ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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本編
第001話:終わる勇気


 

 その日は雲一つ無い晴天だった

 とある1軒の家、その縁側に一人の老人が座っていた

 そして、その隣には黄色いトカゲの様な生物…1匹のデジモンが寄り添うように座っていた

 

老人

「…お前には…色々と…世話になったなぁ…」

 

デジモン

「それはこっちのセリフだよ。」

 

老人

「ハハッ…そうかもな…アグモン…」

 

デジモン

「そうかもね…太一…」

 

 そう、この老人こそかつて選ばれし子供の一人として世界を救ってきた【八神太一】その人だった

 そして隣にいるデジモンは彼の生涯のパートナー【アグモン】だった

 

太一

「なあ…アグモン…俺、お前と出会えて…本当によかった…」

 

アグモン

「…うん!…僕も…太一に出会えて…嬉しかった!」

 

 次第に小さく弱々しくなっていく太一の声と、涙混じりのアグモンの声…

 二人には分かっていた…

 太一の命が尽きようとしている事を…

 かつて太一と共に旅をした7人の仲間は既に先立ち…

 残る最後の一人が太一だった…

 だからこそ二人は最後の言葉を交わしているのだ…

 

太一

「…アグモン…」

 

 太一は懐から一つの小さな機械を取り出した

 それは長い年月の間に色あせ、ボロボロになってしまったが太一とアグモンの絆の証【デジヴァイス】だった

 

太一

「…アグモン…最後の頼み…聞いてくれるか…」

 

アグモン

「…うん!モチロンだよ!」

 

太一

「…ありがとう………アグモン…進化だ…」

 

 太一がアグモンに向けて【デジヴァイス】を翳すと光り輝きアグモンを光が包み込んだ

 

アグモン

「アグモン進化―――っ!!…【グレイモン】!!!

 

 光の中から出て来たのはオレンジの体色と青い縞柄に3本の角を持つ兜を被った様な恐竜型デジモン・グレイモンだった

 太一は進化したグレイモンを見上げると、力一杯両腕を広げた

 

グレイモン

「!?…太一…」

 

 それを見たグレイモンは太一が何をしたいのかがすぐに分かった

 グレイモンは膝をつき四つん這いになると自分の顎を太一の広げた両腕に持ってきた

 

太一

「…友達の…印…」

 

 『友達の印』…太一が妹のヒカリと初めてデジモンと出会った時に教わった事だった…

 

グレイモン

「…うん…友達だよ!僕達は…今迄も…そしてこれからも…ずっとずっと…友達だよ…太一!!」

 

太一

「…ああ…俺達は…これからも…ずっと…友達だ!!」

 

 二人は互いに最後の涙を流しながらお互いの友情をかみしめていた…

 そして…

 

太一

「…ありがとう………アグモン………」

 

グレイモン

「!?………おやすみ…太一…」

 

 太一は相棒に見守られながら安らかな眠りについた…

 先に待つ仲間たちの元へと旅立ったのだ…

 だがこれは太一とアグモンの新たな冒険のほんの始まりでしかなかったのだ…

 




 <予告>

 生涯の相棒に別れを告げその人生に幕を閉じた太一

 だが、世界はまだ彼に安らぎを与えてはくれなかった

 太一の前に現れたデジタルワールドの神【イグドラシル】

 太一の新たな冒険が始まろうとしていた!



 次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》

 始まる勇気

 今、冒険が進化する!


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