ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第045話:デュノア社の夜明け

 

 太一と束が去った後、デュノア社長はすぐに自分が信頼できる幹部に連絡を取り、急いで呼び出した

 連絡を入れてから数分後、社長に呼び出された幹部達が集まった

 

幹部1

「社長、急いで来いとはどういう事ですか?」

 

幹部2

「そうです、それにこのような呼び出しをすれば…」

 

 幹部の1人がこの緊急招集を本妻達が知れば黙っていないと言おうとした

 だが…

 

デュノア社長

「大丈夫だ。事情はまだ話せないが今この場での事をあいつ等が知る事は無い。」

 

 社長は自信をもって大丈夫と言い放った

 

幹部2

「…はぁ…社長がそこまで仰るのでしたら…」

 

幹部3

「それでは、そちらの女性は誰ですか?」

 

 一先ず社長の言う事を信じた一同だが今度は社長の隣に立つスコールについて聞いて来た

 

デュノア社長

「彼女は私の護衛だよ。」

 

スコール

「スコール・ミューゼルと言います。少しの間ですが社長の護衛を受けました。」

 

幹部1

「護衛って…護衛が必要な事がこれから起きるんですか?」

 

 スコールの説明からこれから大変な事が起きるのだと全員が察した

 

デュノア社長

「言いたい事も色々あるだろうがまずはコレを見てくれ。」

 

 そう言ってデュノア社長は束から渡された不正の証拠を全員に見せた

 それを見た幹部達の表情は驚きに染まっていた

 

幹部1

「こ、これは本当なんですか!!」

 

幹部2

「あいつ等!こんな事までしていたのか!!」

 

幹部3

「我々の働きを…」

 

 そして本妻達への怒りを燃やしていた

 

デュノア社長

「皆の怒りは尤もだ。そこで聞くが、これを見て君達はどう思う?正直に答えてくれ。」

 

幹部3

「決まってます!!」

 

幹部1

「あいつ等をこれ以上野放しにしてはおけません!!」

 

幹部2

「今すぐにでも豚箱にぶち込むべきです!!」

 

 社長の問いに部下達も同じ考えだった

 

デュノア社長

「うむ、私も同意見だ!だから私はこの証拠を警察と政府の信頼出来る人物に渡して奴等を捕まえて貰うつもりだ。」

 

幹部達

「はい!!」

 

 社長の言葉に全員が力強く頷いた

 だが社長の話はまだ終わっていなかった

 

デュノア社長

「だが問題もある。」

 

幹部2

「と言いますと?」

 

デュノア社長

「あいつ等が素直に捕まると思うかね?」

 

幹部達

「あ!?」

 

デュノア社長

「それに私は証拠を提出した後、あの女に離縁を言い渡すつもりだ。だが、アイツがそんな事を言われて黙ってそれを受け入れると思うかね?」

 

幹部1

「思いませんね…間違いなく反抗するでしょう。」

 

幹部3

「はい、もしかするとISを持ち出す事も考えられます。」

 

デュノア社長

「恐らくそうなるだろう。…だからこそ彼女にいて貰っている。」

 

 デュノア社長はそう言って隣に控えているスコールを見た

 

幹部1

「ですがスコールさん一人で大丈夫なんですか?」

 

デュノア社長

「私は大丈夫だと信じている。」

 

幹部3

「しかし…」

 

スコール

「ご安心ください。ISなら私も持っていますし量産機では無く一点物の専用機です。それにこれでも昔は軍に所属していました。たとえ束になってかかってこようとド素人が使うIS如きに後れは取りません。」

 

 心配する幹部達にスコールは大丈夫だと言い放った

 そこまで言われては彼等もスコールを信じる事にしたのだった

 

デュノア社長

「と言う訳で奴等が反抗してきた場合は彼女が対処する。君達にはその後の事を頼みたい。」

 

 すると社長は幹部達を呼んだ理由を説明しだした

 

幹部2

「その後?」

 

デュノア社長

「それを見て分かると思うが奴等はこの会社でも不正を行っている。例え私達から告発しても会社にも少なからず影響を与えてしまう。」

 

幹部3

「…そうですね…」

 

幹部1

「それに我が社はただでさえISの開発が他の国に比べて遅れています…そこに今回の件…社員達を路頭に迷わせてしまう事も…」

 

 社長の一言に幹部達も何が言いたいのか察した

 だが、不祥事の発覚した会社を立て直す方法が思いつかなかった

 

デュノア社長

「安心したまえ、会社を立て直す方法なら既にある。」

 

