ラナークエスト   作:テンパランス

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#088

 act 26 

 

 モンスターを送り続ける算段が安定した頃にイビルアイは移動を始める。後は停止命令をするまで作業は継続される。

 ペロロンチーノが屠殺場に向かうとモンスター討伐の為に奮闘する女性陣の姿に感動する。

 どれも見目麗しい人間達だった。

 多くは金髪だが白い全身鎧(フルプレート)の聖騎士レメディオスなどは茶髪で、目新しさを感じた。

 戦う凛々しい女性の姿に感動するペロロンチーノ。

 

「猫耳獣人も居るのか!?」

 

 白銀の髪を持つレオンミシェリにも感嘆の吐息を漏らす。

 

「新しい化け物か?」

「こちらは魔導国から来たペロロンチーノだ。間違って戦わないように」

 

 と、イビルアイは現場に居る人間達に紹介する。

 現場に居た誰よりも早くナーベラル・ガンマ(ひざまず)いた。

 ドラウディロン・オーリウクルスは顔合わせした経験があるので何の驚きも感じなかった。

 

「よろしく」

 

 そのペロロンチーノの後ろに控えるメイド達は黙って壁際に移動し、至高の存在の安否を気遣う。

 

「……うわっ……」

 

 アルシェ・イーブ・リイル・フルトがペロロンチーノを見て、驚きの声を上げる。

 

 

 ペロロンチーノのステータス。

 種族

 『鳥人(バードマン)』レベル5

 『天空神・隼(ホルス)』レベル5

 『光輝なる太陽神(ポイボス・アポロン)』レベル5

 職業(クラス)

 『戦士(ファイター)』レベル5

 『弓兵(アーチャー)』レベル5

 『野伏(レンジャー)』レベル5

 『盗賊(ローグ)』レベル5

 『暗殺者(アサシン)』レベル5

 『秘術師(アーケイナー)』レベル5

 『上級魔術師(ハイ・ウィザード)』レベル10

 『活劇剣士(スワッシュバックラー)』レベル5

 『砲兵(ガンナー)』レベル5

 『射手(シューター)』レベル5

 『先鋭射手(シャープシューター)』レベル10

 『衛星の射手(シューター・オブ・サテライト)』レベル5

 『狙撃手(スナイパー)』レベル5

 『狩人(ハンター)』レベル5

 『空狩人(スカイハンター)』レベル5

 HP1789

 MP746

 物理攻撃87 物理防御73 素早さ87

 魔法攻撃63 魔法防御78 総合耐性71 特殊85

 

 

 ()に追随を許さない高いステータス。

 それはおよそ現地の人間には到達し得ないほどの高みともいえる。

 豊富な職業(クラス)。それは単なる器用貧乏ではない。

 遠距離攻撃に特化し、極め尽くしたかのようにさえ思えるもの。

 それと見慣れない種族名。

 

「………」

 

 アルシェは自然と腰砕けのようになり、その場に座り込む。

 何だか分からないけれど、来てはいけない化け物に出くわしたような気持ちになった。

 人間を凌駕しすぎている。

 魔導国の重鎮は普段はステータスを隠しているらしく、アルシェの生まれながらの異能(タレント)を持ってしても看破は出来ない。だが、今日は()()見えてしまっていた。

 

「……あわわわ……」

 

 ペロロンチーノは自分を見て驚いている女性を見て首を傾げる。

 今日が初対面となるはずの人間がなにやら怯えているように感じた。

 

「……えーと、異形種である俺の姿が珍しいとかかい?」

 

 声をかけるとアルシェは土下座のような、床に頭を打ちつけるような態度で縮こまった。

 

「……こういう反応の場合は……」

 

 と、ペロロンチーノが分析する横でイビルアイや他の者もアルシェの様子に驚き、攻撃の手を止めていく。

 別段、何もしていないのは見ていて分かってはいる。それに側にイビルアイが居るのだから妙な行動は取っていない、筈だ。

 もちろん、そんな事は初利用の聖王国には分からないので、自然と武器をペロロンチーノに向けて警戒していく。

 カルカも魔法を放つ態勢になるほどに。

 

