ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第016話:鉄拳制裁!ガンクゥモンの拳!!

 

千冬

「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践して貰う。織斑、八神、試しに飛んで見せろ。」

 

 現在は実技授業…

 だが、内容としては実機を使った授業ではなく、実際のISの動きを見る授業である

 千冬に呼ばれた二人は前に出てISを展開する

 ちなみにセシリアは束に【ブルー・ティアーズ】を預けているので見学側にいる

 

太一

「デジタル・セレクト!!【モード:オメガモン】!!」

 

 太一は【オメガモン】を選択し展開した

 

セシリア

「…【オメガモン】様…」///

 

 【オメガモン】の姿にセシリアは頬を赤らめていた

 

千冬

「…八神…お前の機体はそうしないと展開出来ないのか?」

 

太一

「そうらしいです。」

 

千冬

「それなら仕方ないか…変わった仕様だな?………しかし…」

 

 機体を展開した太一と違い、一夏は未だに【白式】を展開出来ずにいた

 

千冬

「早くしろ!」

 

 千冬に睨まれ一夏は腕を突きだし、ガントレットに手を添えて集中する事で漸く展開出来た

 

千冬

「遅い!熟練した操縦者は展開まで1秒とかからないぞ!」

 

一夏

「は、はい!?」

 

千冬

「よし、飛べ!」

 

 千冬の合図と同時に太一は飛び上がり、一足遅れて一夏も飛び上がった

 先に飛び上がった太一はすでに上空で待機しており、一夏は飛ぶのに慣れていないようで悪戦苦闘しながら太一のいる高さまで登っていた

 

千冬

『何をやっている!【白式】のスペックなら既に八神の高さまで上がっているぞ!!』

 

一夏

「そんな事言ったって…ISの操縦何て昨日が初めてだし…それに詳しい説明何て………あ!?」

 

 この時、一夏は自分が勉強していればまだマシに飛べていただろうと気付いた…だが…

 

一夏

(…これが、俺が体たらくって事かよ…)

 

 気付くのが遅かった

 それからしばらくして漸く太一のいる高さまでやって来た

 太一は腕を組んだ状態で静止していた

 

太一

「…やっと来たか…」

 

一夏

「ぐっ!…悪かったな…」

 

『一夏ぁっ!!いつまでそんなところにいる!早く降りてこい!!』

 

 一夏が太一のいる高さまで上がると、箒の怒鳴り声が二人に聞こえてきた

 

太一

「何だ?」

 

 二人が地上を見ると、箒が真耶からインカムを奪い取って喋っていた

 が、すぐさま千冬から出席簿で殴り飛ばされ蹲る事になった

 

太一

「アイツ…何を考えてるんだ?どう見ても授業妨害だぞ?」

 

一夏

「………」

 

 太一の言う事に一夏は何も言えなかった

 一夏も太一の言う通りだと思ったからだ

 そんな箒を見て一夏は…

 

一夏

(…本当にアイツに教わって大丈夫なのかな…)

 

 箒に引き続きコーチを頼んだ事を早くも後悔し始めていた

 

千冬

『お前達、急降下と完全停止をやってみろ。目標は地上から10センチだ。』

 

太一

「10センチか…一夏…まずは俺から行くぞ?」

 

 千冬からの次の指示を受け、まずは太一が動いた

 

一夏

「え!あ、ああ…」

 

太一

「じゃあな。」

 

 そう言うと太一は地上に向かって急降下して行った

 地上に近づくと太一は前方に1回転し、そのまま停止した

 

千冬

「…ふむ…10センチ丁度だな。合格だ。」

 

太一

「どうも。」

 

 千冬から合格を貰う太一だが、次の瞬間…

 

 ドゴオオォォ――ンッ!!

 

 何かが地面に直撃した音と振動が鳴り響いた

 

太一&千冬

「…はぁ…」

 

 太一と千冬はそれが何なのかすぐに分かり溜息をついた

 

一夏

「ぐっ…ぐぐっ…」

 

 落下によって出来た大穴から二人の予想通り一夏が這い出てきた

 

千冬

「馬鹿者!!誰が墜落して大穴を空けろと言った!!」

 

一夏

「す、すみません…」

 

「全く!あれほど私が………」

 

マドカ

「あれほど何だ?」

 

「な、何でもない!!」

 

 箒は教えたと言おうとしたが、自分が実は何も教えていなかったのを思い出し口を噤んだ

 そんな箒をマドカやセシリアは呆れた目で見ていた

 

