ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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遅くなりました。

機体設定②に【ガルダ・ドランザー】と【ワー・フェンリル】

登場デジモン紹介に【コロモン】【グレイモン】【メタルグレイモン】【スカルグレイモン】

追加しました



第061話:暴走IS!銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)!!

 

千冬

「全員揃っているな?」

 

 確認を取る千冬にその場の全員が頷いた

 現在、太一を含めた専用機持ち達と千冬、オータム、真耶は【月花荘】の一番奥の一室を借りてそこに集まっていた

 部屋の中には大量の機材が持ち込まれており、即席の指令室の様になっていた

 尚、この部屋には『専用機を持つ生徒』のみが来るように言われているので当然の事ながら専用機を持たない箒はいない

 だが、それでもついて来ようとしたのは言うまでもないのだが、千冬とオータムによってそれは阻止されていた

 

千冬

「現状を説明する。」

 

 すると大型の空中ディスプレイが表示され、千冬はそれを見ながら説明を始めた

 

千冬

「2時間程前、ハワイ沖で稼働試験中だったアメリカとイスラエルが共同で開発した第三世代型の軍用IS【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】が突如暴走を起こし、現在こちらに向かって飛行中との事だ。」

 

太一

「こちらに向かってか…まさかそのISを『学生』の俺達で止めろとか言うんじゃないよな?」

 

千冬

「…そうだ…」

 

専用機持ち

「ええっ!?」

 

 太一の言葉を肯定する千冬にマドカ達は驚きの声をあげた

 そんな中、太一は冷静に考えを巡らせていた

 

太一

「何故俺達にそんな事をやらせる?これはアメリカとイスラエルの問題だ。無関係の俺達が介入すれば国際問題になりかねんぞ?」

 

千冬

「確かにお前の言う通りだ…だが【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】…取り合えず【福音】と呼ぶが、奴は現在音速飛行中で向こうにある他のISでは追っても間に合わないそうだ…それに【福音】はこのまま進むと私達のいるこの場所からおよそ2Km先の海上を通過する事が分かった。」

 

太一

「それで一番近くにいる俺達に対処するように指示が来たわけか…面倒な事を…」

 

 太一の一言に全員が頷いた

 ただでさえIS学園では今迄の太一と【七大魔王】の戦いで教師も生徒も精神的に参って来ていたのだ

 その為、1年の生徒達はこれを機会にたっぷり羽を伸ばそうとしていた

 その折角の臨海学校が潰されたのだ

 太一でなくとも面倒と言いたくもなる事だった

 

千冬

「言うな…私だって同じ気持ちだ…だが既にその2国からIS委員会と学園を通して私達に【福音】を止めるように指示が来ている…私達でやるしかない…」

 

全員

「はぁ~…」

 

 千冬がそう言うと全員が盛大な溜息を吐いた

 

太一

「…自分達の失敗を他国に尻拭いさせるとは…大国ゆえの余裕か…それともそんな事も分からない馬鹿なのか…」

 

オータム

「そのどっちかだろうな?」

 

太一

「まあいい…国からの依頼なら余程の事が無い限り問題は起きる心配は無い。仮に失敗しても未成年の俺達にやらせる時点で既に問題だ。余程の馬鹿でも無い限り連中も何も言えんだろ。」

 

千冬

「そうだな…もしそうなったら私の方から委員会を通じて抗議してやるから安心しろ。他の国から白い眼で見られる事になるだろうな。」

 

太一

「…ならやるか…それでその【福音】とやらがココに来るまで後どのくらいの時間がある?」

 

 だが、齢95歳にして外交官をしていた太一からすればこの依頼は外交問題大有りな依頼なので失敗したとしてもアメリカとイスラエルが逆に追い詰められるだけだと見抜いていた

 その為、太一が気を取り直す様にするとそのまま作戦会議が始まった

 

千冬

「およそ50分後の計算だ。」

 

マドカ

「50分か…余り時間は無いな…」

 

ラウラ

「2Km先と言うなら目的地に着く時間はそうかからないが…」

 

「問題はそのISのスペックよね?」

 

 次々に意見を述べていく専用機持ち達だが…ただ一人状況に着いて行けていない人間がいるが誰もそいつを気に留めていなかった

 

セシリア

「織斑先生、目標の詳細なスペックデータを要求します。」

 

千冬

「分かった。ただし、これは2ヶ国の最重要軍事機密の為、情報が漏洩した場合、全員に査問委員会による裁判と2年以上の監視が付くからな。」

 

セシリア

「了解しました。」

 

