ラナークエスト   作:テンパランス

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#158

 act 96 

 

 雪音がガタガタと震え始めたのを風鳴達が気づく。

 施設の主がどんな存在か分かり始めた。

 ここに居続ける事はとても危険だと身体が訴えている。興味本位で長居していい場所ではない。

 

「あたしの腕が再生した技なら可能だろうね」

「首だと即死する確率が高いから胴体をスパッとね。肉体的な面積が多ければ再生し易い面があるんで……」

 

 オメガデルタの口ぶりでは昨日今日の問題ではない。

 随分と昔から実験を繰り返してきた事が窺える。この施設のメイドやイビルアイの話しからも雪音は嘘を言っているとは思えなかった。

 いや、認めたというのが正しい。

 認めたくない事情だが。

 

「……あたしら全員が餌食になる可能性があるんだな」

 

 シンフォギアではなく、それを扱う人間丸ごと手に入れる。それは(まさ)しく正しい搾取方法といえる。

 尚且つペンダントは受け取らない。それはつまりアイテムを奪うよりは再生の利く肉体を貰って研究する方が安全度が高くなる。

 得体の知れないアイテムを使おうとすれば壊す危険性があるから。

 

「……ヤベーぞ先輩。……ここから一刻も早く撤退する事をあたしは勧めるぜ」

「まだ立花の治療が残っている」

「……あたしとキャロルだっけ? 二人分で手打ちにしてくれないか。……もし物騒な方法をするっていう意味でならさ。悪い取り引きじゃないと思うぜ。あたしは一応、シンフォギア装者だ」

 

 胸を張って天羽はオメガデルタに不敵な笑みを見せる。だが、心中ではとても怖いと感じていた。

 普通に考えて解剖まがいの事をするようであれば平気でいられる筈はない。

 楽な魔法でもあればいいのだが、その辺りはオメガデルタには窺い知れない。

 

「治癒の魔法は……、治りたいと思ってくれないと効果を発揮しない。強引な手を使えば失敗する確率が高まる」

「うん」

「……だが裏技も存在する。君たちなら理解出来ると思うけれど……、いや……。もう何度か会話に出した筈だが手術の概念だ。麻酔で眠ってもらえば次の日には何故か、身体が二つになっている」

「………」

 

 次の日に身体が二つと言うのは真っ二つ、という意味かと天羽は首をかしげた。

 キャロルはすぐに理解したが大半が天羽と同じく首を傾げてしまった。

 

          

 

 怖い話しをするのは覚悟を持ってもらうことと事前情報を与える事だ。

 いきなり物騒な方法を執り(おこな)えば反発はとても大きくなる。だから、それを少しでも和らげるには説明しかない。

 眠らせたとしても後で怖がられたり、嫌われるのはオメガデルタとて心が痛む。

 それと当人達の同意が必要不可欠。

 何も説明せずに彼女たちと楽しい会話などオメガデルタには出来そうにない。何かを隠そうとする行為は()()()()()()何かしら察知するものだから。

 

「分裂体は本体には影響がない。しかし、分裂体は本体が死ぬと影響を発現する。そのあたりが問題なのだが……。君たちはどんな情報を持っているのか私は()()()気になる」

「モンスター共もそうやって集めたのか。……増やしたのか」

 

 普通に捕らえるのではなく、真っ二つとかして治癒魔法とやらで増殖させている。それは実際に目にしていないけれど効率的であると同時におぞましい方法だと思う。

 それを人間にまで適用すると言っているし、実際に適用されているならばオメガデルタは自分達の敵となりえる。

 

「君達の機密に対する私からの対価だ。さすがに見学したいという勇気ある者は居ないと思うが……。それほど楽しくはないよ」

「……人体を切断する事を楽しいと言う人間は大抵が狂人サイコパスだと思うけど」

「でもまあ、出来るんだから仕方ない」

 

 そう。出来るから悪い。出来ない仕様であればいい。

 そうすると死者蘇生も出来ると言った場合、立花達はどういう反応を見せるのか、気になるけれど言う気にはならなかった。

 殺害実験は考慮していないので。

 目的はあくまでサンプルの入手のみだ。

 

「……それで……、君たちはこのまま逃げてみるかい?」

 

 今すぐ逃げ出す選択。それを選べばオメガデルタは追いかけてくる。

 欲深い人間がすぐに諦めるとは思えないし、なによりも立花が人質に取られている。

 高位の治癒魔法の使い手を捜す手もあるけれど、この世界の事を知らない風鳴たちには頼れるあてなどありはしない。

 

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