ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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機体設定②に【メガロ・ドラグナー】を追加しました



第026話:告げられた本質

 【メガロ・ドラグナー】を受け取った次の日から鈴は放課後の太一達の訓練に参加する様になった

 だが…

 

太一

「《シャイニングVフォ―――――ス》!!!」

 

 ドカアアアァァァ―――ンッ!!

 

マドカ&セシリア&鈴

「きゃあああああぁぁぁぁぁ―――――っ!!!」

 

 【アルフォースブイドラモン】の必殺技を受けて3人纏めて吹っ飛ばされていた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 それから数日が経ったある日、午後の授業も終えた時、千冬が…

 

千冬

「八神…」

 

太一

「何か?」

 

千冬

「スマナイが織斑を鍛えてくれないか?」

 

一夏

「え!?」

 

 太一に一夏を鍛えてくれと言って来たのだ

 実は千冬のこの台詞は事前に太一から頼まれていた事だった

 『千冬から自分に一夏の訓練を頼んでくれ』と…

 それを聞いた千冬は一夏の訓練をしてくれる太一に感謝した

 

一夏

「きゅ、急にどうしたんだよ千冬姉!?」

 

「どう言う事ですか千冬さん!!」

 

千冬

「織斑先生だ!お前達何時になったら公私の区別が出来るんだ!!小学生でもあるまいし、一体何回言い直させるつもりだ!!」

 

一夏&箒

「す、すみません!?」

 

千冬

「それで何故八神に頼むかだが…織斑…入学してからもう一ヶ月以上経つが少しは実力をつけたのか?」

 

一夏

「え!?」

 

「な、何を言ってるんですか!?強くなってるに決まってるじゃないですか!私が鍛えてるんですよ!!」

 

太一

「私が…ね?」

 

「何だ八神!何か言いたい事でもあるのか!!」

 

 成長していると言う箒の台詞を聞いて太一は呆れていた

 

太一

「どの口が言ってるのかと思ってな?」

 

「何だと!?」

 

太一

「織斑先生…今日の実習の一夏を見てどう思いました?」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「悪いがもう少し具体的に頼む。」

 

太一

「それはすみません…なら今日と…そうですね、一カ月前の一夏…動きはどのくらい変わりましたか?」

 

一夏

「………」

 

千冬

「そう言う事か…なら言わせて貰うが…殆どと言っていいほど変わっていない!」

 

一夏&箒

「え?」

 

千冬

「無駄な動きばかりでまるで改善されていない。精々機体と武器の展開速度が少し早くなったぐらいだ。あれでは【白式】の性能を半分も引き出せていない。」

 

太一

「コレを聞いてもまだコイツが強くなってるって言えるのか?」

 

「くっ…だがそれは一夏が…」

 

太一

「一夏が何だ?覚えが悪いコイツのせいだとでも言うつもりか?自分から教えると言っておいて人のせいにするのか?」

 

「!?」

 

太一

「確かにお前の言う事にも一理ある。だが俺はお前達の練習を見に行った事があるが、あんな擬音だらけの説明で覚えろと言う方も無理だ。あれで理解出来るのは言ってる本人だけだ。それもあんな稚拙な訓練で強くなるわけないだろ?」

 

「ち、稚拙だと!?」

 

太一

「それ以外に何て言えばいいんだ?ただ剣を振ってるだけで強くなると思ってるのか?模擬戦をするにしても何処が問題かを指摘して改善させなければやる意味もない。俺が見た限りお前はそんな事を一度としてしていなかったがな?」

 

「な、何だと…」

 

太一

「だから一夏は一度は俺に頼みに来たんだろ?そもそも不満が無ければ俺に頼む事などしない。」

 

「………」

 

太一

「まあその時は断ったがな。だがそれもコイツの自業自得だ。」

 

一夏

「う!?」

 

千冬

「織斑…だから私はあの時に念を押して聞いたんだ…その結果が今のお前だ。1カ月経っても量産機にすら勝てない体たらくだ。」

 

