ラナークエスト   作:テンパランス

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勇気の碧クエスト
#027


 act 1 

 

 謎の『存在X』に翻弄される形で理不尽な転生で戦場に叩き込まれて数年が経過した。

 保身と安定が金髪碧眼の生きる糧。

 無能は要らない。

 神など信じないし、奴らは邪神の(たぐい)だ。

 一方的に信仰心を押し付ける相手を信用しろと言うのがそもそもの間違いなのだ、と小さな身体の少女は思う。

 

「……度重なる欠陥品による爆発で次なる世界にシフトするとは……」

 

 いよいよをもって『存在X』に復讐せねばなるまい。だが、それでも、しかし、と思う。

 次の世界への転生ならばまたも赤子からのリスタートだと覚悟はしていたが、装備品の喪失以外は五体満足なのが少し怖い。

 齢十歳の『ターニャ・デグレチャフ』という少女は身体こそ華奢だが、幼さの雰囲気を欠片も持ち合わせていない生粋の軍人だった。

 転生とはいえ母なる祖国への愛国心は誰にも負けないと自負している。もちろん、完全自由主義者(リバタリアン)のターニャにとって用無しと判断すればいつでも斬り捨てる。利用できると思っている間だけの愛国心は、となるが。

 組織という枠組みこそが自分の居るべき場所だ。もちろん、理不尽な事もある。

 敷かれたレールに乗っている限りは組織は個人に対し様々な恩恵を与えてくれる。そして、個人は組織の為に粉骨砕身するのだ。

 

「……とはいえだ。やはりここは帝国ではないのか。……服装はクリア。備品は呪われた九五式が一つか……。裸で放り出されるよりはマシだ」

 

 神の祝詞(のりと)という呪詛を吐くかぎりにおいて絶大なる力を与えてくれる演算宝珠エレニウム工廠(こうしょう)製九五式』だが、ちゃんと機能するのかは試したくはないな、とターニャは思う。

 

          

 

 気が付けば異世界というのは()()()ともなれば慣れた、と言いたい所だが実際は驚きに包まれている。

 安全で楽な仕事でのんびりと生活が出来ると思ったら知らない世界に放り込まれているのだから呆れてしまう。

 

「あいたた……。ったく、ここはどこなのよ~」

 

 と、不満を口にするのは水色の長い髪の毛で桃色の羽衣をまとう女性。

 青を基調とした見慣れない服装で統一されていた。

 

「異世界じゃねーの」

 

 と、素っ気ない態度なのは平均的な日本人の男子。

 特徴らしいところが無い。

 

「特徴が無くて悪かったな」

 

 他には魔法使い風の格好をした黒髪で赤い瞳の少女。

 丸い宝石がはまった杖と大き目の三角帽子をかぶっている。服装は黒いブーツと黒い衣服にマントを羽織っていた。

 もう一人は金髪碧眼で白銀の鎧を身にまとう騎士風の女性が倒れていた。

 

「いきなり別世界に叩き込まれたようだが……。ここはどこなんだアクア?」

「え~と……。全く身に覚えのない風景ってことは確かね」

 

 水色の髪の毛をかき上げる女性は女神の『アクア』という。

 男子は十代後半の学生風で『佐藤(さとう)和真(かずま)』という名前だ。

 魔法使い風の少女は『めぐみん』で騎士風の女性は『ダスティネス・フォード・ララティーナ』という。

 

(ふう)ってなんですか!? 私は紅魔(こうま)のれっきとしたアークウィザードですよ」

「いいじゃないか。一目で職業を特定するのは難しいと思うぞ」

「自己紹介が()()()されたようですが……。何なんですか?」

モノローグじゃねーの? 自分で言うより楽だろ」

「……私のことはダクネスと呼んでくれ」

 

 騎士風のダクネスは見晴らしのいい平原に向かって言った。

 

          

 

 爆発はいつもの事だが今回ばかりは死んだかも、と思うのは短めの茶髪に元気一杯の笑顔を絶やさない少女。名前は『立花(たちばな)(ひびき)』といい、世界を救う仕事に従事していた。

 

「あれ~。ここ、何所?」

 

 何も無い平原に放り出されたことは理解した。

 その次に自分の身体を確認する。

 服装は普段着で首から提げているアクセサリーはちゃんとかかっていた。

 

「連絡手段は……、無し……。次は……」

 

 見知らぬ世界に一人きり。仲間の姿は無いが居ない可能性はある。

 とはいえ、少しは慣れた場所に何人か人が居るのは見えているので寂しくは無い。

 自分と同じ境遇という線もあるが、それぞれ見知らぬ人間のようだった。

 立花は自分の頬を叩いて気合を入れる。

 

「へーきへっちゃら。……って言うには……、まだ早いかな」

 

 苦笑を浮かべつつ遠くに居る人物達の下に向かってみる事にした。

 

          

 

 彼女達が居るのは『バハルス帝国』と『カッツェ平野』の中間地点。

 帝国兵が定期的に巡回しているので治安は悪くないし、道路もしっかりと整備されていた。

 広大な土地は殆どが麦畑。他には野菜などに牧畜も盛んだ。ただし、ターニャ達の場所は畑ではなく、ただの平原で整備された道路も無い。

 大雑把な視点で言えば平和な風景だ。だが、あちこちからモンスターが現れて村人を襲う。

 いくつもの国と接しているので戦争も起きるし、亜人種による人間狩りの被害も受けることがある。

 表向きには軍事国家だが、ある時期に起こした戦争以来、帝国はなりを潜めている。というより再度の戦争を起こす気概を失っていた。

 『魔導国』の王が用いた超絶な魔法に兵士達が恐れおののいた為でもある。

 なので今は静かな時間が流れていた。

 

 平穏は突如として破られる。

 

 様々な世界から何者かが転移してきた。それが立花たちではあるけれど、転移の原因は不明。

 

クリエイト・ウォーター

 

 と、おもむろにアクアは魔法を使った。

 手から吹き出た水が地面にぶちまけられる。

 

「魔法は使えるみたいね」

「すごいすごい!」

 

 と、手を叩いて喜ぶのは立花だった。

 宴会芸を見せても立花は喜ぶがカズマ達は呆れていた。

 女神アクアはお調子者で誉められる事に弱い。

 

「……ふん。ならば、次は私の爆裂魔法を……」

見知らぬ土地で爆裂魔法を使うんじゃねー! 後で大問題になるだろうが」

「そうだぞ、めぐみん。破壊活動は控えた方がいい」

 

 そんな彼女たちを冷徹な視線で見つめるのはターニャだった。

 軍服を着ていないので民間人のように見える。だが、魔法を使う者達には驚いた。

 銃弾飛び交う戦場という訳ではないようなので、興味本位で眺めている。

 ずっと見ているわけにはいかないが、彼女たちも自分(ターニャ)と同じ境遇のようだった。

 

「俺達だけが転移したのかな」

「位置から見て、別の場所にも居るかもしれないな」

 

 空を飛ぼうにも装備を失っているターニャは徒歩で近隣の村などを見つけるしかないと思っていた。

 水に関しては魔法で出したものが飲めるのか気になるけれど。食料の確保は考えておかなければならない。

 武器は無し。適当な刃物でも戦えない事はないけれど、敵国の兵士まで来ている可能性は捨て切れない。

 戦いになれば彼らを守れる保証は無いので切り捨てる事も考慮する。

 命令があれば従うのが軍人の務めだが。

 

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