ラナークエスト   作:テンパランス

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#162

 act 100 

 

 オメガデルタとしては同じ説明を別の人間にもする気にはなれない。だから代表者として彼女達にまず説明を試みていた。

 反応次第では強引な手法を取る。もちろん出来る限りの努力は怠らない。

 未知の能力はとても魅力的だ。同時に不安要素でもある。

 一喜一憂するのは調査の後だ。

 

「無駄に時間をかけるのはお仕舞いにしましょう。君たちが持っているペンダント以外で大事な持ち物はありますか? それと……体内に何か秘密があるとか?」

「あたしは……たぶん何も無い」

「アームドギアと服以外は……」

「怖い目や痛い目に遭わせる目的は無いが……。君達はそれなりに抵抗を感じるのは理解した。その上でもやはり私は欲しいものは手に入れたいと思っている」

 

 それに元の世界に返りたいと願う者を引き止める気は無い。

 それらを考慮した上でオメガデルタに取れる方法は限られてくる。

 相手を監禁してもいずれは死ぬ。

 手放せば後悔だけが増大する。

 

「普通ならスカウトだが……」

「勝手に出てくるメイドでは満足しないのか?」

「人材も大事だが能力も魅力的でね。それが下らないものだとしても……。収集癖がある者なら理解出来る概念なのだが……」

 

 物に拘らない場合は全く理解されない分野でもある。

 

 普通ならば時間を飛ばすところをあえてしない。

 

 都合よく次の場面転化に移らないので精神的な圧迫は強まるばかりだ。

 狙った獲物は逃がさない。そういう雰囲気に満ちている。

 抵抗すればいいのだが、それこそが相手の思う壺かもしれない。

 シンフォギア装者達は蛇に睨まれた蛙。または熊に遭遇した登山家のような状態だ。

 

「貴女の計画は結局のところ犠牲を生むんじゃないですか?」

 

 月読の言葉にオメガデルタは苦笑しつつ頷いた。

 確かに犠牲なくして計画は遂行できない。それはもちろん否定しない。

 この施設には膨大な犠牲の上に積み重なった結果が存在している。

 

「犠牲といっても命は大事にしたい。魔法の性質上、避けられない条件がある。それが経験値であったり金貨であったり、時には肉体そのものの場合もある。ノーリスクで作れればいいのだが、それはそれで簡単ゆえに瓦解しやすい」

 

 そもそも無から作るものだから代償の無い方法は何も無いのと変わらない。

 

「地球への帰還は目標であり、()()の悲願だが……。私の場合は……、まあ……」

 

 人生を面白く、退屈せずに楽しめればいい。

 もちろん長い時を歩む上で退屈な日常は避けられない。だからといって自分から騒乱のようなイベントを起こそうとは思っていない。

 

          

 

 オメガデルタは椅子に座ったまま装者達を見回す。

 それぞれ様々な表情を彩っているけれど、別に彼女達を冷やかしたい気持ちがあるわけではない。

 手持ちの情報を聞きたいだけ伝えている。それに対してどんな反応をしようが自由だ。

 

「欲しい者を手に入れた後は開放されるのか? その約束が出来るのか?」

「出来るよ。献体さえ手に入れば後は上に持っていくだけだ。その施設を現在、鋭意製作中なのだが……」

「この施設でも足りないってことか?」

 

 雪音の言葉にオメガデルタは頷く。

 姿は変わっても声が同じせいで、違和感無く会話が成立する。それは少し奇妙にも思えた。

 先ほどのポニーテールの少女(シズ・デルタ型)と姿が全く違うのに、と。

 

「君たちのような反応する人間が大多数……。それが真っ当な人間とも言えるけれど……。だからこそ私は一人であり孤独だ」

「………」

「賛同者はもちろん居ない。それは今更聞かなくても……」

 

 手を彼女達に差し出し、疑問点を述べさせようとした。しかし、誰も口を挟まない。いや、出来なかった。

 立花や月読は理解していないから何も言えないようだが、天羽とマリアはなんとなく理解し、キャロルも真剣な表情は崩さなかった。

 

「……『生命球』を作っているんだな、貴女は」

「う~ん、自己生産する場はどうしても必要だから……、まあ、当たらずも遠からず……」

 

 宇宙空間において大事な事は自給自足の場を作り上げる事だ。

 空気も然り。

 それらが無い状態において星からの援助は初期では必要不可欠になる。それらを不要にするには膨大な手間隙が掛かる。

 

「その上での人材確保は単なる興味では娯楽が精一杯の筈……」

 

 と、キャロルの言葉に難しい顔をするオメガデルタ。それと会話に参加するキャロルに驚く装者達。

 何を話しているのかさっぱり理解出来ない年少組み。

 


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