一夏

「………だ、だから俺は…あの時に頼んだんだ…でも…」

 

千冬

「断られて当然だ!あれだけ大見得きって断ったのはお前の方が先だ!それを後から頼めば聞いてくれるとでも思っていたのか!」

 

一夏

「ううっ!」

 

太一

「あの時にも言ったがお前はどれだけ自分に都合のいい甘い考えをしていたんだ?俺が何故あの時すぐに断ったと思う?」

 

一夏

「え?」

 

太一

「引き受けたらお前を甘やかすだけだと思ったからだ。」

 

一夏

「そ、そんな!?」

 

千冬

「その上訓練中の八神達に乱入するとはお前は何処まで馬鹿なんだ?そんな事をすれば訓練を頼む事なんて余計に出来なくなる事が分からんのか?お前は自分で自分を追い詰めている事すら分からんのか?」

 

一夏

「ううっ………その…通りです…」

 

千冬

「これが最後の機会だ!本当なら私も何も言うつもりは無かったが、お前の体たらくは余りにも酷過ぎる!だから一度だけ私から八神に頼んでやる!後はお前が決めろ!」

 

一夏

「………(太一の訓練…一度断られた俺としてはありがたい…けど…)」

 

 千冬に太一からの訓練を進められた一夏は悩んでいた

 だが、以前太一に返り討ちにあった時の事と自身のプライドで中々頷けなかった(自業自得)

 

「一夏!!八神の訓練など必要無いとハッキリ言ってやれ!!」

 

 一夏が悩んでいると横から箒が口を出してきた

 

千冬

「お前の意見など聞いていない!横から口を出すな!」

 

「私は一夏の訓練担当です!意見を言う資格はあります!」

 

千冬

「なら私も八神を推薦した者として言ってやる。お前にそんな事を言う資格があるのか?」

 

「え!?」

 

千冬

「八神がさっき言っただろ?お前が織斑の訓練をした結果、今のコイツはどうなっている?」

 

「そ、それは…」

 

千冬

「スペックでは上回っている専用機を使っているのにも拘らず未だに量産機にすら勝てないほど弱いままだ!普通なら一カ月も訓練すればそんな事はまずありえんのだ!その理由は何故だ!!」

 

「ううっ…」

 

千冬

「ハッキリ言ってやる!原因はお前だろうが!!」

 

「!?」

 

一夏

「ま、待ってくれよちふ「ん!!」お、織斑先生…」

 

 また懲りずに名前で呼ぼうとした一夏を千冬は睨みつけ呼び方を直させた

 

千冬

「何だ?」

 

一夏

「あ、あの…太一の訓練を俺は受けるよ!で、でも…箒との訓練も一緒に続けたいんだ…」

 

太一

「無理だ。」

 

一夏

「え?」

 

 太一と箒の二人に教わりたいと言ってきた一夏の言葉を太一は切り捨てた

 

一夏

「な、何で?」

 

太一

「簡単だ。教える内容が違うならともかく、同じ場合は必ず意見の食い違いや衝突が起きる。そうなったら訓練どころではなくなる。特に篠ノ之との場合はな。」

 

一夏

「………」

 

太一

「お前が俺との訓練をしたいと言うなら篠ノ之との訓練を止めろ。」

 

「何!!」

 

太一

「他の者なら一緒にやっても何とかなるがコイツと一緒にやれば必ず文句を言って来る。最後には癇癪を起こして刀を振り上げて暴力沙汰にまで発展するのが目に見えている。」

 

「ふざけるな!!私がそんな事するか!!」

 

全員

「………」

 

 箒は太一の言う様な事をしないと言うがクラスの生徒達は太一の言う通りの事が起きるだろうと容易にその時の光景が想像出来てしまった

 

マドカ

「どの口が言うんだか?」

 

「何!?」

 

 そんなクラスメイト達の心情を代弁する様に今まで黙っていたマドカが太一と同じ事を言って口を挟んだ

 

