ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第029話:金の正体と目的

 模範演技を終えた太一とマドカ、セシリア、鈴の4人が暫く休んでいると観客席で見学していた千冬達が生徒達と戻って来た

 

千冬

「ご苦労だったな…八神…その4体目も恐ろしい機体だな…」

 

太一

「そうですか?」

 

千冬

「ああ、『矛盾』と同じ意味の武器を使う奴なんてどう倒せばいいのか私にも分からん!」

 

全員

「ウンウン!!」

 

 千冬の言葉に全員が頷いていた

 

千冬

「まあとにかく授業を続けるか…さて、次は専用機持ちをリーダーにしたグループでISの歩行練習を行う。全員別れろ。」

 

 千冬がそう言った途端、太一、一夏、シャルルの所に人だかりが出来た

 

生徒達

「第一印象から決めてました!よろしくお願いしまーす!」

 

千冬

「この馬鹿共が!出席番号順に別れろ!!」

 

 それを聞いた千冬が怒鳴りつけるとそれぞれの前に移動し始めた

 

千冬

「全く!」

 

 その後、各グループでISの乗り降りと歩行の練習を始めた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

千冬&オータム

「………はぁ…」

 

 千冬とオータムは練習を見て溜息を吐いた

 その理由は一夏、シャルル、ラウラの班が問題だった

 ラウラはまるでやる気が無く全て生徒達の自主練の状態になっていた

 一夏は前の生徒がISを立ったままで解除してしまったので、次の番だった箒をいわゆるお姫様抱っこの状態でISに乗せたのだが、それを見た他の生徒達も自分達もして貰おうと真似しだし、それがシャルルの班にも広がって全く練習が進んでいなかった

 太一の所もそうしようとした生徒がいたが、太一に睨まれて結局はする者はいなかった

 ちなみに太一、マドカ、セシリア、鈴の4人はそれぞれの教え方で順調に行っていた

 その後、最後に各グループでレースを行ったのだが、一夏達3人のグループは1位を争うどころか最下位を争うと言う結果になってしまった

 

千冬

「この…馬鹿どもがあああぁぁぁ―――っ!!!」

 

一夏&シャルル&ラウラ

「!?」

 

 そのような結果を出した3人には千冬の雷が落とされたのだった 

 

オータム

「お前らやる気あるのか!!」

 

一夏

「あ、ありますよ!」

 

オータム

「ならこのザマはなんだ!!」

 

一夏

「うっ!」

 

千冬

「ボーデヴィッヒ!!お前はさっきから何をしている!!」

 

ラウラ

「………」

 

千冬

「自分の班の生徒達に助言すらせずに放ったらかしにしおって、やる気が無いならいても邪魔だ!今すぐ荷物を纏めて国に帰れ!!」

 

ラウラ

「!?」

 

千冬

「織斑!デュノア!お前達も何をしていた!!毎回毎回あんな手間と時間のかかる乗せ方と無駄な話ばかりしおって!!練習内容はISの乗り降りと歩行だ!!それをお前達が乗せてどうする!!何故ISを座らせて降りるように注意しなかった!!」

 

一夏&シャルル

「………」

 

千冬

「お前達3人と織斑とデュノアの班は罰として使用したISを全部片付けろ!八神達が使ったのも含めてだ!!」

 

ラウラ

「な、何で私の班の奴等はやらなくていいんですか!?」

 

オータム

「あいつ等はお前が何もしなかった分、自分達なりに精一杯やっていた!だからお咎め無しだ!!そもそもお前にそんな事を言う資格があんのか!!!」

 

ラウラ

「くっ!?」

 

千冬

「織斑とデュノアの班は言わなくても分かるな?」

 

一夏とシャルルの班

「………はい…」

 

 ラウラの班はリーダーであるラウラはともかく班員は全員が真面目に取り組んでいた

 だが一夏とシャルルの班は全員が揃って真面目にやっていなかった

 だから千冬の言わんとしている事は分かっていた

 自業自得だと…

 

 キーン!コーン!カーン!コーン!