幹部達

「え?」

 

デュノア社長

「その証拠を用意してくれた人が我が社を立て直す協力をしてくれたのだ。いくつかの条件を出されたがどれも問題無いと判断出来るものだよ。」

 

幹部3

「一体誰なんですか?ココまでの証拠を集める程の人なんて…」

 

デュノア社長

「すまないがそれはまだ言えん。だが、立て直しに入る時に必ず教える。」

 

幹部1

「分かりました…では私達はそれまでの間、社員達が自棄を起こさないように押さえておけばいいのですね?」

 

デュノア社長

「その通りだ。大変だと思うがよろしく頼む。そんなに時間はかけないつもりだ!」

 

幹部達

「ハッ!!」

 

 こうしてデュノア社長は幹部達の説得も終え、警察と政府に連絡し、束からの証拠を送り付けたのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 デュノア社長が証拠を提出するとすぐに返事が来た

 それによると彼等もその内容に驚き今日中に全員を捕縛するように動くとの事だった

 そして、連絡が来てから暫くすると…

 

本妻

「おはよう…あら、その女は何かしら?」

 

 本妻とその取り巻き達が出勤してきた

 彼女は社長室に来るとデュノア社長の隣に控えているスコールを見てその事を聞いて来た

 

デュノア社長

「彼女の事は気にしないでくれ。愛妾とかそう言うのではないよ。」

 

本妻

「それを私が信じると?」

 

デュノア社長

「思わないな。」

 

本妻

「…今日は随分と生意気な態度を取るのね?」

 

 淡々と答えるデュノア社長の態度が本妻は気に食わなかった

 そこに…

 

デュノア社長

「そうかもな…実はお前に一言言いたい事があるんだよ。」

 

本妻

「は?貴方が私に?」

 

デュノア社長

「ああ、お前とは今この時を持って離婚だ!今すぐここから出て行け!!」

 

 いきなり離婚を言い渡され本妻は怒りが頂点に達した

 

本妻

「調子に乗るな!!お前達!!!」

 

 本妻は取り巻き達を呼びつけた

 すると【ラファール】を纏った数人の女が社長室に入って来た

 そして本妻自身も【ラファール】を展開した

 だが、デュノア社長はそれを見ても動揺すらしていなかった

 そんな社長の態度に本妻は更に苛立っていった

 

本妻

「男がこの私に逆らうとどうなるか思い知らせてやるわ!!」

 

 本妻はそう言うと取り巻き達と社長に襲い掛かった

 だが、社長は全く動じていなかった

 何故なら…

 

 ドゴォォォンッ!

 

本妻達

「キャアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!」

 

 デュノア社長の隣に控えていたスコールがISを展開し、本妻達を吹き飛ばしたからだ

 

本妻

「ぐっ…IS!?それにその機体は…専用機!!」

 

スコール

「ええそうよ、この子は【ゴールデン・ドーン(黄金の夜明け)】。貴方達の使っている量産型とは訳が違うわよ?」

 

 それは全身が金色のカラーリングが施され、巨大な尻尾が特徴的な機体だった

 これがスコールの専用機、第3世代型の【ゴールデン・ドーン】だった

 

スコール

「…社長…危ないですので隣の部屋に避難を…」

 

デュノア社長

「分かりました!ご武運を!!」

 

スコール

「ありがとうございます♪」

 

 スコールを激励すると社長は言われた通り隣の部屋に避難した

 それを見て本妻達は…

 

本妻

「貴様!!同じ女でありながらなぜ男に与する!!」

 

 何故スコールが男であるデュノア社長を守るのか問い質してきた

 それを聞いてスコールは呆れた

 

スコール

「は?貴方達と一緒にしないでくれる?」

 

本妻

「何ですって!!」

 

スコール

「貴方達の様なのがいるからこの世界は腐っていくのよ。世界に害しか及ぼさない社会の害虫はさっさと駆除するに限るでしょ?」

 

本妻

「が、害虫ですって!?」

 

 自分達を害虫呼ばわりされ、本妻達は全員がキレた

 そのまま全員でスコールに向かって銃を乱射したが…

 

 ガガガガガガガガガガガッ!!!

 

スコール

「ふんっ…」

 

本妻

「何!?」

 

 彼女達の攻撃はスコールの周囲に張られたバリア【プロミネンス・コート】で防がれていた

 そしてスコールはそのまま反撃に入った

 

スコール

「はっ!!」

 

 【ゴールデン・ドーン(黄金の夜明け)】の両肩に備わっている炎の鞭【プロミネンス】と尻尾による攻撃を仕掛けた

 

 バキッ!ドカッ!グシャッ!