マドカ

「お前、鈴に向かって行き成り竹刀で殴りかかったそうじゃないか?それも鈴が止めなかったらかなり危ない所に当たっていたらしいな?」

 

「!?」

 

マドカ

「その前も入学初日に一夏兄さんを行き成り木刀で殴りかかったらしいな?まあそっちはノックもせずに部屋に入った兄さんの方にも否があるからどっちもどっちだがな。」

 

一夏

「うっ!?」

 

マドカ

「だが、その後一夏兄さんを狙って扉越しに木刀で突いたそうだな?お前何学園の備品を平気で壊してるんだ?それに扉に穴を空ける様な突きを喰らったらどうなると思ってるんだ?」

 

「!?」

 

マドカ

「当たり所が悪かったら普通に死ぬぞ?お前そんな事も分からないのか?これだけ言えばお前にも分かるだろ?」

 

「………」

 

マドカ

「どれもお前が短気を起こした暴力沙汰だろ!それでよく太一兄さんの言葉を否定出来たな!!」

 

 箒は言い返せなかった

 それは確かに箒自身が起こした事だからだ

 

「くっ…ううっ…だ、だが私は…篠ノ之束の…」

 

マドカ

「束の名前を出すのか?おかしいな?お前は姉とは関係無いのだろ?」

 

「!?」

 

マドカ

「随分都合のいい姉嫌いだな?普段は姉とは関係無いと言っておいて都合が悪くなれば姉の名前を平気で使うとはな。」

 

「くっ!?」

 

マドカ

「そう言えば以前も一夏兄さんの訓練を買って出て来た先輩を追い返す時にお前は束の名前を使っていたな?お前には恥と言うものが無いのか?それとも自分が恥を晒している自覚が無いのか?」

 

クラスメイト

「………」

 

 周りの生徒達も箒が束とは関係無いと言っている事は知っていた

 だからこそ、箒が束の名前を出した事に対して冷たい視線を向けていた

 

マドカ

「束と関係無いと言うならアイツの名前を出すな!!」

 

「ぐうっ…」

 

マドカ

「篠ノ之!!お前みたいに何でもかんでも自分の思い通りにしようとする奴を何て言うか知ってるか!!…【傲慢】って言うんだよ!!!」

 

太一

「!?」

 

「何だとおおおおおぉぉぉぉぉ―――――っ!!!」

 

 マドカのその言葉に箒は遂にキレて何処からか出した木刀で殴りかかった

 

マドカ

「フンッ!」

 

 だがマドカは木刀を指で挟んで止めていた

 

「な、何っ!?」

 

マドカ

「お前これは何だ?さっき太一兄さんの言った通りの事をしてるじゃないか?」

 

「!?」

 

マドカ

「それに何だこの雑な太刀筋は?お前本当に剣道の全国大会で優勝したのか?この程度ならセシリアでも同じように止められるぞ?」

 

「何だと!?」

 

マドカ

「どうなんだセシリア?」

 

セシリア

「…そうですわね…流石にマドカさんみたいに指だけでは無理ですが止める事は出来ますわ。」

 

「!?」

 

セシリア

「そのくらいの速さでしたら目がすっかり慣れていますもの。」

 

「な、慣れただと!?」

 

セシリア

「ええ、そもそもわたくし達は太一様を相手に訓練してるんですよ?そのくらい出来るようになっていて当然ですわ。」

 

「な、何!」

 

セシリア

「…例えるなら授業で1週間掛けて教える内容があるとしましょう。ですが貴方では1カ月掛けても教えきる事が出来ません。対する太一様は2,3日で教えてくれます。太一様と貴方ではそのくらいの差があります。」

 

「き、貴様!?」

 

 ガシッ!

