ラナークエスト   作:テンパランス

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 act 101 

 

 オメガデルタの計画は装者達には()()()()()関係無いものなので説明は省かれる。

 彼女(装者)達の目的は転移した世界の永住ではなく、元の世界への帰還だ。その点はオメガデルタに似てはいる。だが、同じ世界からの転移とはまだ確定されていない。

 違う世界の献体を集める行為に関して、既にこの世界は多くを許容している。それらを内包して問題が起きないのであればそれはそれで結構な事だ。

 

「……というより男声がどうも……」

「……見た目とのギャップが……」

 

 オカマっぽい、というのが最初に浮かんだ印象だ。だが、身体は女性。

 

「この声で活動していたから急に変えると個性が無くなるんでね。この身体の本来の声は……、そこの立花さんに似ているそうだよ」

「私の声に、ですか?」

 

 それなりに聞き分けには自信があるオメガデルタも驚いたが、声質は確かに立花のものによく似ている。

 試しに声真似をしようとしたが意味がない事に気付き、がっかりする。

 

「前世で繋がっているとか?」

「声と前世は関係ないと思うよ」

 

 オメガデルタの本来の声と似ている人物を無理に挙げるとすると果たして誰になるのか。

 本人は特定の人物は浮かばなかった。

 

リス娘(クーベル)とソックリだったな、そういえば」

「さて……、長話しも終えなければなりません。少し強引な手でも構いませんか?」

 

 シンフォギアだけで終わる訳がない。客人はまだ後ろに控えている。

 今のまま会話劇を続けても結末には到底たどり着けない。

 

「……人数の差があるけど……、それでも勝てる自信があるようだな」

 

 施設の主の実力は未知数だが、一般人よりも強力な身体能力を持つ自分達にどうやって勝とうというのか。

 雪音は少し興味があった。

 どう見ても一人だ。メイド達を駆使するとして現行戦力も把握したいと思っていたところだ。

 天羽は両手を広げて、やれやれという風に呆れた。

 

「君達の出番は一先ず終わりだ。ゆっくりと休むといい。集団人間種支配(マス・ドミネイトパーソン)

 

 第六位階の魔法で範囲内に居る人間種を長時間意のままに出来る。

 そんな事前情報を持たず、総合レベルも低い彼女達に抗う(すべ)は当然無い。

 精神支配を無効化する種族スキルでもあれば別だ。キャロルのように。

 

「……オレには通用しなかったようだな」

「それでも構わないさ。抵抗してみるかい?」

 

 立花達の安全が保障されるのなら抵抗する理由は無い。むしろどのような方法を取るのか気になっていた。

 もし怪しければ自分の身と引き換えにしてでも逃がしたいとは思うのだが、無駄な行為に終わりそうだという気もしている。

 キャロルは抵抗を諦める素振りを見せた。それに対して手足を拘束するような真似をしてこなかった。

 

          

 

 天羽に通用したので他のメンバーにも通用するのは確実だが、一気に静かになると魔法を使用した本人も少し驚く。

 折角話し相手が出来たのに魔法をかけて支配するというのは少なからず心が痛む。

 今の自分は人間種なので。

 

「この魔法の効果はご覧の通りだ。魔法の効果が切れれば自由になる。そして、操られている間の記憶はちゃんと覚えている」

「………」

「………」

 

 返答は無い。けれども今の言葉は彼女達にちゃんと伝わっている。

 それは()()()やっている事だ。

 

「さて、ここから先は嫌な現場を見せないように注意するよ」

 

 合図を送り、新たなメイドを呼び出す。

 自分達が居る六の宝物庫(ユーノー)の下はモンスターを量産している最中だが、それらを仕切り壁で覆うように指示を出す。それが完了次第、立花達に下の階に降りてもらう。

 素直に指示に従う様は滑稽ですらある。

 部屋の片づけを指示した後、オメガデルタも下に移動する。

 精神支配されているとはいえ意識は残っている。このままでは苦痛を味わう事になるので新たな魔法をかけていく。

 

「それは……?」

「眠らせる魔法。意識があるままでは不都合だからね。君の場合は単に目隠しだ。大事な事は生きる意志を持ち続けること。君達の耐久力を調べたいとか、秘密情報を吐かせるつもりはないよ」

「……分かった」

「意識があるとショック死するかもしれないから、そこは慎重にする。君の場合はちょっと毛色が変わるけれど……。何ごとも一瞬だ」

 

 立花達を眠らせた後、キャロルに隠しと猿轡(さるぐつわ)をする。

 後は永遠とも思える一時の始まりだ。

 


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