ラナークエスト 作:テンパランス
トイレに行きたい者に場所を伝えて、オメガデルタは宇宙で
殆ど未完成ばかりなので詳細はまだまとまっていない。というよりはまとまる予定も決まっていない。
「異世界から自力で地球へ行く計画。……ただ、色々と問題がありましてね」
と、後半は小声で呟くように言った。
「本気で
近くにあるように見えてかなりの距離がある。
それはもう天文学的数字が普通に算出されるほどだ。
月に行くだけでも最初は一ヶ月以上はかけたかもしれない。
「宇宙開発は簡単ではないな」
「……まあ、なんというか……、ご苦労様」
それぞれ一様に頭を下げてきたのでオメガデルタも礼を述べる。
「新素材の研究は基本だ。確かに様々な材料を研究するのであれば納得出来る」
「あたしのもげた腕も何かの材料になるのかい?」
「ただ単に趣味です。生物の肉体は……、パワーレベリングの足しにするしかない。他にも使い道はあるけれど……、それは君達には言えないような……。それこそ本当の意味でおぞましい実験の数々だ」
「おおぅ」
「宇宙の旅が失敗した場合はどうする? 仮に成功しても色々と不安要素はあるはずだが……」
好奇心一杯の目でキャロルは尋ねた。
研究者にとって対価は安いものだと思っている節があるし、その覚悟も持っていたりするものだ。
探求に対する熱意は恐らく立花たち以上に熱い。
「基地は既に建設できる段階に入っている。他の人達にも解放する予定にしている。将来的には宇宙戦争にまで文明が発達する間、研究の日々で平和になるのではないかと思っている」
その戦争までの期間は数百年か千年ほどと見積もっている。
そういう発想を持つ者がそもそもファンタジー世界には
常識的に考えれば世界を制定するだけで人間であれば充分に寿命を全うしてしまう。
† ● †
人間の制約は寿命だ。それがある限り宇宙開発まで行くのはもっともっと先の事になる。
それを圧倒的物量と発想と能力で短期間に達成しているのがオメガデルタだ。
地上の冒険を早々に放棄し、素材集めに準じている。
そして、それらを可能にするだけのシステムを所有していることも幸運の一つである。
「万能に見えて弱点があるのだが……。今更な問題だ」
この世界には当たり前のように存在している魔法という文化。けれどもその真実を知る者は少ない。
天羽はおそらく問題は無い筈だ。だが、立花がどうなるのかが気がかりになっている。
腕を再生した後で元の世界に戻っても何も問題が無ければオメガデルタは確証を得た事になる。
それはつまり計画を止める理由が無くなる。
もし仮に
それどころかここで得た殆ど全ての恩恵が消失し、おそらくは大勢の転移者は命を落とす可能性が高くなる。
それらは流石に立花達には言えない問題なのだが、教えてあげたい気持ちはとても強かった。
言ったところでどうすることも出来ない事実は変わらないけれど。
覚悟は必要だ。ぬか喜びさせて絶望に叩き落す趣味は残念ながらオメガデルタには無い。
だからこそ必要以上に喋ってしまう性格になっているともいえるかもしれない。
「さあ、身体を寄越せ。……と大見得切った方が
「……悪役という意味では……、そうだな」
「抵抗しても時間の無駄だ。こいつらよりあたしでよければ好きにどうぞ。その方が話しが早く済むんだろ?」
オメガデルタは全てを対象にしている。ならはさっさと要件を済ませてしまえばいい。
天羽がまず実験台になり、どの様子次第で抵抗すればいいと判断した。難しい話しばかりよりは手っ取り早い。
風鳴はもちろん否定する。けれどもそれを天羽は押し留める。
事態を先延ばしにしていては他の者がつかえて身動きが取れない。