 

 箒は今度はセシリアに殴りかかろうとした

 だが、木刀を振り上げた瞬間動かなくなった

 

「!?…千冬さん!?」

 

 木刀は後ろから千冬が握って動けなくしていた

 

千冬

「篠ノ之…教師の前で暴力事件を起こすとはいい度胸だな?」

 

「ち、違います!?私は…」

 

千冬

「何が違う?この木刀で八神妹に殴りかかった上に、今もオルコットを殴ろうとしただろ?…それからオルコット。」

 

セシリア

「はい?」

 

千冬

「今の例えは良かったぞ。…教師としては少し自信を無くす例えだがな…」

 

セシリア

「あ!…す、すみません…大袈裟に言い過ぎました!」

 

千冬

「良かったと言っただろ?謝らなくてもいい。…それに丁度いい…織斑、今日は八神達と訓練をしろ。コイツは今から懲罰房に入って明日の朝までは出てこれないからな。」

 

一夏

「え?」

 

「な、何で私がそんな所に入らなければいけないんですか!!」

 

千冬

「馬鹿かお前?今言っただろ?教師の前で木刀振り回して暴力事件を起こしたのは誰だ?」

 

「そ、それは…」

 

千冬

「そんな事をした奴をお咎め無しにする理由が何処にある?まさか束の妹だから許されるとでも思っていたのか?」

 

「ね、姉さんは関係無いでしょう!!」

 

千冬

「なら懲罰房に入れられても文句は無いな?尤も束の名前を使おうとしたお前がそんな事を言っても説得力は無いがな。」

 

「くっ…」

 

千冬

「織斑…コイツは今から懲罰房に放り込むから邪魔される心配も無い。コイツと八神の訓練の違いを身を持って知るいい機会だぞ。」

 

一夏

「………」

 

千冬

「行くぞ篠ノ之!!」

 

 千冬はそのまま箒を連れて教室から出て行った

 

太一

「…【傲慢】…まさかアイツ…」

 

 太一は連れられて行く箒を見ながら先ほどマドカが口にした言葉を考えていた

 

太一

(…少し警戒しておくか…)

 

 太一は箒に対して警戒しておく事にした

 そして太一はマドカとセシリア、一夏を連れてアリーナに向かった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 それから太一は一夏を連れてアリーナに向かった

 

「あ!遅いわよ皆!!…!?」

 

 そこにはすでに鈴が待っていたが、一夏もいるのを見て表情を変えた

 

一夏

「り、鈴…」

 

 そんな鈴の姿を見て一夏は動揺していた

 一夏はあの日以来鈴とは全くと言っていいほど関わりが無くなっていたからだ

 

「…太一…何でコイツがいるの?」

 

 鈴は太一に何故一夏も一緒にいるのかを聞いて来た

 その声はとても冷めた口調だった

 

太一

「織斑先生の指示だ。コイツが弱すぎるから鍛えてくれとさ。」

 

「ああそう言う事…流石の千冬さんもアンタに頼まないと無理って判断した訳ね?」

 

一夏

「!?」

 

太一

「そんな所だ。」

 

「なら箒は?コイツがいるならアイツもいるんじゃないの?」

 

マドカ

「あの馬鹿なら今頃懲罰房に放り込まれているところだ。」

 

「懲罰房?アイツ何したの?」

 

セシリア

「織斑先生の目の前で木刀振り回してわたくしとマドカさんに殴りかかって来ました。」

 

「は?…何それ?アイツ本当に馬鹿ね?」

 

マドカ

「馬鹿だからな。」

 

「それもそうね…じゃあ早く始めよ!」

 

太一

「そうだな。」

 

一夏

「り、鈴…その、よろしく…頼む…」

 

 一夏は何とか鈴との仲を戻そうと話しかけたが…

 

「ん?ああそうね?まあアンタは適当にやっとけば。私は太一達と訓練するから。」

 

一夏

「!?」

 

 鈴の返事はとても冷めたもので、一夏の事を見ようともしなかった

 

一夏

「待てよ鈴!!何でそんな態度を取るんだよ!!」

 