 

 その時、授業の終わりのチャイムが鳴った

 

千冬

「時間になったか。今言った連中はISを片付けてから休憩に入れ!特にボーデヴィッヒ!今度はお前もちゃんとやれよ!後で確認するからな!!」

 

ラウラ

「………了解…」

 

千冬

「では解散!!」

 

全員

「お疲れさまでした!」

 

 千冬に釘を刺されたラウラは今度は一夏や他の生徒達と一緒にISを片付けていた

 それを見て太一達の班になった生徒達はこの4人の班で良かったと思うのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 ISを片付けている一夏達を残して太一はマドカ達と食堂に向かっていた

 

太一

「………」

 

 だが、その間太一は何かを考え込んでいた

 

「どうしたの?」

 

太一

「いや、何でISを片付けるのに台車を使ってるのかと思ってな。」

 

マドカ&セシリア&鈴

「へ?」

 

太一

「ISを纏って倉庫まで歩いて行けば簡単だと思うんだが?」

 

マドカ&セシリア&鈴

「あ!」

 

太一

「…何故誰もその事に気づかないのかと思ったんだが…まあいいか。どうでもいい事だしな。」

 

 大した事でもないからすぐに考えるのを止め、食堂に向かっていった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 その日の授業も全て終え放課後になると…

 一夏のいる1025号室では箒と入れ替わりシャルルが入る事になった…

 そして移動も終わり夕食を終えた一夏とシャルルが部屋でくつろいでいると…

 

 コンコン…

 

一夏

「ん?…はい、何方ですか?」

 

千冬

「私だ。」

 

一夏

「千冬姉?」

 

 千冬がやって来た

 

一夏

「どうしたんだ?」

 

千冬

「用があるのはお前じゃない。デュノアの方だ。」

 

一夏

「シャルルに?…シャルル…千冬姉が用があるって。」

 

シャルル

「何か御用ですか?」

 

千冬

「ココでは話せない。ついて来てくれ。」

 

シャルル

「はい…分かりました…」

 

 シャルルが千冬に着いて行こうとすると何故か一夏も着いて来た

 

千冬

「お前は来なくていい。」

 

一夏

「え!何でだよ!」

 

千冬

「これはデュノアのプライバシーに関係する話だ。それを何故お前にも聞かせる必要がある?お前はコイツとそれほど親身な間柄なのか?」

 

一夏

「うっ!」

 

千冬

「分かったら部屋に戻れ。」

 

一夏

「…はい…」

 

 渋々ながら一夏は部屋に戻った

 千冬は一夏が部屋に戻ったのを確認するとシャルルを連れて移動した

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 シャルルを連れ千冬が向かった先は…

 

シャルル

「…1034号室?…確かココは八神君の部屋じゃ…」

 

 太一の部屋だった

 

千冬

「ああ、アイツも交えて話すからな。」

 

 千冬はそう言うとノックをし、太一からの返事があると中に入って行った

 部屋の中には太一とオータムの二人が待っていた

 

オータム

「来たか、さて話を始めようか…()()()()()()()()()()()。」

 

シャルル

「!?…だ、誰の事ですか?ぼ、僕はシャルルですよ?(何で僕の本当の名前を!?)」

 

オータム

「しらばっくれるな。こっちにはあの天災科学者がついてんだよ。お前の正体を調べるくらい訳無いぜ。」

 

シャルル

「天災………まさか篠ノ之博士!?」

 

千冬

「その通り。アイツに頼んでお前の事を調べて貰った。」

 

シャルル

「何で僕の事を…」

 

太一

「男装なんてしてくる怪しい奴を調べない訳無いだろ?」

 

シャルル

「まさか!?」

 

太一

「お前の正体が女だって事は初見で気づいていた。」

 

シャルル

「え?」

 

太一

「お前の何処が男だ?声は女のままだし、男の服着て言葉使いを変えればバレないとでも思ったのか?」

 

シャルル

「うっ!」

 

太一

「………まぁ俺達以外は騙せていたみたいだから余り強くは言えんのだが…」

 

千冬&オータム

「はぁ~~~…」

 

シャルル

「…そっか…まさか行き成りバレるなんてね…はぁ…」

 

