ラナークエスト 作:テンパランス
武器に関してはターニャは小石しか無い。立花の武装に期待するのも悪い気がする。
普段は敵国の人間を殺す仕事が殆どだったのでモンスター退治はゲームでしか経験が無い。
剣と魔法の世界に銃があるのか。いや、存在するのか、と。
一応、武具の店を確認する必要がある。
立花に一緒に来るかと尋ねたら『うん』と即答された。
カズマ達と別れて武具店を探す。
冒険者にとって武器は必需品だ。
そもそもどうやって手に入れるのか、やはりそれは当たり前だが店で買うのが基本だ。
見知らぬダンジョンに潜って手に入れるやり方では枯渇していても不思議は無い。
行き交う人に尋ねてたどり着いた武具店には何人か冒険者が商品を物色していた。
ナイフ。ショートソードに弓に杖と並んでいるのだが、あまり質が良いように見えない。
値段も安そうだ。
問題の銃器類は一つも無かった。
それ専用の店でもあるのか尋ねてみたが、銃など聞いた事が無いという。
小さいスリングと呼ばれる小石を敵に投げつけるものはあった。とても原始的で思わずターニャは脱力した。
文明レベルが想定よりも低くて。
確かにここは西洋ファンタジーの世界だ。
「子供が刃物なんか眺めて。誰か殺すのかい、おチビちゃん」
一目で女の子と看破できる者は居ないようだ。
身体が
ターニャは声をかけてきた男性に向き直り、姿勢を正す。
両手は後ろで組み、口角を吊り上げる。
「生きる為にモンスターを討伐する。それには武器が必要だ」
はっきりとした物言いに男性どころか店内に居た他の冒険者風の人間達が驚いた。
威圧する目的ではなく、ただ単に驚かせようと思った
ここが祖国ならば敬礼でもするところだが、異世界の住人にはわけも分からず驚かれるだけだ。
それよりも武器を購入する資金が心許ないのでおそらくは買えない。
もし買えたとしても宿代が吹き飛ぶ気がする。
今回は様子見で充分だと判断し、店を出る。
† ● †
適度に小石を集めておく必要がある。そう判断して宿に戻る。
部屋に戻って一息つく。
「武器が無いなら私が頑張るけれど?」
と、ターニャそっくりの声を持つ立花が口を開いた。
一緒に喋ると混乱するから黙っていたのかもしれない。喋るな、と命令したわけでも頼んだわけではないけれど、変わった娘だと思った。
「生物を殺せるのか?」
「生物っぽいものは倒した事があるよ。……生き物を殺すっていうのは……ちょっと……」
「人も殺せない小娘は後方支援がお似合いだ。おそらく君は民間人だろう? それでもモンスターという生き物を殺せるなら好きにするといい」
今後の生活を考えるとのんびり
ある程度の活動資金は急務の問題だ。
「亜人共は人間を食うらしいな。そういう世界に来て何も殺せません、という言い訳は通用しない。覚悟はしておく事だ」
「………」
「そういえば、この国には奴隷市場があるそうだぞ」
正義感を振りかざしたところで文化という強敵に一市民程度が
現実を知り、成長する。臭い話しだが、目を逸らさない勇気は今の自分達には大事なことだ。
聞いた限りにおいて人間を殺す依頼というものは無いらしい。一応、殺人罪が存在する。
「私はモンスター退治をやってみようと思う。見学でも付いてくるなら好きにするといい」
旅は道連れというが元の世界に戻るヒントがどこにも見当たらない。それはそれで厄介なのだが、一生この世界で暮らす事になるのか。
急な場面展開に慣れるには時間がまだ足りない。
全く存在Xという邪神は至極厄介極まりないものだ、とターニャはため息を吐きつつ思った。
手荷物が殆ど無いターニャは大人しい立花と共に冒険者ギルドに向かい、初心者用の依頼を受ける事にした。
内容は単純で規定の数のモンスターを倒して報告するだけ。
報酬は銅貨五十枚。それに獲得部位が追加される。
バハルス帝国に現れるモンスターのリストを見せてもらったが帝国語で書かれていて写真のようなイラスト類は有料となっていた。
「見慣れないモンスターの場合は戦わず、逃げてください」
モンスターを倒すとメンバーカードに情報が記載される。討伐数が不明でもギルドが把握できるので心配は無いという。
最初なのでギルドに常駐している役員の一人が監視や助言の為に同行する事になった。
「場所を案内しなければならないと思ってな」
討伐場所は帝都に程近い森の近く。そこに初心者用の施設が作られている。
モンスターを誘き寄せる為に作られた施設だが大抵は
カッツェ平野に現れるモンスターの殆どがアンデッドモンスターで銀級以上の冒険者でなければ自由に行き来出来ない危険な場所と化している。
一年の大半を視界不良の霧によって覆われていて不気味な様相を呈しているという。
† ● †
役員に案内されたターニャと立花。
はた目には冒険者とは思えない姿をしている。
軍服幼女と普通の女子高生。これでモンスター退治に来たと誰が信じるのか。
冒険者登録を済ませているので依頼書を提出することで正式に仕事を受領する事になる。ゆえに正式な冒険者として扱わなければならないのだから仕方が無いが、役員は苦笑していた。
危ないと思えば撤退しても問題は無い。ただ、これがちゃんとした依頼主であれば多額の賠償金を支払う事態に陥る。
そうそう甘い世界ではないのが冒険者というものだ。
「指定の部位は耳だ。さすがに
アンデッドモンスターの場合は持ち帰られる部位は無いと言われる。あと、銅プレートに倒せる範囲では、と言われた。
討伐対象の
肌は緑がかって下顎から牙が飛び出るように生えている。頭髪はほぼ無く、知能は低いが割りと狡猾なモンスターと言われている。
狡猾ならば賢いと言わないのは中堅以上の冒険者にとっては雑魚モンスター扱いだから。それと種類が多く、見た目では強さが判断できない。
街の近くに現れる
このモンスターは姿こそ
さすがにバハルス帝国では目撃例は無いが王国で発見例が伝わってきたので冒険者組合は戦々恐々となった。
他にも暗殺に特化した黒い
序盤では無理して戦う必要が無い亜人種のモンスターだ。
銀級から対処できるようになると言われている。
武器は主に棍棒でターニャなら間違いなく防御はできないと思われても仕方が無い。
「
他にも色々とモンスターが居るが、今は