千冬

「織斑、武装を展開しろ。それくらいは出来るな?」

 

 千冬は次に武装を出すように指示を出す

 

一夏

「は、はい!」

 

千冬

「では始めろ!」

 

 一夏は左右に人が居ない事を確認して、集中し始めた

 剣を構えるような姿勢になり、両手に光が集まりその光が収まるとその手には【雪片弐型】が握られていたが…

 

千冬

「遅い!0.5秒で出せるようになれ。」

 

 …千冬の評価は厳しい物だった

 

一夏

「はい…」

 

千冬

「次に八神だが…お前の機体は拡張領域(バススロット)に武器はあるのか?」

 

太一

「ありません。この【オメガモン】の武装は《グレイソード》と《ガルルキャノン》の二つだけですよ。」

 

 太一はそう言うと両腕をクロスさせそのまま両腕を斜め下に振り下ろした

 

 ジャキンッ!ガキョンッ!

 

 左腕から《グレイソード》右腕からは《ガルルキャノン》をそれぞれ展開した

 千冬はその二つの武器を見ると…

 

千冬

「間近で見ると本当に大型の武器だな…」

 

太一

「そうですか?」

 

 感想を言っていると終了のチャイムが鳴り響いた

 

千冬

「時間か…それでは授業を終わる。…それから織斑、お前は自分で空けた穴を塞いでから休憩に入れよ。以上解散!」

 

一夏

「え!?そ、そんな…」

 

 千冬はそう言うと他の生徒達とさっさと行ってしまった

 残された一夏は…

 

一夏

「そ、そうだ太一!手伝っ………あ!?」

 

太一

「ん?何だ?」

 

一夏

「い、いや…何でもねえよ…」

 

太一

「…そうか。」

 

 太一に手伝って貰おうとした…

 だが、先程太一に対してあれだけ大見得をきった手前、言いかけていた言葉を噤んだ

 

一夏

「………」

 

 結局一夏は一人で穴を埋める事になった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 放課後のアリーナ…

 ココには今、太一と【白式】を纏った一夏が向かい合っていた

 観客席にはマドカやセシリア達クラスメイトの他に千冬達教師陣、他のクラスの生徒や教師も見に来ていた

 

太一

「さて、お前の力を見せて貰おうか?」

 

一夏

「だったらお前も早く機体を展開しろ!!」

 

太一

「…そうだな…さて、どれで行くかな………コイツで行くか…デジタル・セレクト!!

【モード:ガンクゥモン】!!

 

一夏

「え?」

 

 【ロイヤルナイツ】を纏う太一…だが、その姿は一夏達が知る【オメガモン】では無かった

 黒いライダースーツの様なスーツを身に纏い、白いコートをマントの様に羽織り、赤い下駄を履いた姿だった

 

 ザワザワ…

 

 太一の【ガンクゥモン】の姿に観客席にいる者達も驚き騒めいていた

 

一夏

「な、何だそれ!?」

 

太一

「…【ロイヤルナイツ・ガンクゥモン】!!」

 

一夏

「【ガ、ガンクゥモン】!?お前、他にもISを持ってたのか!?」

 

太一

「俺のISは【ロイヤルナイツ】だけだ。この機体は複数の姿を持つISでな、状況に応じて使い分ける事が出来るんだよ。」

 

一夏

「複数だと!?」

 

太一

「無論、この【ガンクゥモン】は【オメガモン】とは武装も能力も全て違うぞ。」

 

一夏

「そ、そんな!?」

 

 【オメガモン】と戦うと思っていた一夏は戦う前から出鼻を挫かれていた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 観客席では太一の【ガンクゥモン】にマドカとオータム以外の全員が動揺していた

 

千冬

「【ガンクゥモン】だと!?…複数の形態を持つISなど見た事も聞いた事も無いぞ!?」

 

真耶

「ホントですよ!あれじゃあ、一人でいくつものISを持つのと一緒ですよ!?」

 

セシリア

「複数………あっ!?…だから【ロイヤルナイツ】!?」

 

千冬

「ん?オルコット…どう言う事だ?」

 

セシリア

「皆さんが聖騎士と仰っていましたから気づきませんでしたけど…【ロイヤルナイツ】は正確には『聖騎士』では無く『聖騎士団』と言う意味なんです!!」

 

千冬

「聖騎士団だと!?ではまだあるかもしれないと言うのか!?」

 

セシリア

「多分そうだと思います…あの、マドカさんは知ってますの?」

 