千冬

「お前の目的は何だ?」

 

シャルル

「…会社からの命令で…織斑一夏の…【白式】のデータを手に入れる事…そして八神太一のデータも可能なら手に入れる様に言われました…」

 

 自分の正体がバレた事に観念したのかシャルルは千冬達の質問に素直に答えていた

 

千冬

「八神はついでで本命は一夏という事か…」

 

オータム

「まあ、そんなこったろうと思ったぜ。お前んとこの会社、今経営危機らしいからな。」

 

シャルル

「はい…」

 

太一

「そこからの巻き返しって事か…阿保らしい。」

 

シャルル

「阿保らしいの?」

 

太一

「ああ、そもそもお前を男装させて送り込んだこと自体が愚策だ。お前の正体がバレれば当然誰が指示したのかを問われる。例えお前が自分でやりましたと言っても15の小娘の言う事など誰も信じない。しかもお前はボーデヴィッヒの様な軍人じゃないから罪を着せる事も出来ない。となれば指示を出したのは会社と結論付けられる。それは結果として世界中から非難される事に結び付く。最終的には自分で自分の会社を追い詰める事になるんだからな。」

 

シャルル

「………」

 

千冬

「なるほどな…」

 

太一

「だから阿保らしい。確かに男同士なら俺や一夏と接触はしやすい。だが、それ以上にバレた時のリスクが大きすぎる。お前を男装させてココに送り込んだ奴はそんな事も分からない阿保だという事だ。」

 

オータム

「デュノア…お前を送り込んだのは誰だ?」

 

シャルル

「…僕は…社長である父から命令されました。」

 

オータム

「父親か…束の調査によるとお前はそいつの妾の娘らしいな?」

 

シャルル

「………はい…母が死んで一人になった僕を父が引き取ったんです。父は分かりませんが本妻には嫌われてます。初対面でいきなり平手打ちされて『泥棒猫の娘』なんて言われましたから…」

 

太一

「そうか…」

 

シャルル

「あの…それで僕は…どうなるんでしょう…」

 

太一

「好きにしろ。」

 

シャルル

「え?」

 

太一

「俺達がココにお前を呼んだのはお前の正体の確認と目的を知る為だ。それさえ分かれば好きにしろとしか言わん。正直、俺はお前の家の会社が潰れ様が立ち直ろうが興味が無い。今の平手打ちされた話もどうでもいい。他所の家の問題に首を突っ込むほど野暮でも無いからな。」

 

シャルル

「な、何で…何でそんな事言うんだよ!!」

 

太一

「何だ?同情でもして欲しかったのか?可哀想だねって言って欲しかったのか?生憎と俺はそんな事言わないぞ。自分の不幸話を慰めて欲しいなら一夏にでも話せ。アイツならすぐに同情してくれるだろ。」

 

シャルル

「なっ!?」

 

太一

「して欲しいのなら、されるだけの行動をしろ。お前と会ってまだ一日だが自分で今の現状を変える気がないだろ?命令以外何もする気が無い奴に同情なんてする価値は無い。」

 

シャルル

「!?」

 

太一

「お前が俺やクラスの連中に危害を加えるようなら然るべき対処を取ろうと思ったが、そんな度胸も無さそうだしこの分なら放っといても大丈夫だな。」

 

シャルル

「………」

 

太一

「デュノア…お前との話もこれで終わりだから戻っていいぞ。それから折角休んでいた所を呼び出した事に関しては謝る。すまなかった。」

 

 太一はそう言ってシャルルに頭を下げた

 

太一

「織斑先生…悪いがデュノアを部屋まで連れて行って貰っていいですか?」

 

千冬

「ああ、行くぞデュノア。」

 

シャルル

「…はい…」

 

 千冬がシャルルを連れて部屋から出て行くと…

 

オータム

「少し言い過ぎじゃねえか?」

 

 オータムが先程までの太一の台詞に物申してきた

 

太一

「…千冬が戻って来るまで待て。アイツもお前と同じ事を聞くだろうからな。」

 

オータム

「お見通しって訳か。分かったよ。」

 