 セシリアが【福音】のデータを要求したのでそれによる情報の漏洩に関する注意をした後、千冬はデータを表示した

 

セシリア

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型…わたくしのISが一番近いでしょうか?」

 

「そうね、攻撃と機動に特化した機体…セシリアの【ブルー・ドレイク】が一番近い感じね…」

 

シャルロット

「問題はこの特殊武装だね?どんなものか分からないけど軍用ISだからかなりの曲者だと思うよ?」

 

ラウラ

「ああ、それにこのデータでは近接性能が未知数だ。それにどんな能力を持っているのかも分からん。偵察は行えないのですか?」

 

千冬

「無理だな…目標は超音速飛行を続けている…接触はこちらに来た1回だけだ。」

 

マドカ

「1回だけか…さてどうするか…」

 

 それぞれが各々の意見を交換する中…

 

一夏

「………」

 

 未だに状況が呑み込めずにいる一夏はただ突っ立っているだけだった

 そんな一夏を放置し会議は作戦内容を決める所まで来ていた

 

オータム

「それでどんな作戦で行く?」

 

千冬

「そうだな…八神、お前はどんな作戦がある?」

 

 すると千冬は太一に意見を聞いて来た

 

太一

「俺か?…とりあえず3つだな。」

 

 そう言って太一は指を3本立てた

 

千冬

「3つか…私も同じ数だけ考えたが…恐らく同じだろうな?」

 

太一

「ああ、まず一つはマドカ、セシリア、鈴の3人に進化状態の【Dシリーズ】で接近して止めるってところだな。」

 

マドカ

「私達が行くのか?」

 

 これが一つ目の作戦

 【エヴォリューションプログラム】によって進化したマドカ、セシリア、鈴の3人に行って貰うと言うものだった

 進化後の姿なら音速飛行を続ける【福音】にも十分追いつけるだろうとの判断からだった

 

千冬

「そうだ…二つ目は…コレが一番確実な方法だな…」

 

 そう言いながら千冬は太一を見た

 それに釣られるようにマドカ達も太一に視線を向けた

 

太一

「…やっぱり俺が行くのか?」

 

千冬

「お前に行って貰うのが一番確実で早いだろ?」

 

 その言葉に全員(一夏以外)が頷いた

 要するに二つ目の作戦とは太一一人で片づけて貰う事だった

 

「それに【福音】ってのがどんなに速くても神速の聖騎士って言われている【アルフォースブイドラモン】と比べれば天と地ほどの差があるでしょ?」

 

千冬

「私も同意見だ。正直この指令は面倒だとは思ったがお前が行けば昼前には片が付くだろうと考えている。」

 

 作戦を提案しながらも千冬は太一に任せる気満々だった

 

千冬

「それに接触は1回と言ったが【アルフォースブイドラモン】のスピードなら【福音】への接触も何度も行えるだろ?」

 

太一

「まあそうだが…やっぱり俺が行くしかないか…」

 

真耶

「あの、ちなみに最後の3つ目はどんな作戦なんですか?」

 

 作戦は太一に任せる方向で進んでいった時、真耶が最後はどんな作戦か聞いて来た

 それを聞いた瞬間、太一と千冬は何とも言えない表情に変わった

 そして…

 

太一

「三つ目は…一夏を行かせると言うものだ…」

 

 太一は凄く言いづらそうにしながら三つ目の作戦を話した

 

一夏

「俺!?」

 

 今迄蚊帳の外だった一夏の名前が出た事に本人は驚きながらも身を乗り出した

 最後の作戦とは一夏を中心とした作戦だったのだ

 

ラウラ

「もしかして【零落白夜】の一撃か?」

 

太一

「ああ、だがそうなると一夏を目的地に届ける必要がある。この三つ目の作戦は文字通り一撃で終わらせるものだからな…その為には可能な限り【零落白夜】にエネルギーを回す必要がある…」

 

一夏

「…俺が…」

 

 自分を中心にした作戦があると知り一夏は自分の活躍の場が来たと思った

 だがそんな一夏を見て千冬は後ろにいる真耶を睨んだ

 その眼は暗に『余計な事を言うな!』と物語っていた

 そしてそんな千冬の目を見て真耶にも千冬の言いたい事が伝わり何度も頭を下げていた

 2人がそんなやり取りをしている時…

 

太一

「そう言えば織斑先生、一つ聞き忘れた。」

 

千冬

「何だ?」

 

太一

「【福音】の操縦者は今どんな状態だ?」

 

専用機持ち

「あ!?」

 

