ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第089話:世界の違い:束と鈴編

 

 千冬が平行世界の自分を連れて行った後、残された太一達に…

 

鈴(平行)

「ねえ…」

 

 平行世界の鈴が話しかけて来た

 

「何?こっちの私?」

 

鈴(平行)

「あのさ、そっちの私が使ってるISの事なんだけど…」

 

「私のIS?【メガロ・ドラグナー】がどうかしたの?」

 

鈴(平行)

「【メガロ・ドラグナー】…うん、それの事なんだけど私のISと違ってたから気になってたの。」

 

 鈴(平行)の用件はISの事だった

 別世界から来た自分が違うISを使っている事が鈴(平行)はずっと気になっていたのだ

 そして、それは一夏達(平行)も同じだった

 

「あ~…そう言えばそっちの私が使ってるのって【甲龍(シェンロン)】だもんね。気になるのは当然か…」

 

全員(平行)

「え!?」

 

「ん?どうかした?」

 

 驚いた顔をしている平行世界の自分達を見て鈴は首を傾げた

 

シャルロット(平行)

「何でこっちの鈴(平行)のISの名前を知ってるの?」

 

 コレが驚いた理由だった

 だが、シャルロット(平行)の問いに対して…

 

「何でって…これ元は【甲龍(シェンロン)】よ?」

 

全員(平行)

「………え?」

 

 簡単に答えた

 

全員(平行)

「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

「五月蠅いわね…」

 

鈴(平行)

「そ、それが【甲龍(シェンロン)】ってどういう事よ!?名前どころか外見まで完全に変わってるじゃない!!!」

 

「それ私も思ったわ~…元の面影無いもんね~…」

 

ラウラ(平行)

「それが本当に【甲龍(シェンロン)】なら誰がそこまでの改造を施したんだ!!!」

 

「誰って…この人。」

 

 ラウラ(平行)の質問に対して鈴が指さしたのは…

 

全員(平行)

「…え?」

 

束(平行)

「………束さん?」

 

 束だった

 

「そっだよ~♪その子のISはこの束さんの最新鋭IS【Dシリーズ】の一機だよ~♪」

 

全員(平行)

「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 束が認めた事で鈴の言った事が事実と分かると、さっき以上の雄叫びを上げた

 

「ホントに五月蠅いわね…」

 

「だね~…」

 

 耳を塞ぎながらそう言う鈴と束

 だが、平行世界の一夏達からすればこの驚きは当然だった

 何しろあの篠ノ之束が何の接点も無い、赤の他人とも言うべき鈴のISを改造したのだからだ

 

束(平行)

「どう言うつもりだお前!!何で束さんがあんなどこの馬の骨のISを改造するんだ!!」

 

 その為、平行世界の束がこちらの束に喰ってかかってしまった…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

セシリア(平行)

「…あの…先程そちらの篠ノ之博士が仰った【Dシリーズ】と言うのは何ですか?…」

 

 2人の束が口喧嘩を始めてしまったので、蚊帳の外になった鈴達は鈴達で話を始めた

 

「あぁそれね?【Dシリーズ】って言うのは博士が『デジモンのデータを元に開発した新機軸のIS』の事よ。今の所私とそこにいるマド、じゃなくアルファのと合わせて5機開発されてるわ。」

 

シャルロット(平行)

「あの子のも【Dシリーズ】だったんだ…」

 

 太一達と離れて静かにしているマドカを見て、ココにやって来た時の事を思い出していた

 

鈴(平行)

「それでデジモンのデータってどう言う事?」

 

「そのままの意味よ。例えば私の【メガロ・ドラグナー】は【メガログラウモン】って言うデジモンをモデルに造られているのよ。」

 

一夏(平行)

「【メガログラウモン】…そいつって強いのか?」

 

「強いと思うわよ?実物を見た事は無いから断言は出来ないけど、太一に見せて貰ったデータではかなり強い部類に入ると思うわ。(『完全体』の中ではね…)言っておくけど【Dシリーズ】は従来のISを遥かに上回る性能を持っているからね。」

 

 【Dシリーズ】について話す鈴…

 だが、鈴の話を聞いて…

 

箒(平行)

「では私の【()椿()】も更に強くなったのだな!!」

 

「え?」

 

 箒(平行)が妙な事を聞いて来た

 それを聞いて…

 

「…【紅椿】?…()()()?」

 

全員(平行)

「え?」

 

