ラナークエスト 作:テンパランス
まず護衛は三名ほどにしてもらい、残りは宿舎で待機か外の警備に当たってもらう。
短期間で強化する気なのか、一週間ほど滞在するつもりなのかを聞いていく。
主要な活動をする者は『黄金の仔山羊』からラナー。レイナース・ロックブルズ。ナーベラル・ガンマ。アルシェ・イーブ・リイル・フルト。クルシュ・ルールー。
竜王国はドラウディロン・オーリウクルスのみ。付き添いで宰相が居るのだが戦闘には参加しない。
本来は国に残っていなければならないところだが、女王を従者だけで送り出すのは対外的に不味い気がしたので竜王国からここまでの間の要所要所に部下を配置し、本国と連絡を取りやすくしていた。
護衛役たる蒼の薔薇はラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ。ガガーラン。ティアとティナ。
ラキュースは『マグヌム・オプス』建造に関わった人間の筈だが本人の記憶にはおぼろげなものしか残っておらず、どうしてこの施設に関わったのか説明ができない。後、彼女は今は二児の母である筈だが処女性を保っており『
ローブル聖王国は聖王女のカルカ・ベサーレス。聖騎士団団長レメディオス・カストディオ。ケラルト・カストディオ。イサンドロ・サンチェス。グスターボ・モンタニェス。それと聖騎士団員数十名。
イビルアイが忙しく働いているのでティアとティナも手伝う事にした。
どのみち外敵の襲撃は無いと思われるので。仮にあったとしても魔導国の戦闘メイドであるナーベラル・ガンマが何らかの連絡を送る筈だ。
「全員裸になるのか?」
「女性陣が多いから、それでもいい気がするが……。いきなり聖王国に全裸になれ、は失礼だろう」
「私は何となく中身を聞いているから汚れてもいい服にしている」
と、にこやかにドラウディロンは言った。
ラナー達もそれぞれ自前で着替えなどを用意してきた。
ただ、戦闘メイドであるナーベラルはどうするつもりなのか、一応は尋ねてみた。
「私の装備は汚れを弾く。このままでも構わない」
既に全裸みたいなクルシュは無視しておく。
後の気がかりは聖王国だけだ。
「……まずは軽い運動からにしておこうか。風呂とトイレは各部屋に備え付けられているけれど……。聖王女様はこんな施設の風呂でも使われますか?」
「文句はありません。管理される方の意見に従います」
「さあ、モンスター共を連れてこい。皆殺しにしてやる」
レメディオスの言葉に軽い頭痛を感じるイビルアイ。
「……そちらの団長は……、普段からこうなのか?」
「……残念ながら……。ご迷惑をおかけします」
妹のケラルトが頭を下げてきた。
それから移動しようとした時、壁際に佇む目つきが怖い従者の一人に気付いた。
切れ長で黒目が小さく、睡眠不足なのか目の下にクマがあった。髪は金髪で綺麗にまとめられているとは思えない寝起きから急いで呼び出されたような有様に見える。
「あの者は従者『ネイア・バラハ』といいます」
他の従者よりも気迫というか怨念が滲み出ているように感じたので気になった。
「あの者も戦うのか?」
「武器をお貸し下されば……。
「わ、私はそれほど大層な技術はありませんよ」
名前を言われてネイアは手を激しく横に振る。
「遠距離に長けているのか。接近戦ばかりでは何かと不安があるからな。バラハ殿も多少は参加するといい」
イビルアイは一旦、部屋を出て数分後に戻ってきた。
まずそれぞれの強さについての希望を集めておく。
意味の無いモンスター討伐では徒労に終わってしまう可能性がある。
それと最高まで強くすることは禁止されている。だが、それは彼女たちには伝えないことになっていた。ただし、ラナーやラキュース達は事情を知っているので問題は無いが今回はドラウディロンが居るので、どう伝えたらいいのか正直、イビルアイは分からなかった。
† ● †
一通りの意見を集約し、退出するイビルアイ。
それを数度繰り返しているとレメディオスが苛々してきたのか、ただでさえきつい目つきが憤怒の形に歪む。
それを妹とカルカが宥める。
「……団長殿は普段から我慢が出来ない人なのか?」
「故郷を思う気持ちが強いだけですわ」
「鍛錬は一日にしてならず。焦っても良い結果にはなりませんよ」
「私は少し楽しみだ。今以上に強くなれるのか、知るのが……」
竜王国の女王は率先してモンスターを討伐することはない。それゆえに冒険者のような強くなっていく者達の強さの秘密には少し興味があった。
アーグランド評議国の
自分も国の役に立つかまでは考えていないが、可能性には興味があった。
改めてイビルアイが数人のメイドと共に現れる。
「各人の武器を用意した。こちらは治癒担当のメイドだが、仕事以外に返答は期待しないように」
無言のまま武器を入れた箱を置き、カルカ達の背後に移動するメイド。
それぞれ見た目は一般人の女性だが全くの無表情。
「では、これよりモンスターが現れるがいきなり攻撃しないように。入り口が塞がるので」
そう言い残し、イビルアイはまたも退出した。
それから数分後に最初のモンスターが屠殺場に姿を現す。
小柄な外見だが赤い帽子を被っていた。
更に様々なモンスターが少しずつ現れていく。
「
「こちらには
南方に居る亜人のモンスターの他に見慣れないものが少しずつ現れてきた。
慣れた者は平気で見据えているが聖王国は騎士団達が武器を抜き放って警戒し始める。
「この施設には一体どれほどのモンスターが隠れているのだ?」
「数ではなく種類で保管されている筈です」
落ち着いた口調でラキュースが聖王国の者達に答えた。
「我々には実態を見せられない事になっておりますが……。部屋の規模から想像しますに数十万体は確実かと」
「なんと!?」
「王国はそれほどの戦力を保有しておられるのか」
「いいえ。王国ですら実はおそれているのです。今はイビルアイなどが管理しておりますので、王には定期的に報告書が届けられております」
「危惧される気持ちは分かりますが……。かの魔導国も承知しておりますし、バハルス帝国の皇帝も承知しております」
「竜王国も。こうして中に入れるのは我々に腹の内を見せているからこそ出来る事だとは思わないか?」
話している間もモンスターは規則正しく整列し始め、いきなり襲い掛かってくる事は無かった。
その様子にネイア達は驚いていた。
凶暴な亜人達が人間を前にして大人しくしていることに。
「カルカっ、ビームっ!」
腕を振りつつ様々なポーズを取り、光線を発射する聖王国の女王。
実際は信仰系の魔法の一つ『
規則正しく並んでいるモンスターの一列に魔法が炸裂する。
「いきなりですかっ!?」
聖騎士団達が聖王女の行動に驚いた。
「というか、なんでビーム?」
「ほほほ。ここで少しでも目立つ方が良いと天啓が」
周りの喧騒など毛ほどにも気にかけず、穏やかに微笑む聖王女カルカ・ベサーレス。
大人しい雰囲気をかもし出しているが信仰系第四位階魔法を使う事が出来る。
「あまり調子に乗らないで下さい。びっくりしました」
聖王女は
「無抵抗ならこのままぶっ殺そう」
と、物騒な言葉を言いながら剣を抜き放つレメディオス。
「団長っ! 短絡的すぎますよ」
「……あの女王様。好きかも」
「ノリがいい人に悪人は居ない」
ティアとティナが互いに顔を似合わせて頷く。
そして、小規模ながら戦闘が始まった。