ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第047話:金の淑女の解放

 【バルバモン】と【ベルフェモン】との戦いから二日目の朝、IS学園では現在も太一と【七大魔王】の戦いの後始末に教師達は追われていた

 学園はこの様な状態なので授業は前日から全て中止となっており、生徒達は自室で自習をするように言われていた

 そんな中、1025同室…一夏とシャルルの部屋では…

 

シャルル

「………これは一体…」

 

 その日の朝、シャルルは反省文200枚の筆休めをしている一夏と一緒にテレビのニュースを見ていた

 それを見て二人は驚愕していた

 何故なら、そこから流れているのは【デュノア社】の汚職発覚のニュースであった

 驚きを隠せないでいる二人を他所に一斉捜査の入った【デュノア社】では本妻を始めとした女尊男卑に染まった女たちが次々に連行されている映像が流れていた

 その時…

 

 prrrrrr

 

 シャルルの携帯が鳴った

 それを見ると相手は自分の父からだった

 

シャルル

「は、はい…」

 

デュノア社長

『シャルロット…ニュースは見ているかい?』

 

シャルル

「は、はい!あの、これって本当なんですか?」

 

デュノア社長

『本当だ。アイツがいなくなったお陰で漸く私も他の社員達も解放された…』

 

シャルル

「え?解放?」

 

デュノア社長

『実はこの会社は今までアイツに牛耳られていてな…私も身動きが出来ない状態にさせられていたんだ。』

 

 デュノア社長はシャルルに会社の実情を説明した

 それを聞いたシャルルは驚いていた

 

シャルル

「じゃ、じゃあ…今までの僕への態度も…」

 

デュノア社長

「アイツの前ではああする事しか出来なかった…不甲斐無い父親でスマナイ…お前を守ってやる事も出来なくて…」

 

シャルル

「そ、そんな事無いよ!僕の事を思っていてくれたって分かっただけでも凄く嬉しいよ!」

 

デュノア社長

「シャルロット…ありがとう…」

 

 すると…

 

一夏

「ほらなシャルル!俺の言った通り何とかなるもんだろ?」

 

 横から一夏が何故か胸を張って話しかけてきた

 だがそれに電話の向こうのデュノア社長が反応した

 

デュノア社長

『…今の声…男だな?という事は織斑一夏君かね?』

 

シャルル

「そうです。」

 

デュノア社長

『シャルロット…もしやお前の正体を彼に知られていたのか?』

 

シャルル

「は、はい…少し前に…」

 

デュノア社長

『ふむ、その時の事を詳しく教えてくれないか?』

 

シャルル

「はい…実は………」

 

 こうしてシャルルは一夏に正体がバレた時の話をした

 勿論その時に一夏が言った事も話した

 それを聞いてデュノア社長は…

 

デュノア社長

『…シャルロット…スピーカーに変えてくれ…彼とも少し話がしたい。』

 

シャルル

「あ、はい…」

 

 シャルルが携帯をスピーカーに変える様に言うとデュノア社長は一夏に話しかけた

 

デュノア社長

『織斑君…君は娘の力になると言ったそうだが具体的にどうするつもりだったんだね?』

 

一夏

「え?えっと…それは…その…え~っと…」

 

 デュノア社長の質問に一夏は答えられずその場で考え始めた

 それを聞いてデュノア社長は一夏が何も考えていない事に気付いた

 それと同時に一夏が何故何も考えていないのかも見当が付いた

 

デュノア社長

『まさかとは思うが学園の特記事項で時間稼ぎをしてその間に対策を立てればいいとか考えていたのではないよね?』

 

一夏

「そ、そうですけど…」

 

 それを聞いた瞬間デュノア社長は呆れ果てると同時に怒りがこみあげて来た

 余りにも楽観的過ぎる上に無責任な事を言っているからだ

 

デュノア社長

『君は…社会を舐めているのか!!!世間を馬鹿にしているのか!!!』

 

一夏

「!?」

 

 そんな一夏に我慢できずデュノア社長は電話越しとは言え怒鳴り声をあげた

 

デュノア社長

『いいか!その学園は各国の政府や企業の支援から成り立っている物なんだ!この会社もその一つだ!そこに所属するシャルロットを私達が呼び戻せばその子は拒否する事は出来ないんだ!!まして娘は代表候補生だ!国からの帰還命令に対して拒否する事は出来んのだ!!』