「……もしかして彼のステータスを見たのか?」

「……他言無用を徹底いたしますっ! どうか……ご容赦を!」

 

 見てはいけない秘密を知った人間が取る態度。と、ペロロンチーノは思い至る。

 他の者ならいざ知らず、女性に優しい鳥人間は激高などする筈もなく。

 

「偽装しない俺が悪い訳だが……。そこまで恐縮されちゃうと気軽に話しかけられないな……」

 

 最高レベルに達しているせいなのは理解している。けれども、一般プレイヤーとしては珍しくない事だ、という意識がペロロンチーノにはあった。

 だが、現地の人間にとっては様子が違う。

 難度300の化け物だ。それを前にすればどうなるか、分からないペロロンチーノが悪者になるのは自然の流れだ。

 イビルアイとて最初は戦意喪失などを起こして絶望した経験を持っている。だからこそアルシェの態度はよく理解出来る。

 ただ、壁際に移動したメイド達はアルシェの姿こそ当然の事だと薄く笑っていた。

 至高の存在を前にして跪かない人間こそ万死に値する、とでも言いたげに。

 一応、黄金の仔山羊の仲間としてナーベラルがペロロンチーノの側に移動する。

 

「この下等生物(ワラジムシ)が失礼な事を致しまして申し訳ありません」

「いいよいいよ。ステータスなら驚いても仕方が無い」

 

 不可抗力だ、と諦めに似た態度で答える。というか、仲間に対して酷い呼称だな、と。

 現場が騒然とするのは居心地が悪くなるので、手を振りつつ気さくさをアピールする。

 俺は悪い鳥人間ではないよ、と。

 

「……そこに居る影の国の女王(スカアハ)が平気なら別に問題はない気がするんだけどな……」

 

 こいつレベル92だぜ、と。

 8個上が居ても平気では、と思うのだがうっかり意識して見てしまった事で何やらアルシェにとっては一大事な気持ちが湧いてしまった、のかもしれない。

 もしかして魔導国の人間だから、とかもあるのかな、と疑問に思う。

 現地の人間をアインズが相当脅かした、とかあるのかもしれない。それならば当然の結果とも言える。

 あのネトゲ廃人め、と少し怒りを覚えるペロロンチーノ。

 何とか優しく声をかけてアルシェを宥めていくが急に復活する事は無かった。

 後でメンバーと共にステータスを隠すアイテムを身につけるように通達しておくかと脳内でメモを取る。

 

          

 

 騒動があったがアルシェに関して何も咎めない事を言い含め、イビルアイに鍛錬の再開を頼んだ。

 戦意を完全に喪失したアルシェは特別にペロロンチーノの側に居る事を許す。これは免疫を付ける為の処置で、決して愛玩動物として置いたわけではないとナーベラルとメイドに通達するが多分信じてもらえないと思った。

 能力を看破する相手に気をつけるのはゲームでは当たり前だったが、今はそういう神経を張り詰めるような事はやめようと思っていた。だが、やはり実際に目の当たりにすると少しは気をつけた方がいいのかなと思いはするがアインズに負けた気になるので、ここは譲りたくない気持ちがあった。

 俺は俺のやりたいようにやる、と。

 少なくともあの骸骨(アインズ)よりもフレンドリーな存在だと認知させたかった。

 自分達は確かにカンストプレイヤーだが、現地の人間はゲーム感覚という意識は無い。その気持ちの乖離などはなかなか埋められるものではない。

 そもそも論を言えばきりが無いのは分かっているけれど。

 どちらにしてもペロロンチーノは不可抗力の部分で現地の人間とは(いさか)いを起こしたくない気持ちがある、というのは伝えたい。

 その反面、他のメンバーも同じ気持ちかと言えば違うと即答できるところもまた事態をややこしくする。

 

