ラナークエスト 作:テンパランス
もし、別の異世界からの来訪者がもっと強化されたら――
そう考える者たちが果たしてどれほどいるのか。
原作の枠組みから脱却できない限り、それは望むべくもない。しかし、未知の可能性を追求するという観点があるというのならば――実現しない手はない。
『メックヴァラヌス』はまあいい。様々なところからセリフを引っこ抜きやがって。多方面から叱られればいい。
「……うちの
主人公『
並行世界を行き来する聖遺物『ギャラルホルン』が警告を発する期間があまりにも短い。地球はそれほど頻繁に危機に立たされているのか。
多くの異世界が一年ほどの期間しか描かれない。単なる会話劇なら細かな世界設定は不要。記号的なもので充分である。――ゴブリン●●ヤーみたいに。
それよりもシンフォギア勢はせっかくモンスター討伐をしているのに強くなった、という場面が描かれない。それはそれで勿体ない。
「私達が強くなるというのは機能の追加とか? 金色になったりしたけれど」
「経験値を積むから機能は関係ない。肉体的なことだな」
『ダインスレイフ』を使えば基礎ステータスが大幅に増えることが確認されている。もっと更なる飛躍をもし取れたら――という話しだ。
(ギャラルホルンは携帯ゲームの方だけどな)
(実際問題として私達ってどう強くなるんでしょう? 筋肉モリモリになるとか?)
それを実際に実証してみよう。
その前にもう少しモンスターを討伐しておかなければならない。
『屠殺場』で好き放題生き物を殺す作業に従事してもらい、充分な経験値をためる。
「……生き物を殺すって」
「異世界と言えばモンスター退治が基本だ。可愛い子猫を殺すわけじゃねー」
雪音クリスでも銃口を猫に向けたりはしない。だが、生物としての生き物であるところはモンスターも変わらないのがもどかしいところだ。
レオンミシェリ・ガレット・デ・ロワが抵抗を覚えたように。
平和な国や日本人にとって殺害行為は簡単ではない。だが、割り切っている部分で言えばターニャ・フォン・デグレチャフの方が精神的にも優れていると言える。
佐藤和真も討伐経験がないわけではないが得意というほどのことはない。都合のいい
† ● †
ラスボスを倒さなければならないので立花には我慢して望んでもらう。
出来ない場合は精神支配によって強引に進められるだけだ。
――その後、都合レベル五〇ほどになってもらう。
(……いきなり時間が飛んでしまった)
まず立花響の基礎レベル構成は以下の通り。
| 職業 | |
|---|---|
| 一〇 | |
| 一〇 | |
| 一五 | |
| 一〇 | |
| その他(残り五レベル) | |
細かなステータスは都合により省くが――極端な事例であれば他と比較しやすい。どの道、これは一過性にすぎない。
(……わー、唐突に強くなった気がする。心なしか、歌も上手くなったような。後、疲れにくい)
(……急に爆乳になったり……は無いな)
今なら絶唱を数回歌っても平気ではないかとさえ。
この世界でレベル三〇台を超えると英雄の域と呼ばれる。今の立花は更に上に居るわけなので伝説級と呼ばれてもおかしくない。
アルシェ・イーブ・リイル・フルトが見たら騒ぎ出すこと間違いなし。
「早速変身してみます」
聖詠を口ずさみアームドギアをまとう立花。
それでも従来以上の力を引き出せる今はもっと過激なことができる。
まず、疲労しにくい。より長い時間の戦闘を可能にする。
歌唱力は風鳴翼以上。このままプロになれるレベルだ。
(
「これが私のシンフォギアだぁぁぁ!」
以前であればただうるさいだけの大絶叫も今は音響兵器並み。
聞く者の鼓膜を容赦なく破っていく。
立花以外が死屍累々とする現状に当人は当然のごとく慌てた。彼女の音波攻撃に耐えられるのは現地で活動しているオメガデルタ達だ。ある意味では異世界のプロ集団ともいえる。その彼らによってケガ人は即座に癒される。
「うわぉ!」
力の限りアームドギアに力を込めて変形させると巨大な穿孔ドリルが現れた。
腕力が段違いに増えたお陰もあり、腕を振ってもすぐに折れたりしない。
「うるせーうるせー。腕を振るな、危ない」
「立花。それは周りへの被害が甚大になる。あまり動かないでくれ」
得た力に喜ぶのは風鳴たちにも理解できるが、想像以上の結果にただただ驚いた。
彼女一人でチフォージュ・シャトーを落とせてもおかしくないと思わせる。
攻撃に特化してばかりでは大切なものは守れない。立花はアームドギアを元の大きさに戻した。