 

一夏

「なっ!?」

 

シャルル

「そ、そんな…(ぼ、僕はそんな甘い考えをしていたのか!?)」

 

 父から聞かされた自分の立場にシャルルは青褪めていた

 

デュノア社長

『しかも3年の間に考えればいいだと?君のその考えは娘にその学園から3年間外に出るなと言っているのと同じ事だ!君は娘をそこに監禁する気だったのか!!』

 

一夏

「ち、違う…お、俺は…」

 

デュノア社長

『ではどうする気だったんだね!対策一つまともに考えずに先送りにしていただけの君に何が出来るんだね!まさか君のお姉さんの名前を使う気だったのかね!!』

 

一夏

「それは…」

 

デュノア社長

『言っておくが君のお姉さんの名前を出しても出来る事は何も無いぞ!!』

 

一夏

「…え?」

 

デュノア社長

『織斑千冬が【ブリュンヒルデ】と呼ばれていようとそれは所詮『()()()()()』にすぎん!彼女自身は権力と呼べる物を持ってはいないのだ!!仮に彼女が【ブリュンヒルデ】の名を使ってきても『称号と権力は違う』と言えば簡単に追い返すことが出来る!!君はその年になってそんな事も分からないのかね!!!』

 

一夏

「うっ…ううっ…」

 

デュノア社長

『例え【ブリュンヒルデ】の名前に権力があってもそれを持っているのは織斑千冬個人だ!君自身が持っている訳では無い!姉弟と言えど彼女の権力を君が使える道理は無い!!』

 

一夏

「!?」

 

デュノア社長

『それとも君自身は一企業に意見出来るほどの影響力を持っているのかね!もしくは意見が言える程の偉業を成したのかね!!』

 

一夏

「…それは…」

 

デュノア社長

『私の知る限り君からそう言った話を聞いた事は無い!男でISを動かせると言うのはある意味偉業だが、それもただ珍しいと言えばそれで終わりの話だ!』

 

一夏

「!?…珍しい…(鈴と…同じ事を…)」

 

デュノア社長

『君は娘の一大事に…一つの企業の存亡がかかった問題に…そんな無責任な考えで関わろうとしたのか!何も考えずに口を挟もうとしたのか!馬鹿か君は!!対策一つ考えもしないで関わられてもこちらは余計な混乱が起きるだけだ!!呆れて物も言えん!!』

 

一夏

「ぐっ…で、でも、もう終わったんだからいいじゃないか!!シャルルは救われたんだからそれで良いだろ!!」

 

 デュノア社長に言い返せない一夏はとうとう逆ギレして喰ってかかった

 

シャルル

「い、一夏!?」

 

デュノア社長

『それが君の答えか…いいだろう…確かに君の『()()』が入る前に終わった事だしな!私もこれ以上君と話していると気が変になりそうだ!君との話はもう終わりにしよう!!』

 

一夏

「なっ!?じゃ、邪魔!!俺が…邪魔者だと!!」

 

 デュノア社長から邪魔者と言い放たれた一夏は怒りで顔を真っ赤にしていた

 だが、一夏がこのように言われても仕方の無い事でもあった

 一夏が何かしら対処法を考えていればデュノア社長もココまでは言わなかっただろうが、残念ながら太一と違い何も対策を考えずに口出ししようとしていた一夏はデュノア社長からすれば余計な混乱を起こすだけのただの邪魔者でしかなかった

 むしろ一夏が介入する前に終わらせる事が出来たのだと思うと心の底から安堵していた

 

デュノア社長

『そうだ!!君との話は終わりと言ったがこれだけは言わせて貰う!この一件に君は何の関わりは無い!何もしていない!何の役にも立っていない!君は自分で任せろと言いながら結局は他人任せにしていただけだ!!そんな君がこの一件を自分で解決したように振舞うのは止めて貰おう!!それは本当の立役者に対する最大の侮辱だ!!』

 

一夏

「た、立役者!?一体誰なんだ!!」

 

デュノア社長

『『()()()』が知る必要は無い!いいかね!今言った事は忘れるな!!!』

 

一夏

「ぶ、部外者!?」

 

 デュノア社長は一夏をこの一件に関係の無い部外者と言い放った

 そして…

 

