ラナークエスト   作:テンパランス

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#176

 act 114 

 

 魔力切れのめぐみん以外の新規の人間達が興味本位で地下施設の中へと潜る。

 一応、立て看板があって一般の入場を許可する旨が書かれていた。

 鍵の無い扉があり、普段は関係者以外の人間が来ない。仮に無断で侵入しても内部に防衛担当が常駐しているので盗難目的で忍び込むのは難しい。

 そして、100メートル以上の下り階段。

 簡素な造りの広い部屋は遮るものが無い分、隠れる場所も無い。

 降りれば必ず目立つ。

 そん場所を今まさにカズマ達は降りていた。

 外よりも明るいのではないかと思える白亜の如きタイル張りの外壁。

 

「……これだけ明るいとは……」

 

 天窓がいくつか見える程度だが電気要らずの様相に少し驚く。

 手すりに掴まりながら数分かけて降り切った。

 下の様子は既に見えていたが活動している人間の影は無く、荷物や仕切り壁、黒板に椅子などが点在するのみ。

 

「……もっと細々(こまごま)としたところだと思ってた」

「ここは研究室か?」

 

 階段の中ほどから見えていたが空中にいくつか小さな立方体が浮かんでいた。

 大きさは様々で最大で10センチメートルくらい。

 それらは動き周らず、現場に滞空している。

 

「……でも、嫌な雰囲気はビシビシ感じるわね。特に……、壁の向こうとか下とかから」

 

 アクアが辺りを注意深く見回しながら言う。

 女神特有の感知能力でも働いているのかもしれない。

 

「ここは……研究室なのだな。……それにしては無用心だが……」

「滅多に人が来ないからだろ。立花達はここで施設の責任者に会ってたみたいだし……。というか、そうでもなきゃ腕は治らないだろう」

 

 責任者らしき姿はチラっとしか見ていないが桃色っぽい髪の毛をポニーテールにした女性というのは覚えている。

 

          

 

 先客が居るかと思っていたが見事に誰も居ない。

 先に入っていた立花の(げん)によれば瞬間移動するメイドが居るとのことだった。

 

「……思ってたのと違うな。もっとたくさんの研究者が居るイメージがあったんだが……」

「他の部屋に居るかもよ」

 

 モンスターについては外に巨大な獅子が寝そべっているので確認は済んでいる。

 以前の世界(アクセルの街)はもう少し賑やかな様子で騒動もたくさんあった。けれどもこの世界は粗方の騒動が終わっているようで、比較的平和に思えた。

 魔導王なるラスボスのような存在は居るけれど、人間に対して徹底抗戦や迫害はしていないのが不思議だった。

 いや、世界にしっかりと溶け込んでおり、迂闊に排除できるような生易しい存在ではない。

 

「下に行く階段と扉がいくつか……。進んでみるか?」

 

 ダクネスの提案にカズマは顎に手を当てて考え込む。

 現場を調査するべきか、それとも進んでみるか。という選択くらいしか浮かばない。

 複雑な迷宮なら冒険のし甲斐があるのだが、ここはそういうものではないようだ。

 数百メートル四方。しっかり計ったわけではないが正方形に近い形をしていると予想する。

 試しに近くの扉まで移動してみる。

 

「無駄に広いし、天井までが……高いな」

 

 ここまで吹き抜けにする意味があるのか、とカズマは(いぶか)しむ。

 自分家では無いので文句を言っても仕方がない。

 廃城のようなものならまだRPG(ロールプレイングゲーム)的なのだが。

 

「床も綺麗だし、手入れはきちんとされているようだ」

 

 自分達が最初に入ったわけではないが床を見る限りは恒常的に使用されている事が窺えた。

 扉へ向かおうとしていたカズマ達に遅れてターニャ神崎一家、他の者も何人か降りてきた。

 

「うわ~……。すごい広い空間……」

「何かの研究室?」

「倉庫にしては規模がデカイしな」

 

 そんな事を話し*1つつ地下一階にきちんと整列するまで五分かかった。

 一般的な施設に比べて道が長いので仕方がない。

 それぞれ一様に感嘆の吐息を漏らす。

 

*1
『話』ではなく『話し』である。全ての作品において共通明記事項。送り仮名は必須。


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