 太一のその質問に全員がそれに気付いた

 ISが勝手に暴走飛行している状態で操縦者の安否は重要な事だった

 

千冬

「そうだったな…搭乗者の名前は『ナターシャ・ファイルス』…アメリカのテスト操縦者でかなりの腕前を持つ。報告によれば、【福音】が暴走した直後から連絡が取れなくなったそうだ。恐らく今は意識を失っているんだろう。」

 

太一

「…知り合いか?」

 

千冬

「ああ、何度か会った事がある。アイツは純粋にISで空を飛ぶ事が好きな奴でな、何時か宇宙も飛びたいと言っていた…」

 

ラウラ

「教官の知人でしたか…しかし操縦者がそんな状態なら三つ目の作戦は止めた方がいいですね。」

 

一夏

「!?…な、何でだよ!!」

 

 操縦者の事を聞くとラウラが三つ目の作戦の撤回を言い出した

 驚く一夏だが、セシリア達も同じ考えなのかラウラの意見に頷いていた

 

「当たり前でしょ?相手が無人機だって言うならあんたに任せてもいいけど中に人が乗ってて、それも意識が無いんじゃあんたに任せられる訳無いでしょ?」

 

一夏

「ど、どう言う意味だよ!」

 

 自分に任せてはおけないと言う鈴の言葉の意味を一夏は理解出来なかった

 

「そのままの意味よ。あんたを行かせたら中の人ごと斬りかねないって言ってんのよ。」

 

一夏

「なっ!?」

 

「大体アンタ同じような事を私にもしたでしょうが?まさか忘れたの?」

 

一夏

「!?」

 

 鈴が言っているのは【デーモン】との戦いの事だった

 だが鈴の疑問の通り一夏はまたもや忘れていた

 

「そんな奴に任せられる訳無いでしょ?…織斑先生、ココは太一に行って貰う作戦がいいと思います!」

 

千冬

「そうだな…やはりここは「俺が行く!!!」…は?」

 

 千冬が太一に任せようと言おうとした時、一夏が自分が行くと言い出した

 そんな一夏の発言に千冬だけでなく部屋にいる全員が目を点にしていた

 

セシリア

「貴方先程鈴さんが仰った事聞いていなかったのですか?貴方に任せるのは危険だと言ったのですよ?」

 

一夏

「そんな事無い!!俺と【白式】なら必ず成功させてみせる!!」

 

全員

「………」

 

 セシリアが代表して止めるのだが、一夏は根拠の無い自信に満ちていた

 その姿に全員は言葉を失い…

 

全員

(何処からこんな自信が沸いて来るんだ?)

 

 …と同じ事を考えていた

 

千冬

「悪いが二つ目の八神一人に任せる作戦で行く。八神以外の者はバックアップに回れ。」

 

専用機持ち達(一夏以外)

「了解!!」

 

 一夏に任せる訳にはいかないので千冬は当初の考えの通り太一に任せる作戦で行くと決定した

 マドカ達も異論は無い様で素直に返事をしたのだが…

 

一夏

「俺が行くって言ってるだろ!!」

 

 この男だけは納得していなかった

 どうしても自分がやると言い続ける一夏を見て太一と千冬は『こんな事なら作戦は3つあるなんて言わなければよかった…』と後悔していた…

 

千冬

「お前と八神ではどっちが成功する確率が高いか分からんのか?」

 

 仕方無いので一夏を諦めさせる為、成功率が高い方を選ぶのが当たり前と言う千冬だった

 

一夏

「ぐっ…で、でも今回はデジモンが相手じゃないんだろ!!だったら俺にだって出来る筈だ!!」

 

千冬

「むっ…」

 

 だが、それを言われてしまうと千冬も少し考えてしまう

 デジモンが起こす事件とISが起こす事件…解決する場合、どちらが簡単かと言われればISの事件が遥かに簡単だった

 

千冬

「う~む…」

 

 それに行きつくと千冬は再び考え始めた

 そして一夏を見ると…

 

千冬

「…本当に出来るのか?」

 

全員(一夏以外)

「え!?」

 

 三つ目の作戦に変更する発言をしてきた

 それには一夏を除く全員が目を見開いた

 不安要素しかない一夏に人命救助を任せると言うのだ

 驚いて当然だった

 

一夏

「千冬姉!!」

 

千冬

「織斑先生だ!!!」

 

 ガンッ!

