ラナークエスト 作:テンパランス
結論としては合体技のようなものがあるらしい。それ以上の詳しい事は秘密という事になった。
なんでも根掘り葉掘り聞けば教えてくれるわけではない。
興味が無い事はオメガデルタも聞きたいとは思わない。
まずメイド達を呼びつけ、仕切り壁の用意をさせた。
広大な部屋は実に見晴らしが良いものだ。天井も高いし。
「まず我々だけで済ませたい」
「……変身だけだろうな?」
「装備の剥ぎ取りと一緒です。血生臭い事は無しで」
場合によれば確かに腕ごと切り取ることもある。
痛みに関して色々と怖がられると思うので
風鳴達からすれば天羽を救った恩を感じているから出来る限りの情報を出している、とも予想できる。しかし、それが事実かはいちいち確認しない。
恩を感じる相手を彼女達は確実に間違えている。
オメガデルタは自らの欲望に非常に忠実だ。
「イミュテ~ウス、アメノ~ハバキリ、トロ~ン」
「キリタ~、イチイバ~ル、トロ~ン」
「バ~ルウィシャル、ネスケル、ガングニール、トロ~ン」
三人の聖詠。
独特の発声法によって奏でられる声は自然と心地よさを感じる。
この世界に来て歌という概念に久しく触れてこなかったせいもある。
この世界にはゲームのようなBGMが無い。
やはり声は必要かもしれない。
無音の世界や静寂に満ちた世界はきっと心休まらないと思った。
それぞれのアームドギアをまとい、専用のポーズを取る少女たち。
立花は片腕のままだが無事に変身出来た。
刀主体の風鳴のギアは青く、弓や銃火気の雪音は赤、拳主体の立花は黄色。それぞれ専用の色を持っているようで他の物もやはり専用の色となっていることと思われる。
問題は一定程度、歌っていなければならないこと。
会話がしづらい気がするが、そこは無視して作業を進めるしかないと諦める。
「あまり緊張せずに頼みます。……胸を揉んだり尻を撫で回したりはしませんよ」
一応、宣言してから別のメイドを呼ぶ。
早速、風鳴の武器に魔法をかけて受け取る。
また出せるか頼んでみると何処からともなく刀が現れた。
魔法とは違う概念の筈だが、どういう原理になっているのかさっぱり分からない。
力の入れ方なのかどうかは分からないが大きさも変えられるとか。
あまりに巨大なものだと天井を突き破りそうだ。というよりは移動させにくい。
十本ほど床に転がる風鳴の刀。これに特定の名称は無いようだ。
† ● †
腕の装備が外れるか試すと外れる事は外れた。
意外と自由に着脱できるところは驚きだ。色々と変形するのに。
いや、正しくは偉大なる魔法の力か。
頭飾りは取れたが腰周りはさすがに控えておく。
次々と部品を取り外す手際に風鳴は驚きつつ、床に転がる武装に呆れる。
雪音の場合は色々と武器を取るが腰に備え付けの翼のようなものを外してみる。
武装は自在に変化させる事ができ、腰からミサイルの格納庫のようなものが飛び出したり、背中から何処にしまっていたのか次から次へとミサイルが出てくる。これらは当人もよく分かっていない。
「その場のノリって奴よ」
全員が同じ形ではなく、それぞれ個性があるようだ。
さすがに銃弾は撃たせなかった。
続いて立花だが、頭から腕と足元を外してみる。外しても外しても武装が再装着される様は不思議としか言いようがない。
一通りの数をこなした後で歌を止めてもらう。
絶唱などで一段階上の武装が現れたりするらしいが、それは自分達の意思で自由に出来たりはしない。
時と場合や信じる力や愛などが関わらないと何も起きないのだとか。
「……うわ、結構並べたな」
「シンフォギアをこういう風に扱う者など見た事が無い」
「それぞれ聖遺物から作られているそうですね。そして、それぞれに適合しないと駄目だと……」
いわゆる伝説の武器やアイテムの事だ。
ゲームのアイテムで同じ物が作れるとは到底思えないが、現物が存在しない以上は新しい物は作れない。
「取ってみたものの、これが何に使えるかはこれからの調査次第だ。……少なくともこの世界に脅威を与えるような使い方はしないと約束しよう。……というか」
月と
「……服装に変化は無いようだが、絶対量とかの概念は関わらないのか?」
「ミサイルとかぶっ放してもちゃんと服は戻ったぜ。どういう仕組みになっているかまではよく分からねーけどな」
元気よく雪音は笑った。
肉体が減るような仕組みであれば戦うごとに命をすり減らしたりするものだ。それが起きないのであれば安心する。
それとやはり離したあと一定時間後に爆発しないか気になる。