 鈴は首を傾げた

 平行世界の面々も鈴の反応を見て同じ様に首を傾げた

 それは束と喧嘩をしていた平行世界の束も同じだった

 千冬や束の説明から向こうの時期はすでに夏休みに入っていると言うのなら、臨海学校で束(平行)が箒(平行)に与えた【紅椿】と言うISの事を鈴は知っている筈だからだ

 だが、こちらの鈴は【紅椿】と言う名前のISの事を知らなかった

 それは知らなくて当然だった

 何故なら、【紅椿】とは本来、束が箒の為に開発していた第4世代のISの事なのだが、【七大魔王】の侵略について聞かされた束は太一のサポートをする為に丁度改造中だったセシリアの【ブルー・ティアーズ】と一緒に開発中だった【紅椿】を急遽マドカ用のISとして造り変えてしまったのだ

 その後、太一によって真人間になった束は箒にISを持つ資格も技術も無いと判断し、それ以降【紅椿】の開発自体を止めてしまったのだ

 その結果、こちらの世界では【紅椿】の名が表に出る事は無くなり、その代わりマドカの【ライズ・ドレイク】と言う名前が世に出てしまったのだ

 

「そう言えばこっちの箒はIS持ってるわね?量産機じゃなかったし、アレが【紅椿】?」

 

 すると、鈴は最初に接触した時の事を思い出した

 

箒(平行)

「そ、そうだ…」

 

「へ~…こっちのアンタって『()()()()()』なのね?」

 

箒(平行)

「…え?」

 

「どうしたの?専用機を持ってるって事は()()()()()なんでしょ?」

 

箒(平行)

「!?…イ、イヤ…それは…」

 

「?」

 

 鈴の問いに箒(平行)は口籠んだ

 専用機とは本来、簡単に手に入る様な物では無い

 鈴も代表候補生になる程に努力を重ね、それを国に認められた事で【甲龍(シェンロン)】を与えられた

 なので代表候補生である鈴は箒(平行)が専用機を持っているので同じ代表候補生になっていると思ったのだ

 しかし、口籠んだ箒(平行)はそのまま鈴から視線を逸らしてしまった

 さらに一夏達(平行)も同じように顔を背けた

 それを見て…

 

「何だ…ただの『()()』か…」

 

箒(平行)

「グッ…」

 

 自分が勘違いをしていた事に気付き何故箒がISを持っているのか察しがついた

 実際はその通りで平行世界の箒はこちら側の箒と同じで束(平行)に催促して専用機を手に入れようとしたのだ

 

「ふ~ん…まっ、頼んだら用意してくれたって事は()()()()()()()()()()?」

 

全員(平行)

「…へ?」

 

 すると、またもや鈴の一言に平行世界側のメンバーは首を傾げた

 鈴が何を言いたいのか分からないからだ

 

「こっちの箒ときたら普段から『自分は姉とは関係ない!』って言って博士の事毛嫌いしてる癖に自分の都合が悪くなるとすぐに博士の名前を出す『恥知らず』なのよ。」

 

箒(平行)

「!?…は、恥知らず!?」

 

「オマケに専用機の意味も全く理解してなくてね…専用機が欲しいのは『量産機より強いからだ』って言ったのよ?ハッキリ言ってそれ聞いた時、向こうのセシリア達と一緒に怒りが込み上げてきたわよ。」

 

箒(平行)

「………」

 

「ん?どうしたの?」

 

 鈴の話を聞いている内に箒(平行)は次第に青褪めていき冷や汗を流し始めた

 

「…まさか…こっちのアンタも?」

 

箒(平行)

「………」

 

 鈴のその一言に箒(平行)はまたもや顔を逸らした

 それは鈴の言う事が正解と言ってるのと同じ事だった

 

「…そう…世界は違っても同じ所は同じって事か…」

 

箒(平行)

「ウグッ…」

 

 鈴のその言葉に箒(平行)は顔をしかめた

 だが、向こうの箒と同じ事をしている箒(平行)には否定する事が出来なかった

 

(…この様子じゃ…コイツも向こうと同じ所があるかもしれないわね…)

 

 一方で鈴は2つの世界の箒の相違点が多い事から他の人も同様かも知れないと考えていた

 

(でもマドカみたいに全く違う場合もあるし、結論付けるのはまだ早いか…)

 

 鈴がそんな事を考えていると…

 

箒(平行)

「…な、なら…そっちの世界の私は…ISを…」

 

「博士は用意してないから持って無いわよ。」

 

箒(平行)

「!?」

 

 鈴がキッパリ貰って無いと答えると…

 

束(平行)

「どう言う事だ!!何で箒ちゃんのISを用意しなかった!!!」

 

