一夏
「………」
太一と楯無の決闘の翌日…
一夏は一人で考え事をしていた
それは…
一夏
「…国家代表でも勝てないのかよ…クソッ!!」
昨日の決闘の事だった
だが…
一夏
「…【ロイヤルナイツ】…俺にもあんなISがあれば…」
未だに自分の弱さが自分自身によるものだと理解していなかった
自分が勝てないのは全てISのせいにしている一夏は夏休みの間の補習も余り効果は無かった様子だった
そんな風に何時もの如く自分にとって都合のいい事を考えていると…
?
「少しいいかしら?」
一夏
「え?」
突然声を掛けられたので声のした方を向くと、そこにいたのは…
一夏
「生徒会長!?」
先日、太一に決闘を挑みアッサリ返り討ちにあった更識楯無であった
楯無
「あら?私の事を知ってるの?織斑一夏君。」
一夏
「え、ええ…昨日の太一との勝負は俺も見ましたから…その…惜しかったですね?」
楯無
「…アレの何処が惜しいの?」
一夏
「それは…その…す、すみません…」
楯無
「まあいいわ…」
一夏は慰めを言うがあそこまで一方的に負けた楯無からすればそれは皮肉にしか聞こえなかった
もしくは一夏にはアレが本当に惜しく見えていたのかもしれないが、それは本人にしか分からない事だった…
それはさておき…
楯無
「織斑君…少し付き合ってくれない?話したい事があるのよ。」
一夏
「は、はい…いいですよ…」
そう言って楯無は一夏を連れて行った…
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一夏を連れ立って楯無が来た場所は1年4組の前だった…
楯無
「…あの子を見て…」
陰から教室の中にいる一人の生徒を見る様に言った
一夏
「…あの眼鏡をかけた子…ですか?」
そこには楯無と同じ水色の髪と赤い眼をしたどこか楯無に似ている感じの少女が一人でパソコンを弄っていた
楯無
「そうよ…行くわよ。」
一夏
「え?」
少女の顔を見せると楯無は一夏を連れてその場を離れた…
?
「?…誰かいたような…気のせいかな?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一夏を連れた楯無は十分に離れると…
楯無
「あの子は『更識簪』…私の妹で日本の代表候補生よ。」
一夏
「あの子が日本の代表候補生!?」
少女の正体を教えた
楯無
「そうよ…ねえ、織斑君…あの子、簪ちゃんが教室で何をしていたか分かる?」
一夏
「何って………パソコンを弄ってるだけにしか見えませんでしたけど…」
楯無
「…そうね…君にはあの子が何をしているのか分かる訳無いわね…」
一夏
「あの…どう言う意味ですか?」
楯無
「あの子がしていたのはISのOS作りよ。」
一夏
「え?何でそんな事を?」
楯無
「…あの子の専用機はね、ある理由で開発が凍結されたのよ。だから妹はその放置された専用機を引き取って自分で組み立てているのよ。」
一夏
「はぁ…」
楯無
「織斑君…君の専用機…何処が開発した物か知ってる?」
一夏
「え…倉持技研ってところですよね?それが?」
楯無
「………君…まだ分からないの?」
一夏
「分からないって…何がですか?」
ココまで言っても一夏は楯無が何を言いたいのか分からずにいた
その結果…
楯無
「君の【白式】のせいで妹の専用機は放棄されたって言ってるのよ!!!」
一夏
「!?」
楯無は怒鳴りながらその理由を叫んだ
一夏
「【びゃ、白式】が!?な、何で…」
楯無
「分からないの!!男でISを使える君が現れたせいで政府は急遽君の専用機を用意する事にした!!その専用機を用意する役目を与えられたのが倉持技研なのよ!!そのせいで当時妹の専用機を開発していたスタッフは全員君の専用機開発に回されたのよ!!!」
一夏
「なっ!?」
楯無
「いくら政府からの命令とはいえ妹の専用機を放り出した倉持には腹が立つわ!!でも…それ以上に私は君の方が腹が立つのよ!!」
一夏
「!?」
楯無
「貴方に分かる?自分の作りかけの専用機を放置された妹の気持ちが…スタッフを全員横取りされて作られた専用機を使う君を見ている妹の苦しみが…碌に扱う事が出来ずISを没収された事を知った妹の辛さが………妹が…簪ちゃんが…どれだけ惨めな思いをしてると思ってるのよ!!!」
一夏
「!?」
楯無
「君がキチンとした成果を出せていれば私だってここまで言う気は無かったわ!でも、今の君は何なのよ!!何で貴方の専用機が優先されたのよ!!何で…何で関係の無い妹があんな思いをしないといけないのよ!!!」
一夏
「う…うあ…」
楯無
「妹はね…倉持に自分の専用機が放棄されたから自分で造るしか無いのよ…休憩時間も…放課後も…休日も…それこそ寝る間も惜しんで作業しているのよ!!夏休みの間だってそうよ!!クラスメイトとお喋りする事も遊びに行く事もせずにずっとね!!!」
一夏
「………」
楯無
「妹が必死に頑張っている間何してたのよ!!聞いたわよ!八神君の出した練習内容がやり過ぎだって言って嫌がったそうね!!!」
一夏
「!?」
楯無
「もう一度聞くわ…碌な勉強も訓練もせずに今迄何してたのよ!!答えなさい!!!」
一夏
「………」
楯無の問い掛けに一夏は何も答えられなかった
それもその筈…一夏はこれまで真面な勉強も訓練もして来なかった
一夏自身の怠慢に箒の独占欲も合わさった結果、この男は何も成長していなかった