(誰かと繋ぐこの手は決して破壊のためだけに使われるべきじゃない)
だが、今まで殴る事しかしてこなかった。今は手を握れろうものなら相手の手をつぶしてしまいそう。
どうしたらいいのか、と思い悩む。
(私の意志で計上はある程度変化させられる。今までもそうだったし……。ならば使い手である私はもっとイメージを固めなきゃ)
唸る立花の元に『マグヌム・オプス』の主であり、現在はクレマンティーヌの身体を使用しているオメガデルタがやってきた。
獲得した
† ● †
それぞれの
何も知らないよりはたくさんのことを知る方が動きやすいものだ。
この世界にはない『
最終レベルにもなると絶唱での肉体負荷が大幅に減少する。
分かりやすい言葉で言うならば――相手に声が良く届く。
更に未収得だが
「レベルアップによって
「ええ~!? 魔法、使えるようになったんですか!?」
元気な女の子なので声が大きい。だからといって普段の声は殺人的だったりはしない。
先ほどの絶叫もかなり無理をして出したものだ。
「習得しないと魔法は使えないよ。今の君はMPがあるだけ」
「そ、そうですか……」
「仲間を集団転移させたり不破を起こしたり……。後はなんだ? 音波攻撃か。そんなのがあるよ」
仲間の不破は望まないが他にも魔法はあるという。
彼女が望めば色々と教える準備は整えられる。
「……ちなみにだが……、主殿」
オメガデルタの側に駆け寄り小声で質問する風鳴翼。
肉体改造ができるのか、と。主に巨乳など。
条件次第では可能であることを伝える。――実際、それを成したのがイビルアイだ。
顔の造詣に関しては絵心が無いので不可能だが、出来なくて良かったと思っている。下手にいじれば奇形児と変わらなくなる怖さがあるので。
一般プレイヤーのほとんどは初期設定を大幅に改良している。異形種は変更させにくいがやる気があれば出来なくはない。
「肉体変化は一度変更すると取り返しがつきにくいです。それこそ変更した部分をそぎ落としてからの殺害とか、物騒なことになります」
「……殺害」
蘇生技術があるからこそ出来る設定のリセットだ。イビルアイもそれを了承し上で自らの願望を叶えた。
それと主であるオメガデルタにとってみれば日常茶判事のことなので全く抵抗なく
† ● †
増強された立花響は肉体的なステータス上昇以外、目立った変化はない。
新しい聖詠を覚えたりもしていない。
首に下げているアームドギアのペンダントが特別なものであるため、これをどうにかしない限りは新しい機能は見込めない。
立花は拳の連打などで技のキレに自分で驚いた。衝撃波が出たり、空中で普段以上の回し蹴りが出来たり――
(このまま帰っていいのかな。もし帰ったら皆に驚かれるなー、きっと)
「そういえば一度増えたレベルはどうやって下げるんだ?」
「通常であればデスペナルティです。早い話しが死んだり殺すことです。もう一つは……魔法の効果に頼る。こちらは少し面倒です。該当する魔法を探さないといけないので」
どんな魔法かは知っているけれど何を代償にするのかまで調べていないので、それの調査のことを伝えた。
もう一つ確実なのは経験値を媒介にする魔法だが、こちらは立花が何も習得していないので無意味だ。
(……殺害。先ほどから物騒極まりないな)
(……屠殺場があるくらいだ、なんて軽く思ってはいけないんだろうな)
異世界だからモンスターを好き放題殺せる。そういう観点で言えばオメガデルタの発言は特におかしなことはない。
向かってくるクリーチャーは全て敵だ。人類を抹殺しに来るノイズやアルカ・ノイズも同義ではないか。
ここは淡々とモンスターを倒せる世界である。
「立花さんは単に
「……そ、そうか」
「自動的に取得する
それを含めて無難な調整をしたはずだ。残りは彼女自身が迂闊に取得しない限り――
本来は長い期間をかけて修行をする。急激な成長は精神的にも多大な負荷となるものだ。
立花はその点ではどうなのか。見ている限りでは浮かれている以外に異常は見られない。
「多くの二次創作でこういうデータ的な部分を気にする人、見たことないけど……。ちゃんとした説明聞きたい人、居るかな?」
キャラクターのセリフ以外に興味を持つ読者はほぼ皆無。そうでない場合は多くの質問があるはず。――と思って下を眺めればハーメルンの感想ではそういうことは推奨されていないという残念さが――
何のための感想なんだが。単なる誉め言葉だけではヤラセと変わらない。
「はーい!