 平行世界の束が再びこちらの束に喰いついた

 だが束は…

 

「何でって…当然でしょ?」

 

全員(平行)

「え?」

 

「そっちはどうか知らないけどこっちの箒ちゃんにISを持つ資格は無かったからね。」

 

箒(平行)

「資格が…無い!?」

 

「そうだよ、箒ちゃんがISを寄越せってあんまりしつこいからいくつか質問したんだよ。そしたら『ISは力だ!』『自分の気に入らない奴を排除する!』『量産機より強いからだ!』って酷い答えばかりだったんだもん!!あんな酷い答えで用意するほど束さんは馬鹿じゃないよ!!」

 

箒(平行)

「………」

 

「だから造りかけの【紅椿】はアルファちゃんの【ライズ・ドレイク】に造り替えたんだよ。」

 

束(平行)

「何だと!?」

 

「【ライズ・ドレイク】が【紅椿】だったんですか!?」

 

「うん!丁度セシリアちゃんの【ブルー・ティアーズ】を改造している時にね、一緒にアルファちゃんのISを用意しようと思ったんだけど一から造るにも時間が掛かるから【紅椿】を利用したんだよ。」

 

セシリア(平行)

「わ、わたくしの機体を改造!?」

 

 鈴だけでなく向こうの世界では自分のISも改造されたと知りセシリア(平行)は驚きと共に羨ましく思っていた

 

「それで出来たのが【ブルー・ドレイク】と【ライズ・ドレイク】だったんですね…アレ?って事は最初の【Dシリーズ】は…」

 

「セシリアちゃんの【ブルー・ドレイク】が1号機だよ。【ライズ・ドレイク】は【ブルー・ドレイク】のコアを元に改良を加えた物を使っているから2号機って事になるんだよ。」

 

「じゃあ私の【メガロ・ドラグナー】が3号機で、ラウラとシャルロットのが4号機と5号機になる訳か…」

 

ラウラ(平行)

「な、何だと!?」

 

シャルロット(平行)

「僕達のISも改造されてるの!?」

 

 鈴とセシリアだけでなく自分達の機体も改造されていたと聞かされ平行世界のラウラとシャルロットは驚きながらも羨ましがっていた

 

「そうよ…でも【ライズ・ドレイク】が元は【紅椿】なら乗り手が違うだけでアンタの言う通り改造されていたわけね。」

 

箒(平行)

「うっ…ぐぅぅっ…」

 

 鈴がそう言うと箒(平行)は顔を顰めた

 確かに【紅椿】は改造されていたが、乗り手が自分では無いので素直に喜ぶ事が出来なかった

 

「そう言う事だよ~♪まあ、その後はさっきも言ったけど箒ちゃんにはISを渡さない方がいいと判断したから新しい【紅椿】を造るのは止めて、データも全部消しちゃったよ。」

 

箒(平行)

「…止め、た…」

 

 開発を止めた…束の口からハッキリ出たその言葉に箒(平行)は再びショックを受けた

 そして…

 

「大体こっちの箒ちゃんってIS関係の成績『最底辺』なんだよ?鈴ちゃんやセシリアちゃんの様に代表候補生になるくらい努力したって言うなら考えてあげたけど何もしてないんだもん!!いくら相手が自分の妹だからってそんな理由でISあげたら努力して専用機を手に入れた候補生の皆や、手に入れる為に頑張った人達を侮辱する事になるじゃん!!そのくらいの『常識』は束さんにだってあるよ!!!」

 

箒(平行)

「…常…識…なら…私は…」

 

 トドメとばかりに束が箒に専用機を用意しなかった理由を言うと平行世界の箒はその場で蹲った

 こちらの束は何も間違った事は言っていないからだ

 だが、箒(平行)は自分のIS欲しさに散々毛嫌いしていた束(平行)を頼って【紅椿】を手に入れると言う行動を取ってしまった

 箒(平行)のした事は束や鈴の言う通り『非常識』な『恥知らず』な事なのだ

 しかし…

 

束(平行)

「それの何が悪い!!箒ちゃん(平行)は束さんの妹なんだ!!ISを上げて何が悪い!!!」

 

 平行世界の束は納得しなかった

 そして、そのままこちらの束と言い合いを再開してしまったので誰も口出し出来なかった…

 

 




 <予告>

 同一の存在でありながら余りにも違う二つの世界の人間

 だが、違うのは何も人間だけに限った話では無かった

 人の想いもまた違いが現れていた



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 世界の違い:恋愛編

 今、冒険が進化する!


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