マドカ

「ああ、全部知ってるぞ。だが、そうだな…教えるのはやめておこうか。」

 

千冬

「何故だ?」

 

マドカ

「その方が面白そうだからだ!太一兄さんが新しい聖騎士を出すたびの皆の反応を楽しもうと思ってな!」

 

オータム

「ハハハハッ♪そりゃあいい!」

 

 マドカの言う事にオータムは笑いながら同意する

 二人の様子から【ロイヤルナイツ】の残りを聞く事は出来ないと全員が判断した

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 アリーナでは【ガンクゥモン】の姿に一夏は慌てていたが、気を取り直して【白式】の近接ブレード【雪片弐型】を構えた

 対する太一は腕を組んだまま、微動だにしなかった

 

一夏

「…武器を出さないのか?」

 

太一

「生憎とこの【ガンクゥモン】は基本は素手での戦闘でな。武器もあるにはあるが使いどころが難しいんだ。」

 

一夏

「ちっ!そうかよ!!なら最初からそれを使わなかった事を後悔させてやる!!いくぞおおおぉぉぉ―――っ!!!」

 

 一夏は太一が【ガンクゥモン】の武装を使わないのは自分に対して手を抜いていると思った

 だが、実際はそうではなく、太一の言う通り【ガンクゥモン】の武装は使いどころが限られているから使わないだけなのだ

 

太一

「………何か勘違いしてないか?…まあいいか…」

 

 一夏は【雪片】で太一に斬りかかったが、太一は以前千冬と勝負した時のように半歩ほど動くだけで躱した

 

一夏

「何!?クソッ!!」

 

 その後も一夏は連続で攻撃を仕掛けるが、太一は必要最低限の動きだけで躱していた

 

一夏

「何で…何で当たらないんだ!!」

 

太一

「どうした?それで終わりか?」

 

一夏

「クソッ!」

 

 一夏は再び斬りかかったが太一はその全てを簡単に躱していった

 すると…

 

一夏

「避けるな卑怯者!!」

 

 太一を卑怯者呼ばわりし始めた

 

太一

「お前何言ってるんだ?攻撃されれば普通避けるだろ?それの何が卑怯なんだ?」

 

一夏

「うるせえええぇぇぇっ!!」

 

 太一の指摘をまるで聞かないとばかりに大声を出して再びツッコんで来た

 

太一

「(…自分勝手な奴だな…仕方無い…少し忠告しておくか)ぬんっ!」

 

 ツッコんでくる一夏に対して太一はある考えが浮かび、一夏の攻撃を躱すと拳を振り下ろした

 だが、その拳はとても遅いもので一夏でも容易に躱せる程度の速度に落とした物だった

 

一夏

「!?…うおっ!?」

 

 だが、そんな遅い拳でも一夏には早く映ったようで太一の拳を一夏は慌てて()()()

 

一夏

「あ、あぶねえな!!」

 

太一

「………一夏…今の俺の拳…何故躱した?」

 

一夏

「え?」

 

太一

「躱すのは卑怯者のする事なんだろ?」

 

一夏

「!?」

 

太一

「俺には避ける事を卑怯と言っておいて自分がやるのは良いのか?」

 

一夏

「あ、ぐっ…」

 

 一夏は何も言い返せなかった

 太一が避ける事を卑怯者と言った直後に自分も太一の攻撃を避けてしまったからだ

 

太一

「入学初日の事と同じ事をお前はまたしたんだぞ?あの時の事をもう忘れたのか?」

 

一夏

「!?」

 

 それは入学初日にクラス代表を決める時の一件の事だった

 あの時、一夏はセシリアに対して『手を抜くほど腐っていない』と言っておきながら自分で手を抜く発言をして自分の事を腐った人間だと言ってしまった

 その時と同じで今回は自分で自分の事を卑怯者と呼ばれる行動をしてしまったのだ

 

太一

「…だがまあ…あれだけ簡単に避けられればそう言いたくもなるかもしれないしな。だが、今度からそんな事は言わない方がいいぞ?今は模擬戦だからいいが本番の試合でそんな事を言えば批難されるのはお前の方だぞ?その上自分で批難した事を自分でやればそれこそ言い訳の出来ない事になる。それこそお前の言う卑怯者になるぞ?次は気を付ける事だ。」

 

一夏

「ぐっ…くぅぅっ…」

 

 その言葉に一夏は呻き声を上げるだけで何も言い返せなかった

 太一の言う事は何一つ間違っていなかったからだ

 太一は一夏が試合の時でも同じ事を言いださない様にする為に自分と同じ状況を作り一夏に忠告したのだ

 