 それから暫くして千冬が戻って来た

 

千冬

「八神、さっきのデュノアに言っていた事だが…」

 

太一

「分かっている。オータムと同じ事を聞くな。」

 

千冬

「お前も同じ考えだったか。」

 

オータム

「ああ、流石に言い過ぎな気がしてな。」

 

千冬

「私もだ。…それで何故あそこまで言った?」

 

太一

「大した理由じゃない。ああいう諦めた奴にはあのくらいが丁度いいと思っただけだ。」

 

オータム

「諦めた?」

 

太一

「ああ、アイツの眼、正体がバレた途端に全てを諦めた眼に変わった。」

 

千冬

「眼だと?」

 

太一

「俺の生前の職業は知ってるだろ?俺は外交官として様々な人間やデジモン達と出会い話して来たが中には初めから全てを諦めていた奴もいた。そいつらは決まって同じ眼をしていたんだよ。」

 

千冬

「ではデュノアも同じ眼を?」

 

太一

「ああ、それに昼の授業でも思ったが、アイツは自分では何もせずただ周りに流されているだけに見えた。」

 

千冬

「昼の授業と言うのはあの実習の事か?」

 

太一

「そうだ、アイツは一夏の班の悪ふざけを自分の班の奴等が真似しても止めもしなかった。ただアイツ等に言われるままに動いていただけだ。」

 

オータム

「…言われてみれば…そんな感じではあったな…」

 

千冬

「確かに…」

 

太一

「その辺は一夏と似ているがな。そしてさっきの会話だ。アイツは俺達が聞いてもいないのに本妻にされた事を語った。俺にはアレが同情して助けろと言っているようにしか聞こえなかった。」

 

千冬&オータム

「………」

 

太一

「同情するならセシリアや鈴の方がまだしがいがある。セシリアは家、鈴はあの馬鹿との関係を自分なりに変えようと努力していた。内容こそ違うがあの二人は常に自分の意思で行動していた。」

 

千冬&オータム

「………」

 

太一

「だがデュノアは違う。アイツは一夏と同じで自分では何もしようとしない。そんな奴に同情する気なんて俺には無い。」

 

千冬&オータム

「………」

 

太一

「もちろんこれは俺の個人的な考えだ。デュノアの本心は分からないが…」

 

千冬

「お前はそう感じたんだな?」

 

太一

「ああ…さてこの話はこれでいいだろ。…オータム、束に連絡を頼む。」

 

オータム

「今度は何を調べて貰うんだ?」

 

太一

「デュノア社に関する事だ。社長と本妻、その周辺の人間関係も全てだ。」

 

千冬

「デュノアの為か?」

 

太一

「違う。俺が束にあそこを調べさせるのは別の理由だ。」

 

オータム

「別の?お前何考えてんだ?」

 

太一

「それは束が調査を終えた時に話す。」

 

千冬

「そうか…」

 

 二人は太一がデュノア社を調べるのはシャルルの為と思ったが、本人は違うと即答した

 その為、太一の考えがまるで分らなかった

 それから暫く3人で話した後、千冬とオータムは自分達の部屋に帰って行った

 二人が帰るとアグモンが出て来た

 

アグモン

「太一…何考えてるの?」

 

太一

「無駄になるかもしれないが上手くいけば束の研究もはかどるかもしれん。………ついでにアイツの家の問題もな…」

 

アグモン

「?」

 

太一

「それはな………」

 

 太一はアグモンに今考えている事を話した

 

アグモン

「なるほどね!確かに上手くいけばいい事づくしだよ!」

 

太一

「だがそれも…俺の想像通りの会社だった場合のみだ…」

 

アグモン

「………そうだね…」

 

 アグモンはデュノア社が太一の思惑通りであって欲しいと願っていた

 

 




 <予告>

 シャルルの正体を見破った太一

 次の日からも変わらずマドカ達と訓練をするがそこにシャルルも参加してきた

 訓練を続ける中、そこに更にラウラが現れた

 彼女の目的は一体何なのか?

 そして標的は誰なのか?



 次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》

 銀の標的と目的

 今、冒険が進化する!


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