「………呆れたわね…まだ自分が拒絶されてる理由に気付いてなかったなんて…アンタ馬鹿なの?ってそう言えば馬鹿だったわね?」

 

一夏

「な!?」

 

 自分に対して見向きもしない鈴の態度に一夏は遂にキレた

 だが鈴はそんな一夏の態度に逆に呆れ果てていた

 

「私あの時言ったよね?アンタは私の告白を間違えて覚えていたのよ?しかも私は違うって言ったのにアンタは思い出そうともせず、謝りもしなかったわね?終いには私の方が悪いって言って来たわよね?」

 

一夏

「!?」

 

「あのさ?普通そんな事されて平気でいると思うの?アンタが同じ事されたらどう思うの?」

 

一夏

「う………」

 

 鈴に言われ一夏は自分が鈴と同じ状況になった時の事を想像してみた

 鈴の言う通りそんな事をされればそんな相手の事を嫌いになるし関わりたくも無くなる

 

「そんな奴嫌でしょ?話したくも無いでしょ?一緒にいたくないでしょ?そんな気持ちになる事をアンタは私にしたのよ?分かる?分かるなら頷きなさい。」

 

一夏

「………」

 

 一夏は首を縦に振った…

 ココまで言われて一夏は漸く鈴の今までの態度の理由が分かったのだ

 

「分かったなら私に関わってこないで。授業や訓練の時は最低限相手をしてあげるけどそれ以外の時はアンタなんかと話もしたくないのよ。」

 

一夏

「ううっ…」

 

「先に言っとくけど今更謝っても遅いわよ?アンタの謝罪なんてもう何の意味も無いからね。それでもしたいなら勝手にすればいいわ。私は聞く気なんか無いけどね。」

 

一夏

「!?」

 

 一夏は土下座をして鈴に謝ろうとした

 だが、鈴からすでに遅いと言われてしまい、もはや謝る事すら出来なくなってしまった

 

「それからコレも言っておくわ。アンタいつも『皆を守る』って言ってるけどさ?どの口が言ってんの?」

 

一夏

「え?」

 

「この際だから教えてあげるけど、アンタ昔から沢山の女の子に好意を持たれてたのよ。」

 

一夏

「…は?な、何言ってんだよ?俺がそんな訳…」

 

「あるのよ。…で、話を戻すけど、アンタに好意を持ってた子達はどうなったと思う?」

 

一夏

「え?」

 

「アンタが無自覚にフッてったのよ。私みたいに告白しても全く気づかれずにその子達の気持ちは踏み躙られて来たのよ。アンタの事だから自分に好意を寄せていた子が誰なのか顔も名前も分からないんでしょ?アンタは昔からそんな男として最低な事を平然としてきたのよ。」

 

一夏

「そ、そんな…う、嘘だ!?」

 

「嘘なもんですか。だったら千冬さんに聞くといいわ。何なら弾でもいいわよ。二人とも私と同じ事を言うから。」

 

一夏

「千冬姉と弾が!?」

 

「そうよ。…それでさ?もう一度聞くけど…誰が誰を守るの?」

 

一夏

「!?」

 

「今まで大勢の子達の想いを踏み躙って傷つけてきたアンタが誰を守るって言うの?他人の気持ちを知ろうともしないアンタに誰かを守る事なんて出来るの?私には出来るとは思えないけどね?」

 

一夏

「………」

 

「私ならアンタにだけは死んでも守って欲しくないわね。アンタに守られる位ならプライドなんて捨てて土下座でも何でもして命乞いをするわよ。」

 

一夏

「!?…そ、そこまで言うのかよ…」

 

「当たり前でしょ?自分を殺そうとした奴に守って欲しいなんて思う馬鹿が何処にいるのよ?」

 

一夏

「…え?…殺す?」

 

「そうよ、アンタはあの代表戦の時、私を殺そうとしたのよ。」

 

一夏

「な、何言ってんだよ?何で俺がお前を殺そうとするんだよ?」

 

「フン、やっぱり気付いてなかったわね?」

 