 

一夏

「ウゴッ!?」

 

 一方で自分を指名された一夏は大喜びしていたがいつもの様に公私の区別が出来ずぶん殴られた

 

一夏

「つつっ…そ、それで俺に任せて貰えるのか!?」

 

千冬

「ああ…但し!お前が失敗したと判断した場合は八神を出す!いいな!」

 

一夏

「いいぜ!太一にまで回さねえよ!」

 

 自分に任された事でやる気なる一夏だった

 

オータム

「千冬!お前本当にアイツに任せる気か!!」

 

 だが、そんな一夏に任せると判断した千冬にオータムが問い詰めた

 

千冬

「そのつもりだ。」

 

オータム

「けどよ?」

 

千冬

「後詰めに八神を待機させればアイツが失敗しても挽回する事は可能だ。それにな…」

 

オータム

「それに?」

 

 すると千冬は一夏の方を見て自分達の会話を聞いていない事を確認した

 当の一夏ははしゃぎまくっていたが、周りの太一達は不安な目で一夏を見ていた

 そして千冬は小声で話し始めた

 

千冬

「(アイツに現実の厳しさを教えるいい機会だと思ってな?)」

 

オータム

「(はぁ?確かにそうだが…コレはやり過ぎじゃねえのか?)」

 

千冬

「(アイツにはやり過ぎなぐらいが丁度いい。デジモンが相手だとアイツは言い訳をして現実を受け入れようとはしない。だが【福音】が相手なら言い訳は出来ん筈だ。)」

 

オータム

「(まあ…確かにそうだが…)」

 

千冬

「(ナターシャが無事に救出されたら私から謝罪しておく。何かあれば責任は私が取る!)」

 

オータム

「(はぁ、分かった…だが責任を取るなら折半だ。)」

 

千冬

「オータム!?」

 

 驚く千冬にオータムは口角をあげていた

 

千冬

「…スマナイ…」

 

オータム

「気にすんな!それに太一がいるんだ。無事に終わるだろ?」

 

千冬

「フッ…そうだな…」

 

 その後、一夏を目的地まで送り届ける人員を選ぶ事になったのだが、太一を後詰にする以上それが可能なのはマドカ、セシリア、鈴の3人だった

 ラウラとシャルロットの【Dシリーズ】はまだ調整が済んでいない上に、【エヴォリューションプログラム】によってどのような進化を遂げるのか分からないので外れる事になる

 そして話し合いの結果、一夏と同行するのは妹のマドカに決まった

 鈴では一夏との折り合いが悪すぎるので却下された

 残ったマドカとセシリアでは連携が取り易いのは妹のマドカが一番だという事で決定したのだった

 そして作戦が全て決まると千冬は隠れて話を聞いていた束を呼び出し、【ライズ・ドレイク】と【白式】の調整を頼み、準備に取り掛かった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

一夏

「よし!行くぞマドカ!!」

 

マドカ

「あ、ああ…」

 

 無駄にやる気に満ちている一夏の姿にマドカだけでなくその場にいる全員が不安しか感じなかった

 その為…

 

千冬

『マドカ…』

 

マドカ

「ん?」

 

 千冬が秘匿回線を使ってマドカに連絡を入れた

 

千冬

『一夏がヘマをやらかす可能性が高い…お前は可能な限り一夏のサポートを頼む。』

 

マドカ

「…分かっている…私も同じ気持ちだ…」

 

千冬

『それならいい…作戦の続行が不可能と判断したらお前の判断ですぐに引き返せ。一夏の事だから無理にでも続けようとするだろうがその時は力づくで黙らせても構わん。その後は八神に出て貰ってすぐに終わらせる。』

 

マドカ

「了解。」

 

 千冬からの指示にマドカも了承した

 マドカが千冬とそんな話をしている事を知らない一夏は…

 

一夏

「よっしゃー!織斑一夏!【白式】出るぜ!!」

 

 無駄に元気な状態で飛び上がった

 

マドカ

「はぁ…じゃあ行って来る…」

 

 その後を追ってマドカも飛び上がった

 そしてマドカは【ライズ・ドレイク】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)を発動させ【シャイン・ドレイク】に進化させると一夏を乗せて飛び立っていった

 2人が飛んで行った方角を見て全員が不安しか感じなかった

 そして千冬はこの作戦に決定した事を後になって後悔するのだった…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 その一方で…

 

「………」

 

 同じように二人が飛んで行った方角を見つめる箒がいた

 その眼は光が無く、虚ろな表情をしていた…

 

 




 <予告>

 銀の福音を止めるため出撃する織斑兄妹

 そんな二人に暴走した銀の福音は容赦ない攻撃を浴びせてくる

 その時、二人の戦う場で一隻の船舶を発見した



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 機竜撃墜!?

 今、冒険が進化する!


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