 

本妻達

「キャアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!!」

 

 本妻達はスコールの攻撃を防ぐ事も出来ず次々に倒されISは強制解除されていった

 そしてあっと言う間に全員が倒され本妻は【ゴールデン・ドーン】の尻尾によって締め上げられていた

 

本妻

「がっ…あっ…ひっ…」

 

 更にISを失い、倒れている取り巻き達は恐怖で完全に怯えてしまっていた

 

スコール

「やはりこの程度ね…所詮ISが無ければそこらのチンピラと変わりないわね…」

 

 そんな女達をスコールはつまらない物を見る様な眼で見ていた

 

本妻

「ま、待って…お、お金ならいくらでも払うから…た、助けて…」

 

スコール

「黙れ!」

 

本妻

「グギイイイイイィィィィィッ!!!」

 

 スコールは尻尾の締め上げる力を僅かに強めた

 本妻の命乞いがとても耳障りに聞こえていたのだ

 その後、スコールは待機状態になったISを全て回収し、本妻を地面に転がすと、避難していたデュノア社長を呼び出した

 

スコール

「申し訳ありません、少々やり過ぎてしまいました。」

 

 そう言って謝罪するスコール

 何故スコールが謝ったのかと言うと本妻達との戦いで社長室は見るも無残な状態になってしまったからだった

 

デュノア社長

「い、いや、謝る必要はありませんよ…」

 

 社長は顔を引く付かせながら問題無いと言った

 確かに社長室は滅茶苦茶になったがISが戦えば仕方ない事だと割り切ってしまえばいいだけだった

 なのでスコールの謝罪は必要の無い事だったのだ

 

デュノア社長

「…さて…」

 

 気を取り直してデュノア社長は地面に転がされている本妻の前に立つと懐から一枚の紙を取り出し、目の前に置いた

 それは『離婚届』だった

 

デュノア社長

「これにサインするんだ。拒否権は無い。」

 

本妻

「ぐっ…誰が…」

 

 ザンッ!

 

本妻

「ヒッ!?」

 

 本妻は拒否しようとしたが顔のすぐ横にスコールが尻尾を突き刺した

 

スコール

「聞こえなかった?貴方に拒否権は無いのよ?」

 

本妻

「グッ…ググッ…」

 

 スコールが脅すと本妻は大人しく書類にサインをした

 

デュノア社長

「…確かに…コレで私とお前は赤の他人だ!」

 

 書類を見ながら社長は本妻とは縁が切れたと言い放った

 だが、この女がそんな事を言われて黙っている筈がなかった

 

本妻

「くっ!調子に乗らない事ね!他人になったのならこんな会社潰してやるわ!!私にはまだ…」

 

 まだ終わっていないと叫びながら出て行こうとしたが…

 

 バンッ!!

 

 突然社長室の扉が開かれた

 

本妻

「!?…だ、誰よ貴方達!!」

 

 入って来たのはスーツ姿の男女が数人と武装した警官達だった

 彼等は社長から送られた書類を手に本妻達を捕まえに来た人達だった

 警官達はスコールによって倒された女達を見て最初は驚いたがすぐに気を取り直し、次々に捕縛して行った

 だが、捕まった女達は…

 

女1

「な、何のつもりよ!」

 

女2

「私達が何をしたって言うのよ!」

 

女3

「こんな事してタダで済むと思ってるの!」

 

 自分達が何故捕まらなければならないのかと叫んでいた

 するとスーツの男性が社長から送られた証拠の一部を女達に見せた

 それを見た瞬間、先程までの喧騒が止み、その表情はどんどん青褪めて行った

 

女1

「こ、これは…な、何で…」

 

警官

「匿名で送られてきたものだ!お前達の背後関係もすでに調べがついている!そちらにもすでに捕縛に向かっている!言い逃れは出来んぞ!!」

 

本妻

「あ、あんたの仕業ね!!」

 

デュノア社長

「さあどうかな?だが一つ言えるのはお前達は二度と日の当たる場所に出られなくなるという事だ!」

 

本妻達

「!?」

 

デュノア社長

「これからは自分のこれまでの行いを悔いながら牢の中で暮らすんだな!」

 

警官

「デュノア夫人…いや、元夫人、デュノア社における汚職の数々、非合法の武器製造等お前達には多数の罪状が認められている!!」

 

 そう言って警官の1人が元夫人の前に逮捕令状を突き出した

 

