ラナークエスト 作:テンパランス
話し合いを終えてたっち・みーは立ち去り、執事とメイド達も彼の後を追った。
残ったオメガデルタは深く息を吐く。
身体は
「……正義も悪党も色々と面倒臭いな……」
かといって変態も面倒臭い。
それが人生であるならば色々と細々としていて面白いといえる。
苛烈な舌戦は起きなかったが、たっち・みーとの対話を別方向から聞いていた存在が
どうしても着地時に『びちゃ』という嫌な音を鳴らす。
その音の元凶は赤い
「……てっきり楽しい思い出話しかと思ってたのに……」
「それは本人に言ってくれ。……魔導国の仕事は今、暇なのか?」
「適材適所よ。私も忙しい時と暇な時があるの」
それぞれ活動しているので全員が一緒に動いているわけではない。シモベ達も動員している。
常に働き続けるほどの仕事は実のところ無いに等しい。
定期的に休息を取る人間相手ならば尚更だ。
「……この変態的な施設を充分に堪能させてもらったけれど……。元の身体だったら悶絶しているところよ」
「出来るだけ綺麗に保管する事を心がけてきたよ」
「……そのようだけど……。普通はプレイヤーのみで完結する方法なんだけれど……、貴女は世界に適応させようとしている。そして、それを可能とするべく規模を大きくした。……もしユグドラシルだったら……、何処までやれてたのかな?」
膨大なマップがあり、本当の意味で魔法を自在に扱える世界だが色々と制限がある。
まず『裸』が厳禁な時点で頓挫。
不正行為は常に監視されている。必要とあればアカウント抹消。
ゲームとして遊ばない者に自由は許されない。
「小規模のパワーレベリングかな?」
何処かの拠点を制圧すれば別のギルドが襲い掛かってくる。
秘密の施設を作ろうとしても一人で活動できる拠点は意外と見つからない。あったとしても一軒屋が関の山だ。
† ● †
転移先の世界には制限が殆ど無い。資金が充分にあれば大規模施設も自前で用意出来る。地下施設のような大規模工事は
屋敷くらいは冒険者でも用意出来る。
「手探りの状態からなら……、色々と難しいか」
浮遊する無数の金属板が規則正しく配置されている部屋は地球では絶対に作れない。
風景としては異世界らしい見事さを感じる。
「……あのカズマ君でも……、ここまでの事はきっと出来ないわよね」
先日に出会った転移者も多少の魔法を扱える話しだったが、ここまで大規模なものは恐らく出来ないと予想している。
転移ものの例に漏れず『カズマ』なる人物は普通の冒険者だ。特別な力があるとしても。
他人と比べるのはよくないと思うのだが、それでもやはりオメガデルタは別格だ。
ギルドの一人であり、至高の四十一人と呼ばれる自分たちでさえ出来そうにないものを作り上げてしまった。
「……原作では魔法のスクロールの量産は実際に出来る仕様が確認されているから
と、呟くぶくぶく茶釜。
規模が大きすぎて何もかもが荒唐無稽に思えてしまった。けれども、それは二次創作だから強引な方法が取れるわけではなく、原作でも実証されている方法を応用しているだけ。そう考えれば多少は不可能の値が下がってくる。
やる気さえあれば作れないことはない、を地で行く。
「本筋と研究はなかなか両立できないものよね」
ストーリー小説は決して研究一辺倒には
「それよりも宇宙にはまだ行けないんだっけ?」
「中途半端で良いなら行ける部分はある、という程度。まだ見回りが出来るほどの完成度には至ってないよ」
大急ぎで作ろうとすると雑になり、後々大崩壊に至る可能性が高くなる。
実際に各地に作っている『
自然の驚異に弱い。
落下物の脅威を減らす為に人家の無い土地の上空でなければならない、などの制約がある。
今でこそ安定した施設になっているが、多くの問題点は今も気になるオメガデルタ。