ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第066話:折れた雪片(プライド)

千冬

「【傲慢の魔王ルーチェモン】…遂に出て来たか!!」

 

 指令室では箒を取り込んで復活した【ルーチェモン】に全員が緊張状態になっていた

 だが…

 

「…箒ちゃん…やっぱり…箒ちゃんが【傲慢の魔王】だったんだ…」

 

 束のショックが一番大きかった

 事前に太一から箒が【ルーチェモン】を宿す可能性が高いと聞かされていたが、それでも束は箒は違うと心の隅で信じていた

 だが、前日の一件や無断出撃の事で束も諦め覚悟を決めていた

 しかし、それでも箒が【ルーチェモン】へと変わった事は覚悟していてもショックは大きかった

 

千冬

「束…」

 

 そんな束に誰も声を掛けられなかった

 しかし…

 

「ちーちゃん…大丈夫だよ…」

 

千冬

「え?」

 

「確かにショックだったけど…それならそれで今迄と同じように助け出せばいいだけだよ…だから私達はたっくんとアッくんのサポートを頑張ろう!!」

 

千冬

「…ああ!そうだな!!」

 

 束のその言葉に全員が頷いた

 箒は取り込まれただけでまだ死んではいない…今までの4人の様に太一が助けられるように自分達も出来る事をするのだと改めて意気込むのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

一夏

「…【ルー…チェ…モン】…」

 

 一方、一夏は目の前の光景に頭の処理が追いつかず混乱していた

 だが、そんな一夏の耳に…

 

ルーチェモンFD

『フム、実に心地よい気分だ…流石はこの私が選んだ依り代…これ程【傲慢】な人間は世界中探してもいないだろうな…』

 

一夏

「!?」

 

 【ルーチェモン】の言葉が届いた

 

一夏

「今、何て言った…箒が…何だと…」

 

ルーチェモンFD

『ん?聞こえなかったのかね?この依り代は『世界でもっとも【傲慢】な人間』と言ったのだ。この【傲慢の魔王】が保証してあげよう。』

 

一夏

「世界一…だと!?」

 

ルーチェモンFD

『そうだ、ココまで来るとこの人間は『私の為』に存在すると思えてきたな。いや、恐らくそうなのだろう。この依り代は私の『糧』となる為に生まれたのだと確信したよ。』

 

一夏

「お前の為だと…ふ、ふざけるなあああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 箒を自分の為に存在する人間と言い張った【ルーチェモンFD】にキレた一夏は斬りかかろうとした

 

太一

「落ち着きなさい!!奴の相手は私がします!君は下がりなさい!!」

 

 だが、それを太一が止めた

 しかし…

 

一夏

「うるせえええぇぇぇっ!!!コイツは俺が倒すんだ!!!【福音】と一緒に俺がぶった切ってやるんだ!!!お前こそ邪魔すんじゃねえぇぇぇっ!!!」

 

 一夏が素直に言う事を聞く筈も無かった

 【雪片】を振り回しながら太一の手を振り払うと一夏はそのまま【ルーチェモン】に斬りかかって行った

 太一達も急いで一夏を止めようとしたが…

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

「La~♪」

 

 ドガガガガガガガガガガガガッ!!!!!

 

全員

「!?」

 

 【ルーチェモン】の前にいた【福音】は向かって来る一夏を攻撃せずにそのまま通してしまった

 だが、後に続く太一達に対して【銀の鐘(シルバー・ベル)】を撃ってきた

 

太一&ウォーグレイモン

「邪魔(です)(だ)!!!」

 

 しかし、軍用とは言えただのISでしかない【福音】では太一とウォーグレイモンを止められる筈も無く二人は【銀の鐘(シルバー・ベル)】を躱し【福音】を抜いた

 その際…

 

太一

「貴方達は事前に言った通り【福音】をお願いします!!」

 

セシリア&鈴&ラウラ&シャルロット

「了解!!!」

 

 太一は4人に【福音】の相手を頼んで一夏を追いかけた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

一夏

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

 【福音】を抜いた一夏は【零落白夜】を発動させ【ルーチェモン】に斬りかかった

 だが…

 

 パシッ!