元気よく立花が手を挙げて言った。こういう元気娘はオメガデルタにとって好きな部類だ。
見た目はクレマンティーヌ。男声だけど。――この男声の謎を解けた人は今のところ居ない。
「人間をやめます」
「人間をやめる? うぇえ!?」
「フレーバーテキストによればそうなります。一部の
モンスターの能力を極めると本当にそのモンスターに身体が変化したり。
他にも色々と最終レベルが怖い能力になっているのがある。
「
一般人の多くは早々に経験値を貯められず、英雄の域までレベルを上げることは出来ない。それがオーバーロードの世界だ。
ゲーム的な知識があっても異世界では通用しづらい。
効率的な経験値稼ぎがどこかにあるのかもしれないが、そうであればもっと強者が居なくてはならない。
更にこの世界にはレベル差による補正が働き、強者に歯が立たなくなる現象が起きる。意図的にある程度の制約を設けられるが打倒するのは簡単ではない。
運が良かったり、奇跡の力を発動させたり。そういった力業はあまり役に立たない。
「それを踏まえて皆さんがあのラスボス『神崎龍緋』を打倒するのは難しいと結論付けます」
「……そうなのか」
オメガデルタであれば多少の苦戦は強いるものの圧倒的な敗北は無い。他の至高のメンバーも同様に。
ダメージが通っているのは彼が人間だからだ。その部分を突かないと攻略は難しい。即死攻撃は今のところ通用しないことが分かっている。
パワーアップした立花でも打倒までには至らないという恐ろしい事実。
倒せそうで倒せない。そういう相手が今作のラスボスとなっている。
特殊合金製のバッドでぶっ叩いても痛いで済ませる人間だ。あと、数回程度の爆裂魔法にも耐えきっている。普通ではないのは明白だ。
攻撃関係以外の――精神攻撃など――ほとんどの魔法を無効化する。
唯一の攻略は物理攻撃のみ。その点で言えばシンフォギアとは相性が良いはずなのだが――
レベルが圧倒的に足りない。
† ● †
無暗に強化して彼を打倒したとしても彼女たちが元の世界に戻った後、どうなるか。
ステータスの調整を独自に出来る施設があればなんでもないが――出来るだけ違和感を少なくしなければ日常生活が危うくなる。そう考えるとオメガデルタの手も緩んでしまう。
「ねえねえ。彼女の次は私を強化してくれない? 特に知力」
と、今まで大人しくていた水色の髪の自称女神アクアが詰め寄ってきた。
本物だと言い張っているがカズマ達は『自称』と連呼するのでオメガデルタもついそう呼んでしまう。
「……知力だけ増やすことは出来ませんが、それ関係の
アクアのステータスは未確認だが彼女たちが居た世界では最高レベルに達しようとも知力は絶対に増えないとお墨付きをもらったらしい。
元々バカなのか、ステータスの異常なのかは分からない。
「でもこいつのギルドカードで経験値をいくらステータスに割り振っても知力は全く増えなかったぜ」
残念な生き物を見るような目でカズマが言った。
彼らの中ではほぼ決定事項のようだ。その仕様とこちらの世界の仕様が一致しているわけもなく――
試しにアクアを引き連れて小さな邸宅に向かう。
『マグヌム・オプス』にある建物の中で一番庶民的な様相を持つ建物こそがオメガデルタの居城である。――二階建ての一軒家だけど。
拠点となる建物であれば城だろうとボロ屋だろうと関係ない。洞窟内でも同様だ。
アクアを椅子に座らせ、例によって配下になる文言を言わせる。これについてはもうそういうものだとオメガデルタは諦めている。他の方法も見つからないので。
その儀式じみたイベントを済ませて確認したアクアのステータスは以下の通り。
| 種族 | |
|---|---|
| 一〇 | |
