ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第088話:世界の違い:千冬編

 

 

 騒いでいた束(平行)が大人しくなったので漸く話し合いが始まった

 千冬と束はまず、自分達が住む世界が更に別の世界から来た【七大魔王】と呼ばれるデジモンと言う生物から侵略を受けている事を話した

 そして、自分達が何故平行世界へと来た理由が平行世界を自由に移動出来るデジモン…【パラレルモン】によってこちらの世界に飛ばされた事を話した

 平行世界の面々は千冬達の余りにも荒唐無稽な話を最初は信じられなかったが、目の前に千冬と束、鈴と言う同一人物がいる以上信じるしかなかった

 

千冬(平行)

「…侵略…何故そっちの世界はそんな事に…」

 

千冬

「…八神曰く…私達の世界は侵略しやすい世界だそうだ。」

 

全員(平行)

「!?」

 

千冬

「私達の世界は束の造ったISが原因で腐り果てている…束が言うには100年もすれば人類は滅びるそうだ…そんな世界なら侵略するのも容易いだろうと目を付けられてしまった訳だ…こうなったのは私達の自業自得の結果だな…」

 

全員(平行)

「………」

 

 侵略された理由を聞いて平行世界の面々は言葉を失った

 千冬の言った事はデジモンによる侵略は別にしてもそれ以外はこの平行世界にも当て嵌まる事だったからだ

 つまり一歩間違えばこちら側に【七大魔王】が現れていたのだ

 

「でもね?そんな【七大魔王】を横行を許さない存在がいるんだよ。」

 

千冬

「それがデジモン達の住む世界【デジタルワールド】を管理する『神』…【イグドラシル】だ。」

 

全員(平行)

「神!?」

 

 『神』と言う単語に平行世界の全員が目を見開いた

 何しろあの織斑千冬が神なんて単語を口にするとは思ってもみなかったからだ

 

「そ!【イグドラシル】は【デジタルワールド】の管理で動けない自分に代わって【七大魔王】を倒せる人材を私達の世界に送り込んでくれたんだ。」

 

千冬

「それがこの男、八神太一だ。私達がさっき乗ってきたデジモンはこの八神のパートナーでメタルグレイモンと言う。その後小さくなった姿がアグモンと言う。」

 

千冬(平行)

「…何故名前や姿が変わるんだ?」

 

「それはデジモンの生態を説明しないといけないから後にしてね?」

 

千冬(平行)

「ムゥ…分かった…」

 

 一先ず平行世界組が納得すると千冬達は説明を続けた

 そして、平行世界では現在、臨海学校の真っ最中だが太一達のいた世界ではすでに夏休みに入っている事を話し時間がズレている事も話した

 それを聞いて千冬(平行)は何故あの時、鈴が自分のいる場所を知っていたのかを理解した

 そのまま話は進み、【七大魔王】はすでに【暴食】と【色欲】以外の5体を倒している事を話した

 その中で【七大魔王】がそれぞれの司る大罪を持つ人間に憑りついていると説明され、その憑りつかれていた人間と言うのが今この場にいる箒、セシリア、鈴、ラウラ、シャルロットの5人だったと聞かされ平行世界の当人達は当然最初は信じなかったのだが、太一からその時の映像を見せられ…

 

セシリア(平行)

「わ、わたくしが…あんな巨大なワニに…」

 

鈴(平行)

「…何なのよ…あの悪魔…」

 

ラウラ(平行)

「【強欲】…私は…それほどまで欲深かったと言うのか…」

 

シャルロット(平行)

「ハ、ハハッ…【怠惰】…怠け者か………その通りじゃないか…」

 

箒(平行)

「私が世界一【傲慢】な人間!?う、嘘だ!?嘘だあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 全員がショックでその場から崩れ落ち、暫く立ち直れなかった

 中でも【傲慢の魔王ルーチェモン】から『世界一の【傲慢】』のお墨付きを貰った箒が一番凹んでいた

 尚、太一が見せた映像には向こうの一夏の醜態はカットしておいた

 魔王の依り代の5人は仕方無いで済ませる事も出来るが一夏の場合は『素』でアレなので見せない方がいいと判断した

 そして、一頻り太一達の事情を話し終えると…

 

千冬(平行)

「それでお前達はどうやって元の世界に帰るんだ?方法はあるのか?」

 

太一

「【パラレルモン】を倒せば帰れる。」

 

 帰還方法を聞かれたが、それは【パラレルモン】を倒せばいいだけなのでその事を話した

 

千冬(平行)

「そう、か…まさか平行世界なんてものが存在していたとはな…」

 

 太一達の説明が終わり、千冬(平行)は改めて今の状況を考えていた

 すると…

 

千冬

「そうだな………なあ、もう一人の私…」

 

千冬(平行)

「何だ?」

 

千冬

「少し2人だけで話がしたい。いいか?」

 

千冬(平行)

「構わないが?」

 

千冬

「では向こうで話そう。八神、束…少し外れるぞ。」

 

「いってらっしゃ~い♪」

 

太一

「………ああ…」

 