太一

「…しかし…やはり姉弟だな…」

 

一夏

「何!?」

 

太一

「姉と太刀筋が似ているな…」

 

一夏

「千冬姉と!?」

 

 太一から千冬と太刀筋が似ていると言われ、驚く一夏だが、内心は喜んでいた

 しかし…

 

太一

「…だが…腕の差は歴然だな。雲泥の差と言う奴だ…」

 

一夏

「何だと!?」

 

 千冬と比べて剣の腕は劣っていると太一に言われてしまった

 

太一

「ISの有る無しを考えても織斑先生に比べて剣の鋭さも無ければ重みも無い。その上お前の繰り出す剣は全て単純な物ばかりで簡単に避けられる。」

 

一夏

「単純…だとぉぉ!!馬鹿にするなあああああぁぁぁぁぁ―――――っ!!!」

 

太一

「…はぁ…」

 

 太一は溜め息を一つ付くと、その場に足を組んで座り込んだ

 

一夏

「何のつもりだあああああぁぁぁぁぁ―――――っ!!!」

 

 一夏が構わず突っ込んでくると…

 太一は両腕を地面に突き刺した…

 すると…地面が巨大な円盤になり太一の腕はその縁にあった

 

太一

《ちゃぶ台…返―――しっ!!!》

 

 太一はその巨大な円盤をひっくり返した…

 円盤の下には足が取り付けられており、それはまさしく巨大な《ちゃぶ台》そのものだった

 

一夏

「なっ!!ごへっ!!」

 

 一夏は《ちゃぶ台》の直撃を喰らい吹き飛ばされた

 太一はひっくり返した《ちゃぶ台》を元の位置に戻すと《ちゃぶ台》は元の地面に戻った

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 観客席にいる千冬達は太一の放った攻撃を見て顎が外れるくらいの勢いであんぐりした状態になっていた

 

セシリア

「な、何ですのアレ…」

 

マドカ

「《ちゃぶ台返し》…【ガンクゥモン】の技の一つだ。」

 

千冬

「《ちゃぶ台返し》って…地面を《ちゃぶ台》に変えてひっくり返したのか!?」

 

オータム

「そうだぜ!太一が言ってただろ?【ガンクゥモン】の武装は使いどころが難しいってよ!」

 

真耶

「こう言う事だったんですね…」

 

千冬

「地上でしか使えない技という事か…【ガンクゥモン】…あの外見と言い…使う技といい…アレのどこが聖騎士だ!頑固親父と言った方がしっくりくるぞ!!」

 

 千冬の言葉に全員が頷いていた…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 暫くして《ちゃぶ台》に吹き飛ばされた一夏が起き上がって来た

 

一夏

「ぐぐっ…何だ今のは…」

 

太一

「《ちゃぶ台返し》…地面を《ちゃぶ台》に変えて相手諸共ひっくり返す技だ。」

 

一夏

「ふざけた事しやがって!!真面目に戦え!!!」

 

太一

「俺は真面目だ。そもそも怠け者のお前にそんな事を言われる筋合いはない。」

 

一夏

「ぐっ!?だ、黙れ!!」

 

太一

「…はぁ…」

 

 今日何度目かの溜め息をつく太一

 それを見た一夏は【雪片弐型】を構え…

 

一夏

「馬鹿にしやがって!俺の力を見せてやる!!【零落白夜】発動!!」

 

 【白式】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…【零落白夜】を発動させた

 それを見た太一は…

 

太一

「【零落白夜】…『()()()』、か…」

 

一夏

「そうだ!コレは千冬姉が世界を制した時に使ったのと同じ能力だ!!この力で俺はお前を倒す!!そして皆を守るんだ!!!」

 

 一夏の言動から太一は彼が【零落白夜】を使いこなせず、振り回されているとすぐに分かった

 【零落白夜】を構える一夏に対して、太一は全身に力を込めた

 

太一

「ハアアアアアァァァァァ―――――………」

 

一夏

「な、何だ!?」

 

 次第に太一の体からオーラが発せられ、それは次第に獣の様な形になって行った

 

太一

「ハアァッ!!!」

 

 そして【ガンクゥモン】の後ろに、金色の獣の形に象られたオーラが現れた

 

一夏

「こ、これは…」

 

太一

「フウゥゥ――ッ…《ヒヌカムイ》…【ガンクゥモン】のもう一つの武装だ。」

 

 太一はそう言うと再び腕を組んだ

 

一夏

「な、何が《ヒヌカムイ》だ!!そんなこけおどし、俺の【零落白夜】で叩っ斬ってやる!!!」

 

 【零落白夜】を纏わせた【雪片弐型】で太一に上段から斬りかかる一夏…

 

 ガキイィィーンッ!!