デュノア社長

『シャルロット、お前はこれからどうするんだ?』

 

シャルル

「え?どうするか…」

 

 先程までの激しい口調から一転して優しい口調でシャルルに話しかけた

 

デュノア社長

『お前がそこにいたいと言うなら残ってもいい。戻りたいと言うなら戻って来るといい。その時は今度こそ親子として暮らそう。どうする?』

 

シャルル

「…僕は…この学園に残っていいですか?」

 

デュノア社長

『構わないよ。そこで青春を楽しむの一興だ。では明日にでも女性として入り直せるように手配しておこう。だがな…』

 

シャルル

「はい?」

 

デュノア社長

『お前の隣にいるその男との恋愛だけは絶対に認めん!!その男と一緒になればお前には不幸な未来しか待っていないだろうからな!!私はお前が不幸のどん底に叩き落とされる姿を見たくはない!!!』

 

一夏

「!?」

 

デュノア社長

『ではシャルロット、今度の夏休みには帰って来なさい。今まで出来なかった分、ゆっくりと話そう。』

 

シャルル

「はい!…僕も…『お父さん』と話す日が楽しみです♪」

 

デュノア社長

『お父さんか…私も楽しみだよ…ではな…』

 

 そう言ってデュノア社長は電話を切った

 すると室内は静寂に包まれた

 

一夏

「………シャ、シャルル…」

 

シャルル

「一夏…お父さんの言った通りなの?」

 

一夏

「え?」

 

 そんな空気に耐えられなかったのか一夏はシャルルに話しかけた

 だが、話しかけられたシャルルの返事は先程までの会話の是非であった

 

シャルル

「君は特記事項の穴に気付いてなかったの?僕の力になるって言いながら何も考えてなかったの?後回しにすれば誰かがなんとかすると思ってたの?どうなのさ?」

 

一夏

「そ、それは…」

 

 一夏は何も答えなかった

 デュノア社長の言う通り一夏は何も考えていなかった

 時間が3年あると思い込み、問題を先送りにしていただけだったのだ

 

シャルル

「そう…本当なんだね…」

 

一夏

「うっ…」

 

シャルル

「…特記事項の穴にも気づかなかったのは僕も同じだし、君の言う事を素直に信じた僕には文句を言う資格は無いけど…これだけは言わせて貰うよ?」

 

一夏

「………」

 

シャルル

「協力してくれようとした事はありがとう…でも、君を信じた僕が馬鹿だったよ…」

 

一夏

「!?」

 

シャルル

「………」

 

 シャルルは最後にそう言って部屋から出て行った

 残された一夏は…

 

一夏

「………何でだよ…何で…こんな事になってんだ?…俺は…何も間違えて無かった筈なのに…正しい事をしていた筈なのに…何で…」

 

 自分の行動が正しいものだとまだ思っていた

 デュノア社長から言われた事に未だに納得していなかったのだ

 その後、戻ってきたシャルルとの間には一切の会話が無いままその日は過ぎて行ったのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 更に一夜明け、その日も自習となっていたがHRだけは行うとして全員がクラスに集まっていた

 そしてそこには…

 

シャルロット

「シャルロット・デュノアです。改めてよろしくお願いします。」

 

 本来の性別に合った制服を着たシャルル改めシャルロットが自己紹介をしていた

 

真耶

「え~…と言う訳でデュノア君は本当はデュノアさんでした…」

 

生徒1

「え?デュノア君って女だったの!?」

 

生徒2

「オカシイと思った!!」

 

生徒3

「美少年じゃなくて美少女だったわけ!?」

 

 案の定クラス中で混乱が起きていた…

 ただし、シャルロットの正体を知っていた太一、マドカ、セシリアの3人は教師3人と一緒で落ち着いて成り行きを見守っていた

 その後、全員が落ち着くまで10分以上かかり、HRが終わったのは他のクラスよりもかなり遅れたのは言うまでも無かった

 




 <予告>

 強欲と怠惰の魔王との戦いから数日

 遂に全ての後始末が終わり、全ての準備が整ったIS学園

 そして再びIS学園に現れた束の口から遂にデジモンの存在が明らかにされるのだった



 次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》

 束の公表!その名はデジモン!!

 今、冒険が進化する!


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