 

一夏

「何っ!?」

 

 【ルーチェモン】は【零落白夜】の光を纏った【雪片】を指で挟んで止めていた

 

一夏

「ク、クソッ!!は、放せ!!」

 

 一夏は力一杯【雪片】を引っ張るが【ルーチェモン】は指2本で挟んでいるだけだと言うのにビクともしなかった

 

ルーチェモンFD

『フム、こんな『玩具』で私が斬れると思っているのかね?』

 

一夏

「お、玩具だと!!この【雪片弐型】は千冬姉が世界を取った時と同じ剣だ!!コイツの【零落白夜】でお前も【福音】もぶった斬ってやる!!」

 

 そう言って一夏は【雪片】を再び引き抜こうとするがやはりピクリともしなかった

 一方で【ルーチェモン】は一夏の言葉に呆れ果てた

 

ルーチェモンFD

『フッ…これは滑稽だ。君はまだその剣の能力を理解していないのかね?』

 

一夏

「な、何!?」

 

 【ルーチェモン】は憑りついていた箒の記憶から【雪片】や【零落白夜】に関する情報を得ていた

 その為、一夏が【零落白夜】の事を理解していない事に【ルーチェモン】までも呆れていたのだ

 

ルーチェモンFD

『その剣の力【零落白夜】とか言ったかね?確かにその力は君の使っているISとか言う玩具に対しては絶大な力を持つ。そう、『()()()()()()』はね?』

 

一夏

「え?」

 

ルーチェモンFD

『まだ分からないのかね?やれやれ、道化は頭も悪いのか…なら私は親切だから教えてあげよう。その剣はISには有効だがデジモンである私には『何の効力も持たない』のだよ。』

 

一夏

「!?…こ、効力が、無いだと…」

 

ルーチェモンFD

『当然だろう?その剣はISの絶対防御とやらを斬り裂いてSEを削るのだろう?私達デジモンには絶対防御もSEも存在しないのだ。つまりこんな物をいくら振り回した所で君はエネルギーを無駄遣いしているだけで私達デジモンには痛くも痒くも無いのだよ。現に私はこの剣を掴んでいるがダメージを受けてはいないだろ?』

 

一夏

「!?」

 

ルーチェモンFD

『だから言っただろう?私にとってこんな物は玩具でしかないのだよ。玩具でこの私を斬る事など出来ないのだ。』

 

一夏

「そ、そんな…」

 

 【ルーチェモン】に言われ漸く一夏も【零落白夜】がデジモンには通じないと理解した

 だが、それに気付くのが余りにも遅すぎた

 その時…

 

ルーチェモンFD

『さて、これ以上は道化の相手は出来ない…私の戦うべき相手が来たからね。』

 

一夏

「え?」

 

太一

「一夏ぁぁぁっ!!」

 

一夏

「!?…た、太一…」

 

 太一とウォーグレイモンが遅れてやって来た

 だが一夏は2人を見ると…

 

一夏

「は、放しやがれ!!お前をぶった切ってやる!!」

 

 再び【雪片】を引き抜こうとするが一夏がどれだけ力を入れてもピクリともしなかった

 

ルーチェモンFD

『私を斬る事は出来ないと言っただろう?もう忘れたのか?』

 

一夏

「うるせえええぇぇぇ!!お前をぶった切って俺の力を見せつけてやるんだ!!放せ!!俺に斬られろおおおぉぉぉっ!!!」

 

 太一が来た事で一夏は再び【ルーチェモン】を倒そうと足掻きだした

 だが、その足掻きももはや自分の見栄を張る事しか考えていない只の悪足掻きでしかなかった

 そして【ルーチェモン】も太一とウォーグレイモンが来た以上一夏に付き合うつもりは無かった

 その結果…

 

 バキンッ!