 

 だが、【雪片弐型】は太一の《ヒヌカムイ》が片腕で受け止めていた

 

一夏

「何っ!!ガハッ!!」

 

 そして、もう片方の腕で一夏を殴り飛ばした

 殴り飛ばされた一夏は《ヒヌカムイ》を信じられない目で見ていた

 

一夏

「な、何で…何で【零落白夜】が効かないんだ!!【零落白夜】で斬られた物は…」

 

太一

「愚か者が…」

 

一夏

「何だと!?」

 

太一

「お前は自分の機体の事を何も分かっていない!【零落白夜】…その能力は【バリア無効能力】…ISの絶対防御を突破し本体を切り裂く事が出来る力だ。だが、その能力も所詮はその刀身に纏わせたエネルギーを使う事で出来る物。エネルギーにエネルギーをぶつければ簡単に相殺出来る。そして相手を上回るエネルギーを用いれば今の様に相殺せず弾き飛ばす事も可能だ。」

 

一夏

「じゃ、じゃあ…」

 

太一

「《ヒヌカムイ》はお前の【零落白夜】を上回るエネルギー量を持つと言う事だ。そして、今の攻撃で分かった。お前はその力を使いこなせていない!その危険性に気付いていない!!」

 

一夏

「何だと!?」

 

太一

「お前ISを使えるからって自分が強くなったとでも思ってるのか?」

 

一夏

「!?」

 

太一

「図星か?いいか一夏、お前はISを手に入れた()()でそれ以外は何も変わってはいない。お前の身体能力が上がった訳では無いんだぞ。」

 

一夏

「うっ…ぐぅっ…」

 

太一

「お前は今朝束に言われた事をもう忘れたのか?」

 

一夏

「え?た、束さん…」

 

太一

「束が言ってただろ?ISは誰が乗っても同じじゃない。高い能力の機体には乗り手もそれに見合った実力が必要だと。」

 

一夏

「!?」

 

太一

「今日の実習を見る限りお前にはそんなに高い技術は無い。」

 

一夏

「ぐっ!?」

 

 一夏は今日の授業の事を言われ口を噤んだ

 実習授業では一夏は【白式】で空を飛んでも上手く上昇出来なかった

 急降下と急停止をやれと言われたら地上に墜落して大穴を空けた

 太一の言う通り高い技術を持つのならまずそんな事にはならない

 

太一

「…今の一太刀もそうだ…俺が《ヒヌカムイ》で防がなかったらどうなっていたと思う?」

 

一夏

「…え?」

 

 一夏は太一の言う事が理解出来なかった

 

太一

「…俺の機体は全身装甲(フルスキン)だからまだいい…だが、他の連中にはその力は余りにも危険だ。」

 

一夏

「何が言いたいんだよ!?」

 

太一

「…分からないのか?…【零落白夜】はISの絶対防御を切り裂く事が出来る。試合ではそれでSEを一気に削れる。だがな、絶対防御を突破するという事は相手をそのまま斬り裂く事も出来ると言う事だ。」

 

一夏

「え?」

 

太一

「いわばお前のその剣は、絶対防御と言う鎧をすり抜けて鎧の中身…つまり生身の人間を真剣で斬り殺す事が出来ると言う事だ。」

 

一夏

「!?…き、斬り殺す!?」

 

太一

「そうだ。お前は振り下ろした刃が俺の何処に当たるか何も考えずに斬りかかったな?」

 

一夏

「ぐっ!?」

 

太一

「やはりそうか…なら当たっていたらどうなったか教えてやる。今の一太刀、俺がそのまま受ければお前は俺を脳天から斬り殺していただろうな。」

 

一夏

「!?…お、俺が…こ、殺…」

 

太一

「お前はそんな事も分かっていなかったのか?自分の使う機体の事も、使う力も理解せずに、皆を守ると言ったのか?…笑わせるな!!」

 

一夏

「う、嘘だ!!嘘だあああぁぁぁ―――っ!!」

 

 太一が【零落白夜】の危険性を教えるが一夏はそれを信じようとはしなかった

 今度は出鱈目に【零落白夜】で斬りかかる一夏を、太一は呆れながらも《ヒヌカムイ》で受け止めた

 

一夏

「嘘だ嘘だ嘘だああぁぁ――っ!!いい加減な事を言うなああぁぁ――っ!!」

 

 太一の言う事をかたくなに信じようとしない一夏

 そんな一夏に流石の太一も付き合いきれなくなって来た

 

太一

「…どうしようもないなコイツは…」

 

 その為、この模擬戦をもう終わらせる事にした

 太一は息を思いっきり吸い込み…

 

太一

「この…馬鹿もんがあああぁぁぁ―――っ!!!

