ラナークエスト   作:テンパランス

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#156

 act 94 

 

 小さなペンダントから『聖詠』と呼ばれる旋律を与える事によって聖遺物の力を借りるシンフォギア

 様々なギミックを内包しているのは分かったが、それが何処から生まれて何処へ還るのかは使っている本人達はあまり知らない。

 研究している者が別に居て、その者に殆ど任せているからだ。

 

「……無限に湧くのは常識的におかしいんだけどな」

「……非常識な日常を送る我々が言っても説得力無いけど……」

 

 天羽(あもう)(かなで)は新しいシンフォギアの様子を窺いつつ苦笑する。

 魔法という恩恵があるから無茶な運用が出来ているけれど、元の世界に魔法は無い。

 頭では分かっている。目の前の奇跡がどれほど荒唐無稽かは。

 

「一度離れた武器も装者の意思で消したり出来るのは……、変わらないようだ」

 

 消えないものであれば、それはもはや自分の武器ではない、気がする。

 他人の武器を持ってみたが、こちらはどう頑張っても変形はできない。片方が歌っていないから無理、ということもあるかも。

 

「合体技とかあるんなら他人のアームドギアも扱える筈だよな?」

立花(たちばな)を介せば確かに合体技が出せる。それ以外だと互いの信頼関係が必要だ」

「私と調(しらべ)は合体技が出せますよ」

 

 それぞれ色々と出来るようだがオメガデルタにはよく分からない。

 実際に色々と見て、触って、研究するのみだ。

 

「機密の塊なのにやたらとベラベラ喋りやがって……。あたしは知らねーぞ」

 

 新たにやってきた暁達に椅子を出すようにオメガデルタは命令する。

 遠目から見るとたくさんのメイドが入れ替わり立ち代わり現れるので立花(ひびき)達からは不思議な光景に見えていた。

 何らかの合図だとしても自分達の世界には無い技術はただただ感心させられる。

 

「……真に欲しいものは別にあったりするけれど……。私としては君たちが強くなったらどうなるのか知りたいな」

 

 珍しい職業(クラス)を持っているので。

 経験値の割り振りが出来れば発展系も出現するかもしれない。

 もちろん、彼女達自身をそのまま強くする必要は無い。

 

          

 

 珍しい能力を見せてもらっておいてそのまま帰すのは失礼だ。

 立花の腕の治療もあるし、頼まれたからには仕事はきっちりするのがオメガデルタの流儀である。しかし、現在の身体は観光用。適切なものに取り替える必要があるのだが、その準備に少し手間取っている模様。

 即席で作り上げられるほど簡単ではなく、本来ならば早くて数日はかかる。

 今の身体でも出来なくはないけれど、相手方が痛い思いをするのは想像に難くない。

 

「……というわけで残りの人も変身して下さい」

「おいおい」

「……冗談です」

 

 きちんと突っ込みを入れてくる雪音の事が好きになってきた。

 この子とは良いお友達になれそうだ、と。

 

「変身は構わないのだけれど……」

「いいのかよ」

「……床に並べてある武器類は……、どういう用途で使われるのかしら?」

 

 改めて説明すると時間がかかるのだが、オメガデルタ自身もまだ何とも言えない。研究していないから。

 無駄だと分かればがっかりする。それははっきりしている。

 

「アームドギアは使用後には粒子に変換されるはずだが……。魔法という力で固定化されているのか……」

 

 話しを無視してキャロルは熱中していた。

 

「未知の概念は『哲学兵装』も打ち破りそうだな」

「サンプルは多いに越した事はない。多すぎても困るけれど……。それとも魔法による洗脳でも受けて一方的に奪われる方が楽でしょうか?」

 

 強引な手はいくつかある。けれども最初は自由意志に委ねたい。

 あえて物騒な単語を使用するのは別に自分の事を信用させる為ではなく、面倒臭がりだからだ。

 細かい言い訳が苦手。

 それでも秘密を守ると気は頑なに守る。

 

「強引な手であれば敵対者と見なす。……そうなれば事態はただただ混沌と化すだけだな」

「それだけの力を持っているんなら……、抵抗するだけ被害が増えるって意味なんだろうぜ」

 

 シンフォギア装者七人を相手にしても引けを取らないかもしれないし、思っていたより弱いかもしれない。

 けれども未知の能力を持っている事は確かだ。

 温厚な人間ほど怖いものはない、と雪音は思う。

 


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