 千冬はそう言って平行世界の自分を連れて行った

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 岩場まで移動すると千冬は近くにあった岩に腰かけた

 

千冬(平行)

「…それで話とは何だ?」

 

千冬

「単刀直入に聞く…この世界の【白騎士事件】…アレを起こしたのは私と束か?」

 

千冬(平行)

「!?…ではそっちも!?」

 

千冬

「そうか…こっちでも私があの事件を起こしていたのか…」

 

 千冬は平行世界の自分のその言葉だけでこちら側でも【白騎士事件】を起こしたのが自分だと分かった

 

千冬

「なあ、もう一人の私…お前の眼にはその手はどう見えている?」

 

 千冬は自分の手を見つめながら聞いて来た

 

千冬(平行)

「どう見えてるだと?…ただの手にしか見えないが?」

 

 平行世界の千冬も自分の手を見ながら答えた

 

千冬

「…そうか…お前には普通の手に見えているのか…」

 

千冬(平行)

「?…ではお前にはどう見えてるんだ?」

 

千冬

「………『血』だ…」

 

千冬(平行)

「え?」

 

千冬

「私の眼にはこの手が真っ赤な血で染まっている様にしか見えない…何故か分かるか?」

 

千冬(平行)

「………」

 

千冬

「私の手はな…あの【白騎士事件】を起こした日から10年…その間にISによって犠牲になった世界中の人々の血で染まっているんだ…」

 

千冬(平行)

「!?」

 

千冬

「もう一度聞く…お前にはその手がどう見える?」

 

千冬(平行)

「………」

 

 平行世界の千冬は千冬に問われもう一度自分の手を見た…

 彼女の瞳に映った自分の手は…

 

千冬(平行)

「…ぁ…ぁ…ぁあっ!?」

 

 千冬と同じように真っ赤に染まっているように見えていた

 

千冬

「…私は元の世界でオ、ベータからさっきと同じ事を言われた…『10年』…その間にどれだけ多くの人達が無実の罪を着せられたと…何の罪も無い人達が殺されたと…どれだけの未来が奪われたと…その人達を殺したのは私と束だと…未来を奪ったのは私だと…そう言われた…」

 

千冬(平行)

「…ぅっ…ぁっ…」

 

千冬

「その日から私の眼には血に染まった手にしか見えなくなった…足元を見れば血溜まりの上に立っているように見えるようになった…この身体はそんな無実の人達の血で染まっているんだ…」

 

千冬(平行)

「………」

 

千冬

「…もう一人の私…私達は…織斑千冬と言う人間は…人から褒められる様な人間じゃ無い…世界中の人間から恨まれ、憎まれる最低なテロリスト…『世界最悪の大量殺戮者』だ…」

 

千冬(平行)

「わ、私は…」

 

 平行世界の千冬は自分は違うと言いたかった…

 だが…その言葉を口に出す事が出来なかった

 

千冬

「お前がこの世界でどうするかはお前の自由だ…自分自身とは言え余所者の私がとやかく言うつもりは無い…だがな…」

 

千冬(平行)

「!?」

 

千冬

「お前も私なら…自分の犯した罪を見つめろ………八神やベータに言われて気づいた私が言っても説得力は無いがな…」

 

千冬(平行)

「………」

 

千冬

「…それに…」

 

千冬(平行)

「え?」

 

千冬

「いや、何でもない…(私とお前の一番の違いはマドカの存在だ…お前は私に比べて身内に自分の正体を知る人間がいないだけ幸せ者だよ…)」

 

 流石に【亡国機業(ファントム・タスク)】にいると言うこちらの世界のマドカの名前は出せなかったが、身内に正体を知る人間がいないと言う意味では平行世界の自分の方が運が良かったと思った

 

千冬

「…私は向こうに戻って束の研究が完成したらアイツと一緒に自首するつもりだ。」

 

千冬(平行)

「じ、自首だと!?」

 

千冬

「…ああ…何も知らない一夏には悪いが…私は罪を償いたい…法の名の下に裁きを受けるつもりだ…その程度で汚れきったこの身体が清められるとは思わないけどな…それでも…それでも私は…」

 

千冬(平行)

「………」

 

千冬

「…私の話はこれで終わりだ…戻ろう…」

 

 千冬はそう言うと返事を待たず一人戻って行った

 残された平行世界の千冬は…

 

千冬(平行)

「………何で…私にそんな事を言うんだ…」

 

 千冬に言われた事…それは平行世界の千冬が今まで目を背けていた事だった

 

千冬(平行)

「………その通りじゃないか…」

 

 千冬に言われ自分が犯した罪の重さを思い知らされていた…

 

千冬(平行)

「…私は………私は………人殺しだったんだ………」

 

 




 <予告>

 千冬がもう1人の自分を連れて行っている間、残った鈴と束も平行世界の自分達と話していた

 話の中で2つの世界の違いが出る中、同じ所も多く見つかって行く

 そんな中、鈴は平行世界の自分や仲間達が一夏をどう思っているのかを問いかけるのだった



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 世界の違い:束と鈴編

 今、冒険が進化する!


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