| 職業 | |
| 一〇 | |
| 一〇 | |
| その他(残り三七レベル) | |
見た目に反してレベルが高い。これで知力が足りないのは不思議である。
信仰系の
ただ、このレベル構成はこちらの世界のものであってアクア達が持つギルドカードに記されたものとは違う。
これは世界によって調整が
(元の世界に戻っても反映が変わらないかは確認できない。女神ということだからレベル上限を突破できる可能性はあるのかな? ここまで高いのは中々見ないし)
宴会芸を除けば残りのレベルも信仰系に傾いている。対
一度レベルを下げて再構成を図るのが無難だが、デスペナルティ以外は意外と面倒である。後、蘇生費用もかかる。
ピンポイントで知力の数値を上げる方法は実のところない。出来ることは経験値を振り分ける事だ。
もし、彼女の知力がすでに上限値だというのであれば新たに増やすことは絶望的と言える。
(知力を妨げるのが
まずは一つずつ読み解く必要がある。
キャラクターはフレーバーテキストは
であれば素で彼女は知力を増やせない人間と言えてしまう。
オメガデルタはしばらく悩んだ。そんな馬鹿なケースを見たことが無かったので。
† ● †
必要事項を紙に書き、アクアの元に向かう。長時間椅子に座らせたまま待機させるのは苦痛だろうから。
ステータス確認するにはどうしても相手に大人しくしていてもらわなければならないので普段は精神支配する。それと何をやっているのかは基本的に見せない。
「……既に一定レベルであるアクアさんの場合、種族的な転職をご希望された方が……」
「嫌よ! 女神を
「力や知力だけ都合よく増やすことは出来ません。それは個々人の潜在能力なので。それはさすがに私でもどうにもなりませんね」
だからこそ何が起きるか分からない楽しみがある。
アクアは種族的な変化は望まないようなので賢くなる装備品をいくつか見繕うことにした。それとレベルにまだ余裕があるのでなりたい
マルチクラスを採用できるので。といっても何でもいいわけではないが。
「貴女、意図的に増強できるすべを持ってて何とかできないわけ?」
「全ての数値を最高にする、というのはさすがに無理です。仕様のようなもので。だからこそ無敵のキャラクターが出来ないわけで……」
もし、全てにおいて万能であればユグドラシルというゲームは既に破綻している。
キャラクターメイキングにおいて重要なのは制限がある中で構築することだ。魔導王として君臨しているアインズ・ウール・ゴウンですら規則を守っている。
それが例え相手が神だとしても。
意図的に同じキャラクターを作成できない。
これは転移し世界にも適用されているらしい。
強引な方法として最低レベルまで下げて改めて知力が増えるような
――またはこの場でアクアを解体して実験するか、だ。オメガデルタ的にはそれが一番の解決策だ。
シンフォギアや演算宝珠のような特殊なアイテムを介在しなければ行使できない能力でもない限り、未知の能力は何でも気になる性質だ。
複数の世界特有の能力があっても注ぎ込める上限は決まっている。それを突破するには更なる実験が必要になる。そして、それを成すとっておきの素材は既に手に入れてある。
(……アクア達が居ると都合が悪い気がする。……彼女達が去ったら素材も消えるかどうかという問題なのだが……)
だからこそ楽しみを後に取っている。今から手を出すと取り返しがつかなくなるので慎重に進めている。
それよりもアクアのステータスをどうにかできないか、さらに悩んでみたものの正攻法ではどうにもならないようだ。
真剣な顔で唸るクレマンティーヌ顔のオメガデルタの様子に申し訳なさを感じたのか、アクアはそっと建物から出ていった。