一夏

「…え?」

 

 鈴は一夏に【デーモン】との戦いの時のことを話し出した

 

「アンタあの化け物に【零落白夜】で斬りかかったわよね?千冬さんに見せて貰った映像に映ってたから間違いないわよね?」

 

一夏

「あ、ああ…確かにそうだけど…」

 

「…アンタ【零落白夜】の危険性忘れたの?」

 

一夏

「!?」

 

「聞いた話だと太一と千冬さんが【零落白夜】の事をアンタに教えていたそうね?」

 

一夏

「…そ、それは…」

 

「ねえ?【零落白夜】であの化け物を斬り付けたら取り込まれていた私はどうなったのかな?」

 

一夏

「!?」

 

「元々あの化け物にはアンタの剣なんかじゃ掠り傷一つ付けられなかったけど…もしアンタの剣が通ったらどうなったと思う?」

 

一夏

「ううっ…」

 

「化け物ごとアンタに斬り殺されてたわよね?」

 

一夏

「ち、違う!?」

 

「何処が違うの?あんな滅茶苦茶に斬り付けていた奴が何言ってんの?アンタは太一と千冬さんの忠告を忘れたのよ。でなきゃあんな事する筈無いでしょ?」

 

一夏

「………」

 

 一夏は鈴のその言葉を否定出来なかった

 あの時の一夏は【デーモン】に言われた事が原因で正常な判断が出来なくなっていた

 その為、太一と千冬に言われた【零落白夜】の危険性が頭の中から無くなってしまい、鈴を助けるつもりが鈴を殺そうとしたのだ

 尤もISに対しては絶大な破壊力を持つ【零落白夜】もデジモンの前では効力は発揮されず【雪片弐型】はただの刀になってしまうので、中の鈴は勿論【デーモン】には傷一つ付かなかった

 

「これだけ言えば分かったでしょ?私はアンタに守って欲しくも無ければもう好きでも無い。私の言いたい事はこれで全部…自分がどれだけ鈍いかよく分かったかしら?」

 

一夏

「………」

 

「…あっ!そう言えばもう一つ言いたい事があったわ。これから私の事を『幼馴染』なんて呼ばないでね?私にとって今のアンタはもう『ただの他人』でしかないからね。」

 

一夏

「た、他人!?」

 

 『幼馴染』ではなく『ただの他人』…それは鈴が一夏との関係を全て捨て去る事を意味する言葉だった

 

「そうよ。あ~言いたい事言ってスッキリした♪…ゴメンね太一…今度は私が待たせちゃって…」

 

太一

「気にするな。」

 

「うん♪ありがとね太一♪」

 

一夏

「!?(ま、まさか鈴…お前太一を!?)」

 

 先程までの一夏に対しての冷たい態度とは打って変わって、鈴はとても明るい表情で太一と話していた

 それを見て鈴の今の気持ちが自分では無く太一に向いている事に一夏は気付いた

 

一夏

「………」

 

 今まで自分に向けられていた笑顔が今は太一に向けられている

 そして、鈴にとってもはや他人でしかない一夏にその笑顔が向けられる事は無くなった

 その事にショックを受けていたがそれも元を正せば全てはこの男が自分で招いた事である

 

一夏

「…くっ!」

 

 一夏はそのままアリーナから出て行った

 

太一

「…今日のアイツは訓練は無理だな…明日もう一度誘うか…鈴…構わんな?」

 

「さっきも言ったでしょ。最低限の相手をするだけよ。」

 

太一

「そうか…(徹底してるな…『ただの他人』とまで言ったんだからこの反応が当然なのかもな…好きの反対は嫌いでは無く無関心と言うが…今の鈴の事を言うんだろうな………だが、流石にこのままという訳にもいかんな…いずれは何とか出来ればいいんだが…)」

 

 太一はいずれは鈴と一夏の仲を友人までには戻せないかと考えながらそう言った

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 アリーナから飛び出した一夏は千冬を探していた

 