「アルシェだったね?」

「は、はいっ!」

 

 声をかけるだけで驚かれると自分がいかに凶悪な存在かを思い知らされる。しかし、今はその事を気にしてはいられない。

 

「もしかして見た目が怖いって事はある? 異形種は皆怖いとか?」

 

 冒険者でモンスターが怖いなら仕事にならないから、それは無いと思うけれど。

 

「い、いえ……。み、見た目は……えっと……」

 

 初めて見る種族ならどう答えていいのか分からない事もあるかもしれない。

 それはペロロンチーノとて理解出来なくはない。

 よくそんな種族を選んだよな、と同じ異形種とて思うことはある。

 

「鳥の羽が……、ふわふわしてそうで……」

「羽毛は触り心地がいいよね、きっと……」

 

 もし自分が人間ならそういう感想は出ると思う。けれども自分の身体が鳥そのものだと羽根が抜け落ちる事が心配になって落ち着かなくなる。

 鳥肌という言葉がある通り、羽根が無いと冬場はきついかも、とか。風呂が大変とか、色々とデメリットが出てくる。

 顔も洗うのが大変だったりする。

 これで元人間だと誰が思うのか。

 姿は異形種だが、ギルドアインズ・ウール・ゴウン』のメンバーはほぼ全てがゲームのキャラクターであり、アバターの姿だ。もちろんNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)自動的に湧き出る(POPする)モンスターは除くが。

 事実を素直に伝えたところで元の姿に戻れるわけではない。

 戻るときっと非力な人間になるので今までの恨みつらみを受ける事態になり兼ねない。

 

 現地の人間にそんな事は口が裂けても言えないけれど。

 

 強者である事を享受し、その上で彼らと仲良くなる道を模索するしかない。

 とは気持ちの上では分かっているけれど、これが中々こそばゆい事態となっている。

 GM(ギルドマスター)とは違い、支配者ロールをする気が無い自分としてはもう少しフレンドリーさが欲しくなる。

 可愛い女の子と友達になりたい気持ちはあるので。

 と、鳥人(バードマン)の姿で言われても困るか、と。

 怯えるアルシェ・イーブ・リイル・フルトの頭を撫でようものなら自分達のメイドが慌てるし、どちらを優先すればいいのやら。

 

「……そういえば、君って原作の方では色々と酷い目に遭っているよね?」

 

 web版は生き残り、書籍版ではバラバラに解体されている。

 その上で自分(ペロロンチーノ)が彼女と対話するのはある意味では運命を感じる。

 それはもちろんシャルティア関連に繋がるのだが。

 

「……すみません。良く分かりません……」

 

 原作で自分がどのような末路になるのか分かっていれば苦労は無い。

 いや、分かったからとて運命が変わるわけではない。

 じゃあこのまま裸になってもらって尻穴尻尾のアイテムを突っ込もうか、という流れになっては困る。

 表現がソフトなら何とか出来そう、と思わないでもないけれど。

 そんな事を考えているとドラウディロンが自分達を見つめていることに気付く。

 見た目は十二歳くらいの可愛らしい少女だが実年齢はかなり高いと言われている。一応、非公開のようだが。

 

「なにやら不純な妄想を感じたぞ。さてはお主……、ロリコンだな?」

「はあ!? か、可愛い女の子が好きなだけだよ」

 

 はっきり言い切られるとペロロンチーノとて恥ずかしさを感じる。

 姿は異形種だが恥じらいは人並みにある、と思っている。

 

「見境ない男は嫌われるぞ?」

 

 悪戯っ子のような笑みを浮かべる竜王国の女王。

 

「……それは困るな。女の子には優しい男でいたいから」

 

 話しが怪しい方向になりそうだと気付き、軽く咳払いするペロロンチーノ。

 可愛い女の子が好きなのは嘘ではない。エロゲーは心の支えだ、と言い切る自信があるほどだ。

 

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