ラナークエスト   作:テンパランス

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#175

 act 113 

 

 続々と人数が増えて周りが混沌と化していく。だが、あまり密集していると互いの攻撃の巻き添えになるのではないかとラスボスである龍緋が心配する。

 本当はまだ鍛錬の時期だが好機と見た連中が怒涛に押し寄せているようだ。

 それでも尚、龍緋にとっては何かが足りないような、物足りなさを感じていた。

 それとは別に敵が家族以外女性。それも年下の女の子ばかり。

 戦いにくいことこの上ない。

 

「……それはそれで好敵手と見るべきか……」

 

 世の中には男性が絶対的に強いとは言い切れない。

 兎伽桜を特別視したくないが、彼女は根っからの戦闘民族だ。

 

「いやはや……。これは参ったな」

 

 自分から攻撃できない条件だと勝ちにくい。これには兎伽桜も納得はしないと思うけれど、面白がってしまう。

 であればこのまま面白がって終われば彼女達の勝ちだ。

 

 だが、龍緋はとても面白くない。

 

 お兄ちゃんは負けず嫌いだ。だからこそ赤龍達は警戒している。

 自分達の兄は決して黙って負けたりしない人だと知っているから。

 

「……難しい注文を課してくれる……」

 

 軽く息を吐いた龍緋はすぐに一歩踏み出し、迫っていたダクネスに肉薄する。

 慌てる彼女を思い切り殴りつける訳には()()いかないだろうから、軽く突き飛ばす程度に留めた。

 更に一歩踏み込み身体をひねり、アデライドの攻撃を拳で弾く。

 巨大鉄球を素手で押し返す光景に周りから驚愕と悲鳴が上がる。もちろん、それだけで動きを止めない龍緋は水の女神を自称するアクアに迫り、軽い動作で手刀を叩き込む。

 

「あいたっ」

 

 出会って早々に撃退しては次の戦闘に参加してくれそうにないので適度に手加減しておく。

 あくまで鍛錬の時間を大切にしたい気持ちで(おこな)っている。

 

          

 

 ある程度の邪魔者を撃退してから立花と相対する。

 ボロボロの状態だが戦闘には支障がない。

 

「さあ、かかってきなさい」

 

 周りの喧騒に全く動じない龍緋に対し、立花はずっと慌てていた。それでも構えられたので拳を突き出す。しかし、力は入らなかった。

 それを二度三度と繰り返すと気持ちが落ち着き、手に力が入るようになった。

 いきなり周りを撃滅するのではなく、鍛錬の時間であると理解した為だ。

 

「このメンバーで私を倒すのは有効的ではあるが……、時間はかかるぞ」

 

 一方的に負ける気は無く、適度に本気は出させてもらう。そういう気迫のようなものを立花にぶつける龍緋。

 手加減した戦いはしないぞと受け止め、冷や汗が流れる立花。

 

「はいっ」

 

 その間にも隙あらば襲ってくる女性陣を撃退しつつ立花との鍛錬は続いた。

 魔法による攻撃は流石に起きなかったが、鈴達も離れて見守る事を選んだ。

 攻撃する機会はいつでもやってくるが真面目な時間の邪魔はさすがに出来ない。誰かが邪魔をしない限り。

 そしてお昼頃まで続いた鍛錬を終え、それぞれ宿舎に帰ったり地下施設の様子を窺ったりする者とに別れていく。

 特に後から来たカズマ達は地下施設に興味を持っていた。

 それを止めようとしない風鳴達。

 止める権利は無いが、忠告だけはしておいた。降りる時は気をつけろと。

 

「あー……、どう言えばいいのかな。単なる見学ですって言い張ってください。……たぶん、それで大丈夫だと思います」

「言い張るだけでいいのか?」

 

 苦笑する立花の言葉だが先に入って様子をうかがった彼女の言葉を胸に置く。

 それよりも腕が治った事を素直に喜んだ。

 本当に生えてくるとは思わなかったが無粋な指摘はやめようとカズマは思った。

 


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