危惧される事になるが、実際のところただの興味本位で終わる。

 残念ながら周りが思っているほど支配欲が無いためだ。

 

「私とてただの一般人。人並みの幸福程度しか浮かばないのさ」

 

 本来ならば、と付く。

 今現在は魔法という概念のお陰で様々なものが手に入っている。それが新しい趣味ではあるのだが、周りが思っている以上に怖がるので月へと目標を変える事になってしまった。

 ついでに地球への旅を思いついたが、それを可能にするには途方もない時間が必要になる。

 

「人生は短い。なら、自分の趣味に走った方が充実した生活になるのではないかとね」

 

 その趣味がとてもおぞましいのだが、ゲーム的には実はそれほど大したことはない。

 モンスターを殺して楽しむのだから。

 対象が人間に変わっているだけだ。

 

「こうして話すのは同意が欲しいからです。強引な手も出来なくはない」

「……迂闊に了承すれば酷い目に遭いそうな気がするのだが……」

「実際酷いことですよ」

 

 苦笑しながらオメガデルタは言い切った。

 隠し事が苦手という事もあるが、後でバレた時の『反転現象』が一番の理由かもしれない。

 それに人に見せられないものが今も施設にはたくさん転がっている。弁明するだけ無駄な努力であり、徒労だ。

 

 面倒くせー。

 

 もはや世界の真理のような答えだ。

 というか今作では自分の事を多く語る必要はなかった、とオメガデルタは思い出し、余計な思考を追い出す。

 そもそもの主役たるラナーは何をしているのか。

 


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