一時期は太一に教えを受けてはいたがそれも自分からすぐにやめてしまったので何の身にもなっていなかった
楯無
「妹にあんな思いをさせた貴方を私は絶対に許さない!!!何が世界初の男性操縦者よ!!何が織斑千冬の弟よ!!姉の影に隠れてるだけのただの『穀潰し』じゃない!!!」
一夏
「ご、穀潰し!?」
楯無
「そうよ!!貴方は『肩書きが立派なだけの穀潰し』よ!!」
一夏
「肩、書き…だけっ…だとおおおおおっ!!」
『肩書きしか取り柄が無い穀潰し』と言われ一夏は顔を真っ赤にして掴み掛かろうとした
だが、楯無はそんな一夏を鼻で笑って軽く躱した
そして、そのまま…
楯無
「この際だからいい事を教えてあげるわ…『
一夏
「俺の…価値?」
今の世界の現実を教えた
楯無
「貴方は世界で唯一ISを使える男の操縦者…それが君の持つ肩書き…君の価値…だから各国はこれまで君を手に入れようと躍起になっていた…でも、今は違う!!篠ノ之博士が男女両方使えるISを作ると公言した事で各国は君に対して興味が無くなって来てるのよ!!!」
一夏
「!?」
…自分への興味が無くなり始めた…
それを聞いた瞬間一夏は目を見開いて動揺していた
楯無
「良かったわね?前は外に出るだけで狙われる可能性があったけど今なら君を狙う『物好き』なんて殆どいないわ。」
一夏
「え…」
楯無
「それに君、護衛が付けられるの嫌なんでしょ?だったら近い内に君の護衛は全員いなくなるわ。一々気にする必要は無くなるわよ。」
一夏
「そ、そんな…」
…自分への護衛が無くなる…
その楯無の言葉に何故か一夏は目を見開いた
一夏は以前から自分に護衛が付けられる事を嫌がっており、外出すれば護衛を振り切ろうとしていた
そんな一夏に千冬がいくら事情を説明しても当の一夏は護衛を受け入れようとしなかったのだ
にも拘らず護衛がいなくなると聞いた途端何故か動揺していた
楯無
「何よその顔?護衛がいなくなるのがそんなに驚く事?いなくなって清々したって喜んだらどうなの?」
一夏
「うっ…」
楯無
「コレが今の世界の現実よ!近い内に君はただの一般人になるわ。君を見かけても誰も気にも留めなくなる。それが君の価値が無くなる事の意味よ!!」
楯無から教えられた周りからの自分の評価…
それを聞かされ…
一夏
「………どうすれば…」
楯無
「ん?」
一夏
「…どうすれば…俺の価値は認められるんだ?」
一夏は更に慌てだしていた
だが…
楯無
「はぁ?今更何言ってんの?そんな事私が知る訳無いでしょ?成果も碌に出せない男からどうやって価値を見出せって言うのよ?そんな方法があるならこっちが教えて欲しいわよ。」
一夏
「!?」
既に遅かった
周囲の一夏への評価は今や最底辺のものとなっており、他国どころか日本すら見向きしなくなって来ていた
楯無
「大体、人に聞く前に先ずは自分で考えたらどうなの?」
一夏
「うっ!?」
楯無
「そもそも私が君に話しかけたのは妹の文句を言う為よ。それも終わったから君には何の興味も無いわ。」
楯無は最期にそう言って行ってしまった
残された一夏は…
一夏
「…俺が…何の価値も無い…男だと………ふ…ふざけんなあああああぁぁぁぁぁっ!!!」
世界の自分に対する認識を知って叫び声を上げた
だが、こうなったのは一夏自身の行動の結果であった
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楯無
「…織斑一夏か…周りが自分に興味が無くなったって知った途端焦り始めてたわね…」
一夏と別れた楯無は廊下を歩きながら先程の一夏の言葉を思い返していた
楯無
「…もしかして…自分がチヤホヤされるのが当たり前だとでも思ってるのかしら?もしそうなら想像以上のクズだわ…あ~良かった…あんな男の護衛につけとか言われなくて…」
政府から一夏に関する任務を言い渡されなくて安堵するのだった
だが、楯無は自分の行動によって一夏がどのような行動に出るのか気付いていなかった…
そして…
楯無
「さて、あんな男の事はさっさと忘れるとして…問題は八神太一の方よね…」
楯無は一夏から太一に関する事に頭を切り替えた
一夏の事を頭の隅に追いやった楯無は今後の事を考えていた
楯無
「…この私が手も足も出ないなんて…一体何なのよあの男…いくら何でも強すぎるわ………どうしようかしら…試合前にあんな約束したから不用意に接触出来なくなったわね…織斑先生も証人にいる以上誤魔化す事はまず無理だし…」
当初、楯無は千冬に言われた事と周りから集めた情報が余りにも突拍子過ぎるのでその情報が脚色されていると思い、太一に決闘を挑んでも自分が勝つと信じて疑ってはいなかった
だが、実際戦ってみると楯無は太一に完全に遊ばれていた
その結果、惨敗した楯無は決闘前に太一の出した条件のせいで不用意に太一に近づけなくなってしまった
しかも、千冬を始めとした大勢の生徒や教師陣が証人としているのでしらばっくれて条件を反故にする事も出来なかった
楯無
「まあいいわ…私はこのIS学園の生徒会長…方法ならいくらでもあるわ…フフッ…フフフッ…」
そう言って楯無は笑みを浮かべるが、その眼は怪しい光を放っていた…
<予告>
楯無から世界の現実を教えられた一夏
今の現状からの脱出を考えた一夏はある人物と接触しようとする
だが、その人物は今の一夏が決して関わってはいけない少女だった
次回!!
ISアドベンチャー 聖騎士伝説
奪われた少女
今、冒険が進化する!