本妻

「い、嫌よ…何で私が…」

 

警官

「連れて行け!!」

 

本妻達

「嫌あああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 叫び声を上げながらも抵抗をしようとする元夫人達だったが、すでにスコールによってISは取り上げられている彼女達では武装した警官達相手には何も出来なかった

 その後、社内にいる不正を行っていた他の社員達も一人残らず逮捕され全員連行されていった

 他の社員達は目の前の光景に思考が追いつかずただ見つめている事しか出来なかった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

デュノア社長

「…コレでこの会社も綺麗になりました…」

 

 デュノア社長は社長室に残ったスコールにそう言った

 

スコール

「そうですね…ですが本当に大変なのはこれからですよ?」

 

デュノア社長

「分かっています。ですが必ず立て直して見せます!」

 

 社長の決意を見てスコールは笑みを浮かべた

 

スコール

「太一と束も貴方達には期待しています。頑張って下さい。」

 

 スコールがそう言うと社長は今までずっと疑問に思っていた事を口にした

 

デュノア社長

「…スコールさん…一つ聞きたい事が…」

 

スコール

「何でしょう?」

 

デュノア社長

「八神太一…彼は何者ですか?あの篠ノ之博士にまで口出し出来る上に、博士は我が社を選んだのが彼と言ってました。一学生にそこまでの事が出来るとは思えないのですが…」

 

 それは太一の正体についてだった

 社長の言う通り普通に考えれば15の子供にココまでの事が出来る訳無いからだ

 それもあの篠ノ之束をも動かしたともなれば尚更だった

 なので社長の疑問も尤もだった

 社長の質問に対してスコールは…

 

スコール

「そうですね…でしたらもう暫くお待ちください。」

 

デュノア社長

「え?」

 

 もう少し待てと笑みを浮かべて答えた

 

スコール

「彼の正体についてはこれまでIS学園で起こった事件と合わせて束が説明する手筈になっています。」

 

デュノア社長

「IS学園の事件!?…【SINウイルス】の事ですか?」

 

スコール

「そうです。」

 

 スコールはこの時点ではまだ束の吐いた嘘【SINウイルス】で話を進めた

 まだ公表もしていない状況で話す訳にはいかなかったからだ

 

デュノア社長

「…分かりました。ではその時まで待ちます。」

 

スコール

「それと、後で分かる事ですが貴方には先にお伝えしておきます。」

 

デュノア社長

「え?何でしょうか?」

 

スコール

「実は貴方の娘も【SINウイルス】に感染した機体を使っていました。」

 

デュノア社長

「シャルロットが!?」

 

 自分の娘の使っていた機体がウイルスに感染していた事を知り社長は娘がどんな化け物になったのか激しい不安に襲われた

 だが…

 

スコール

「ご安心ください。既に太一がウイルスを駆除しました。」

 

デュノア社長

「そ、それでシャルロットは!?」

 

スコール

「無事です。太一が助け出し、今はまだ眠っていると思いますよ?」

 

デュノア社長

「よ、良かった…本当に良かった…」

 

 娘が無事助け出されたと聞き、心の底から安堵していた

 それと同時に娘を助け出してくれた太一に感謝していた

 それを見てスコールは微笑むと、自分はもう必要無いだろうと束の元に戻る事を伝えた

 

デュノア社長

「…スコールさん、本当にありがとうございました!それと…八神太一君…彼に伝えておいて欲しい事があります。」

 

スコール

「何でしょう?」

 

デュノア社長

「娘を救ってくれてありがとう、と…篠ノ之博士を紹介してくれて本当に感謝しています、と…伝えて下さい。」

 

 社長は笑顔で太一への感謝をスコールに伝えていた

 それを聞いてスコールも笑顔で頷くと…

 

スコール

「承りました。必ず太一に伝えます。」

 

 そう言って社長室を後にしていった

 誰もいなくなった社長室でデュノア社長は視線を外に向けた

 窓から見える太陽を見て…

 

デュノア社長

「今日が…我が社の『夜明け』だ!!」

 

 そう言って新たな決意を宣言するのだった…

 

 




<予告>

 太一が束と共にデュノア社で話し合いを行っている頃

 学園では戦いが終わった事による混乱が起きていた

 それを抑える為に奔走する千冬達

 そんな中、千冬は強欲の魔王に選ばれた少女の元に向かい太一の伝言を伝える

 その言葉を聞き少女は何を感じ何を選ぶのか…



 次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》

 銀の黒兎の光

 今、冒険が進化する!



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