 

 太一は怒鳴り声をあげ《ヒヌカムイ》で一夏を投げ飛ばした

 

一夏

「がっ!」

 

 再び息を吸い込み更に全身に力を込め…

 

太一

《地神!!…神鳴!!…神馳!!…親父!!!!》

 

 凄まじい怒声を上げ自分を中心とした周囲の物を一夏諸共吹き飛ばした

 

一夏

「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――っ!!!!」

 

 【ガンクゥモン】の必殺技《地神!神鳴!神馳!親父!》を受け何とか立ち上がろうとする一夏だが…

 

一夏

「ぐっ…ううっ…はっ!?」

 

 目の前には太一がいた

 

一夏

「た、太一!?」

 

太一

「…一夏…俺の言う事が信じられないならそれでも構わん。だが、その力を正しく理解しなければお前はいずれ過ちを犯す事になる。」

 

一夏

「そ、そんな事…」

 

太一

「俺の言葉が信じられないなら、俺以上にその力に詳しい者に聞け。」

 

一夏

「え?」

 

太一

「お前の姉…織斑千冬だ。」

 

一夏

「ち、千冬姉に…」

 

太一

「そうだ。お前がさっき言ってただろ?その力は姉と同じだとな。」

 

一夏

「………」

 

太一

「目を覚ましたら聞きに行くんだな…」

 

一夏

「………え?」

 

 太一の最後に言った言葉の意味が分からず一夏は太一を見ると…

 太一は右腕に力を込め振り上げていた

 

一夏

「…え?…え?」

 

太一

「この一撃で沈め…」

 

一夏

「ま、待ってくれ!?」

 

太一

《鉄・拳・制・裁!!!》

 

 ドゴオオオォォォンッ!!!

 

 太一の振り下ろした拳は一夏の脳天に直撃し、その衝撃で激しい土煙が起きていた

 

全員

「………」

 

 観客席の生徒、教師達は目の前の光景から目を放す事が出来ず、煙が晴れるまでずっと見つめていた

 それから暫くして煙が晴れると…

 

全員

「!?」

 

 そこには首から下が地面にめり込み白目を剥いた一夏の姿があった

 太一の放った《鉄拳制裁》を受けた結果、この様な姿になった

 当然、一夏は意識を失っており【白式】のSEも0になっていた

 

太一

「………」

 

 その後、太一は一夏を掘り起こしISを解除すると彼を医務室に連れて行った

 その際、太一は一度、千冬に目配せをして去って行った

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

千冬

「………後は私に任せるという事か…」

 

 太一が一夏を連れて去った後、千冬は太一の目配せの意味を察していた

 太一が語った【零落白夜】の危険性…その言葉に他の生徒達も動揺していた

 【零落白夜】を使いこなせていない一夏と戦えば、下手をすれば自分は殺されるかもしれない…

 生徒達はそう考えていた

 

千冬

「…早めにアイツに言っておく必要があるな…」

 

真耶

「…織斑先生…」

 

千冬

「…真耶…悪いが後を頼んでいいか?…八神の言う通り早めにあの馬鹿に教えておかないと手遅れになる…」

 

真耶

「分かりました!!」

 

 周りを見て千冬も早く説明しておいた方がいいと判断した

 

千冬

「頼む!………後は…」

 

 千冬は少し離れた場所にいる箒に目を向けた

 

千冬

「…アイツをどうにかする必要があるな…」

 

 千冬には箒が一夏を訓練する際【零落白夜】を正しく使いこなせる様に教えられるとは思えなかった

 それは傍にいたマドカ、セシリア、オータムも同じ意見だった

 

 




 <予告>

 太一の前に完膚なきまでに叩きのめされた一夏

 目を覚ました一夏に千冬は自分がかつて使っていた力、そして今は弟に引き継がれた力が何かを語り始める

 太一の言葉を信じなかった一夏は千冬の話を聞きどうするのか?

 そして、一人の少女がIS学園に向かっていた



 次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》

 零落白夜

 今、冒険が進化する!


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