一夏

「ち、千冬姉!!」

 

千冬

「織斑先生だと…まあ今はいいか…お前何をしている?訓練はどうした?」

 

一夏

「それより教えて欲しい事があるんだ!!」

 

 そして廊下にいた千冬を見つけると早速鈴に言われた事を話した

 

千冬

「鈴がそんな事を…」

 

一夏

「な、なあ…嘘だよな?…俺が…そんな事してたなんて…嘘だよな!?」

 

 一夏は千冬なら否定してくれると思っていた

 だが…

 

千冬

「本当だ。」

 

一夏

「………え?」

 

 千冬からの答えは肯定だった

 

千冬

「鈴の言う通りだ。お前はその異常なまでの鈍感さで大勢の子達の気持ちを踏み躙って来た。」

 

一夏

「そ、そんな…な、ならなんで言ってくれなかったんだよ!?」

 

千冬

「お前覚えてないのか?私や五反田は何度かその事を忠告してたんだぞ?」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「だがいくら私達が注意してもお前はその意味をまるで理解しようとはしなかったんだ。だからお前に文句を言われる筋合いはそもそも私には無い!!」

 

一夏

「う、うう…」

 

 一夏はまさか千冬達がその事を何度も指摘していたとは思ってもみなかった

 千冬の言う通り今の一夏の台詞は千冬には言われる筋合いの無い言葉だった

 

千冬

「それにな…私は本当ならお前の恋愛事には関わりたくはなかった。」

 

一夏

「………え…」

 

千冬

「恋愛は個人の自由だ。誰が誰に惚れようとそいつの勝手だ。だが、お前の鈍さで泣く子達が余りにも可哀想だから時々口出ししていたんだ!何故私が弟とは言えお前の恋愛事情に口出ししないといけないんだ!?自分にだって彼氏がいないのにだぞ!!」

 

一夏

「そ、それは…」

 

千冬

「もしかしたらその中にお前を射止める奴がいるかもと思ったが…結局は全員が無自覚のお前にフラれてしまった…私の手助けも無駄にされるし、それ以上に皆には可哀想な事をした…」

 

一夏

「ううっ…」

 

千冬

「一夏…自分の鈍感さを自覚したなら鈴に感謝しろ。鈴が言わなければお前の被害者はこれからも増え続けていく一方だ。いずれはお前を背中から刺す奴が現れただろうからな。(…既にやりそうな奴が一人いるんだが…)」

 

 千冬はそう言いながら先程懲罰房に放り込んだ黒髪ポニーテールの少女の顔が浮かんでいた

 

千冬

「(まあ今はいいか…)これからは自分の言動に気を付けろ!言っておくが私は今後一切お前の恋愛事に関しては口出しせんぞ!いい加減疲れた!自分で何とかしろ!!背中から刺されても知らんからな!!」

 

一夏

「…はい…」

 

千冬

「いいか一夏!!お前が今までしてきた事は今の風潮以前に男として最低な事だ!!その中でも今回の鈴の件はお前が今までフッてきた者達の中でも一番酷い!!鈴のお前への態度も当然だ!!それだけの事をお前は鈴にしたんだ!!!」

 

一夏

「………」

 

千冬

「今度鈴の時の様な事をすれば私はお前の姉としてではなく一人の女としてお前を許さん!!分かったな!!」

 

一夏

「!?」

 

 千冬は最後にそう言うとそのまま行ってしまった

 

一夏

「…俺…そんなに最低な奴だったのかよ…」

 

 残された一夏は今迄の自分がしてきた事、そして自分がどういう人間かを突き付けられその場を動く事が出来なかった

 

 




 <予告>

 鈴と千冬によって自分の本質を突き付けられた一夏

 そんな中、改めて太一の訓練に参加する事になったが、そこに箒も現れた

 更に二つの国からやって来た転校生達によって太一の周囲は更に混沌となるのだった



 次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》

 金と銀の転校生

 今、冒険が進化する!


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