 

 【ルーチェモン】は軽く指に力を入れて【雪片】をへし折った

 

一夏

「…え?」

 

 折られた【雪片】の刀身はそのまま海に落ちて行った

 一夏は【雪片】を折られた事を理解出来ずに呆けていた

 そして、一呼吸おいて目の前の現状を頭が理解した

 

一夏

「…【雪片】が…お、お、お、折れた…」

 

 一夏にとって【雪片弐型】は自分の力の象徴であり、最強と信じてやまない物だった

 周りが何と言おうと、相手がISでもデジモンでも自分の【雪片】なら倒せない物は無いと信じきっていた

 それが目の前で簡単に折られた事で一夏のプライドもへし折られた

 【雪片】が折られたショックで一夏は震えていると…

 

ルーチェモンFD

『では最後に君には私の準備運動になって貰って退場して貰おう。』

 

一夏

「!?」

 

 【ルーチェモン】の言葉が一夏の耳に届いた

 

一夏

「あ、ああ…く、来るな…来るなあああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 それを聞いた瞬間、一夏は半狂乱となった

 そのまま、折れて使い物にならなくなった【雪片】を振り回しながら【ルーチェモン】から逃げだした

 だが、【ルーチェモン】が逃がす筈も無く、一瞬で一夏の目の前に回り込んだ

 そして…

 

ルーチェモンFD

『喰らいたまえ…《パラダイスロスト》!!!

 

 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

 

 一瞬で一夏の懐に入ると拳による無数の乱撃を繰り出した

 

一夏

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 【ルーチェモン】の乱撃に一夏は声をあげる事も出来ずに喰らい続けていた 

 

 ドガッ!

 

 その後、一夏を上空に蹴り上げると【ルーチェモン】は翼を広げ一夏に向かって飛び上がった

 太一とウォーグレイモンが【ルーチェモン】を止めようとしたが【ルーチェモン】は2人を躱し、蹴り上げた一夏に追い付くと、一夏を逆さまにして両脇に足を入れ固定すると、両足を掴み、そのまま真下にある小さな小島に向かって急降下して行った

 

ルーチェモンFD

『フッ…』

 

 その際、前髪をかき上げるようなポーズをしていた

 

一夏

「うああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

 

 一方、【ルーチェモン】に体を固定され身動き出来ないようにされた一夏は眼前に近づく地面に悲鳴を上げる事しか出来なかった

 

 ドコオオオオオオォォォォォォォンッ!!!

 

 【ルーチェモン】はそのまま一夏を地面に頭から叩き付けた

 これが【ルーチェモン】の必殺技《パラダイスロスト》だった

 一夏が地面に叩きつけると、《パラダイスロスト》の乱撃でボコボコにされた【白式】が剥がれ落ちた

 そして【ルーチェモン】は一夏を気にする事も無く再び飛び上がった

 一方で《パラダイスロスト》を喰らった一夏は…

 

一夏

「がっ…ぁぁっ…」

 

 【ルーチェモン】が離れると同時に破損し剥がれ落ちた【白式】が量子変換され消えた

 そのまま仰向けに倒れた一夏は痙攣を起こし呻き声をあげていたが辛うじて生きてはいた

 だがそんな一夏を見て…

 

ルーチェモンFD

『おや?妙だな?準備運動も兼ねて手を抜いたのは確かなのだが…まだ生きている…何故だ?』

 

 一夏が生きている事に首を傾げていた

 

ルーチェモンFD

『まあいい、道化が生きていようとどうでもいい事か…さて待たせたね?少々物足りないが準備運動は終わったよ。』

 

太一&ウォーグレイモン

「クッ!」

 

 2人は浜辺で気絶している一夏を横目に見ながら【ルーチェモン】との戦いを始めた

 

 




 <予告>

 一夏が片付けられている頃、福音と戦うセシリア達4人

 一度は福音を追い詰めるも二次移行(セカンドシフト)した事で戦いは更に激しくなった

 再び福音を追い詰めるもそこに現れるルーチェモン

 ルーチェモンは銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を使い、1体のデジモンを呼び出す福音を鳴らした

 それは太一とウォーグレイモンにとって尤も戦いたくない相手だった



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 悲しき再会!蘇る漆黒の竜戦士!!

 今、冒険が進化する!

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