ラナークエスト   作:テンパランス

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#174

 act 112 

 

 背中からの一撃で地面に倒れこむ龍緋を横目に、人差し指を唇に当てた鈴が赤龍達に合図する。

 それを察知した赤龍達はバットを持って近付き、後頭部や背中を殴りつける。

 見ようによれば酷い攻撃方法だが姉の許可が出たので仕方が無い。

 

「……今の内に行動不能にしておけば……」

「さあ、お兄ちゃん。負けを認めないとボコボコにするよ」

 

 もう一人の鈴怜は兄の手助けをしたいところだが必至に我慢した。

 本当は助けたい。だけれど、そうすると誰も元の世界に戻れない。

 自分も地球に待たせている人間が居るので。

 容赦の無い攻撃にカズマは自分も加わるべきか迷う。仮に参加すると更に悪評が広まる。かといって龍緋の手助けをしてもメリットが無いし、一生知らない世界で暮らす気も無い。

 とりあえず、めぐみんを安全な場所に避難させる。

 

「……集団リンチだな」

「しかし、敵が一人の場合は……仕方あるまい」

 

 一対一で戦える相手ならともかく。

 それでも風鳴は疑問に思う。

 ただの人間一人にここまで苦戦するものかと。

 今まで化け物みたいな相手ばかりと戦ってきたので調子が狂う。

 これで変身するようであればまだ気持ち的に楽だ。もちろん、不謹慎であり、側に居るご家族に対して申し訳ないと思う。

 

「……武神様。そろそろ起きて反撃かや?」

 

 涼しい顔でのたまうのは祀軍(じぐ)の皇女。

 一連のやり取りにも取り乱した様子は見れない。

 

「……残念ながら私の目的は彼女達の撃滅ではありませんから……。でも、多少は……反撃しないとダメかなと……」

 

 赤龍達の猛襲をものともせずに立ち上がり、彼らを軽い動作で追い払う。

 何がしかの衝撃波を生んだわけではなく、ただの突き飛ばしだ。

 龍緋は無傷ではなく、あちこちが血でにじんでいた。

 両腕の火傷は本物。それが音を立てて修復されるような様子は見られない。

 

「ならば、これはどうです?」

 

 と、別方向からの声に振り向く暇も無く、銃声が届き、次いで巨大な鉄球が飛んできた。

 全身に浴びせられる銃弾。それは魔法の力で打ち出されたもの。

 棘の付いた巨大な鉄球が上方より飛んできたので、それを受け止める。

 ケガや攻撃を全く意に介さない龍緋の様子は歴戦の戦士に引けをとらない。

 

          

 

 両手が塞がった今が好機と捉えたダクネスが剣で切りかかるも強靭な腹筋に阻まれる。

 首を狙わなかったのは度胸が無かっただけ。

 ただでさえ()()()()モンスターを倒した事が無いのだから仕方が無い。

 

「……私の攻撃を物ともしないなんて……。相当な化け物と見ました」

「……その前にご先祖様。あの者の家族の前で化け物呼ばわりは……」

 

 と突っ込みを入れるのは大きなフサフサの尻尾が特徴的の栗鼠(リス)人間『クーベル・(エッシェンバッハ)・パスティヤージュ』だ。

 ご先祖と呼ばれたのは『アデライド・グランマニエ』である。

 

「お気遣い無く」

「どう言い繕っても化け物の方が適切だと思います」

 

 と、赤龍と龍美が言い、鈴も少しだけ頷く。

 鈴怜はお兄ちゃん子なので悪い表現には否定的だ。しかし、鈴も本当はお兄ちゃん子。

 

「……やはり一騎当千の武神様には通じぬか。しかし、この調子では一人勝ちで終わってしまうぞ」

「敵がまだ居ると見て間違いないかと。この程度で満足するような人でもないでしょう」

 

 平然と受け答えをする龍緋。

 怒って反撃しては全滅させかねない。その辺りはもどかしい限りだった。

 現行戦力の程度は知れた。これ以上は新たな助っ人が必要になる。

 今の調子で戦闘を続けても埒が明かない。

 爆裂魔法の連続使用が仮に可能になったとしても全てを受け止める必要性は全く無い。

 ラスボスである龍緋としてはもう少し攻撃力のある相手が欲しいところだった。そうでなければ自分の家族にバットで殴られるだけで終わってしまう。

 それでは何の為に異世界に居るのか分からない。

 

「……その前に火傷を治さなければ……」

 

 おそらく黙っていても自然治癒とかで治りそうだが、周りは回復を待っていてくれるものか疑問だ。

 今の内に殲滅すべしと考えているのならば攻撃の手は止めるべきではない。

 その中で勇敢にも金髪の女性ダクネスが切りかかってきた。

 軽く避けつつ彼女の身なりを分析する。

 右肩に白い鳥の翼が付いた白銀で厚めの鎧に丈の長い黄色いスカート。

 武器は標準的なブロードソードのみ。

 

「……動きが鈍いな」

「う、うるさい」

 

 ダクネスの剣を避けると彼女の背後から物凄い速度の石が飛んできた。それに驚きつつも片手で防御する龍緋。

 少し腕の肉が削れてしまった。

 

「………」

「……宝珠の効果が出たか……」

 

 投石を(おこな)ったのは後から来たターニャだった。

 貫通術式を乗せたものだったが、龍緋の手を粉砕するには至らなかった。だが、多少のケガを負わせただけで満足する。

 

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