ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第090話:世界の違い:恋愛編

 

 

箒(平行)

「………」

 

 言い合いをしている2人の姉の姿を箒(平行)は何も言えず見ていた

 同じ世界の姉は完全に身内贔屓で行動しているのに対し、別世界の姉は身内だからと贔屓などせずに妹ではなく一個人として見て判断し行動していた…

 普通に考えればこちら側の束の方が人としては正しい行動を取っているのだが箒(平行)にはそちらの束の味方が出来なかった

 もし、そうすれば箒(平行)は【紅椿】を失ってしまう可能性があるからだった

 だからと言って同じ世界の束の味方をすれば鈴や束に言われた『非常識な恥晒しの人間』だと自ら認めてしまうからだった

 その板挟みとなった箒(平行)は何も言えなかった

 そんな時…

 

「そう言えばさ…アンタ達に一つ聞きたい事があるんだけど?」

 

 鈴が一夏達(平行)に話しかけて来た

 

鈴(平行)

「何?」

 

「うん…っと、その前に…そっちの一夏(平行)は少し離れてて。」

 

一夏(平行)

「え!?何でだよ!?」

 

「男のアンタには聞かれたくないのよ。それともあんたにはデリカシーってものが無いの?」

 

一夏(平行)

「うっ!?…そう言う事なら…分かった…」

 

女性陣(平行)

「………」

 

 男には聞かれたくないと言う鈴の理由に一夏(平行)は納得したのかその場を離れた

 だが、残った女性陣(平行)は今の鈴の態度に違和感を感じていた

 

「さて、アイツもいなくなった事だし単刀直入に聞くわよ?アンタ達さ、アイツの事が好きなの?」

 

女性陣(平行)

「!?」///

 

 鈴のその質問に5人は一斉に顔を赤くした

 それは鈴の問いが当たっているという事だった

 

「そう…(やっぱりか…箒(平行)なら分かるけどまさか私(平行)やセシリア達(平行)までとはね…あ~…ホント、見てて気持ち悪い…)」

 

 一方で鈴は自分の予想が的中していたと分かり、更に気分を悪くしていた

 すると…

 

鈴(平行)

「じゃ、じゃあさ?アンタはどうなの?」

 

「私?」

 

鈴(平行)

「そうよ!そっちのアンタは一夏の事が「興味無いわ。」…え?」

 

 平行世界の鈴の同じ質問に鈴は即答した

 だが、鈴のその答えに平行世界の5人は固まってしまった

 

シャルロット(平行)

「今、何て?一夏の事が…」

 

「聞こえなかった?『興味が無い』って言ったのよ。私は織斑一夏に何の関心も無いの。」

 

鈴(平行)

「か、関心が無いって…何で…だって、アンタも私なら…」

 

「そうよ、アイツが初恋の相手よ…忌々しい事にね!!」

 

箒(平行)

「い、忌々しいだと!?」

 

「ええ、私の人生最大の汚点よ!!大失敗よ!!あんな男に惚れるなんて男を見る眼が無い自分に腹が立つ!!情けなくて涙が出て来るわ!!!」

 

女性陣(平行)

「………」

 

 一夏に対して徹底的に悪態を吐く鈴に5人は言葉を失った

 それはとても鈴の口から出るような言葉では無かったからだ

 

「アンタ達が誰を好きになろうと勝手だけどいつまでも『夢』ばかり見てない方がいいわよ。少なくとも私は現実を知って夢から覚めたわ。」

 

セシリア(平行)

「ゆ、夢ですって!?わたくし達の想いが夢だって言うんですか!?」

 

「ええ、夢よ夢、アイツに惚れるなんて『悪夢』としか言いようが無いわね。」

 

ラウラ(平行)

「あ、悪夢だと!?なら悪夢から覚めた結果が今の答えだと言うのか!?」

 

「そうよ、私はもうあの男に対して何とも思ってない。何も感じない。あんな『顔と口先だけしか取り柄の無い男』がどうなろうと知った事じゃないわ。」

 

箒(平行)

「か、顔と口先だけだと!?一夏がそれしか取り柄の無い奴だと言うのか!!」

 

「少なくともこっちのアイツはそうよ。だから私はアイツの事なんてどうでもいい。何処で何をしていようと興味が無い。死のうと生きようとどうでもいい存在なのよアイツは。」

 

セシリア

「し、死んでいても気にも留めないと言うんですか!?悲しむ事すらしないと言うんですか!?」

 

「ええ…『無関心』…それが私の織斑一夏に対する今の気持ちよ。」

 

鈴(平行)

「無関心!?(それって好きどころか嫌いですら無いって事じゃない!?)」

 

「仮にアイツが死んだって聞いても『あっそ?』って答える位でしょうね?仮に葬式に出ても線香1本供えてさっさと帰るわ。墓参りにも行かないわね。アイツに時間を使うくらいなら訓練をしていた方が遥かに有意義だからね。」

 

箒(平行)

「なっ!?(一夏の生死にすら興味が無いだと!?コイツは本当に鈴なのか!?)」

 

「それから一つ言っておくとこっち側のセシリアとラウラ、シャルロットは初めからアイツに恋愛感情なんて持って無いわよ。シャルロットはあの法螺吹き男の口車に乗る所だったから危なかったけどね。」

 

シャルロット(平行)

「口車?何の事?」

 

「アンタの家の事情よ。アイツ、アンタの事を知って『自分に任せろ』とかほざいたらしいけど実際は問題を先送りにしただけで何も考えてなかったのよ。」

 

シャルロット(平行)

「先送り…それって…(なんだろ…この先を聞いたら駄目な気が…)」

 

 シャルロット(平行)は鈴の話から嫌な予感がしてきた

 だが、すでに遅かった

 

「特記事項21条よ。あの男、()()()()()()()()()校則一つでアンタを守れると思ってたらしいわ。」

 

シャルロット(平行)

「や、役に立たない!?な、何で…」

 

「…アンタも気づいてなかったの?アレって『自分の国の命令』には意味が無いのよ?特に代表候補生の肩書きを持ってる奴には何の役にも立たないのよ?」

 

シャルロット

「!?」

 

「それにあの校則を盾にするって事はアンタをIS学園に3年間監禁するって事になるのよ?」

 

シャルロット(平行)

「か、監禁!?」

 

「少し考えれば分かる事でしょ?そんな事も分からなかったの?」

 

シャルロット(平行)

(そんな…それじゃあ僕は…学園にいても安全でも何でも無いって事じゃないか…)

 

 シャルロット(平行)の予感通りだった

 鈴から聞かされた話は自分がとても危険な状況だと再認識させられたのだった

 

「まあ、こっちはそうなる前に太一が何とかしたけどね。」

 

シャルロット(平行)

「…え?何とかした?ど、どうやって!?」

 

「デュノア社を篠ノ之博士のスポンサーにしたのよ。男女両方使えるISが完成した時の販売元にする為にね。量産型の第3世代の設計図を取引内容にして契約を持ちかせたそうよ。向こうのアンタの父親も喜んで受けたそうよ。」

 

シャルロット(平行)

「し、篠ノ之博士を動かした!?」

 

「そうよ。そう言う訳で向こうのアンタはあのスケコマシに靡く事は無かったってわけ。まあ、こっちはアレを見る限り私達の世界と同じ方法は取れないでしょうね。」

 

 鈴はそう言って未だにこちら側の束と口論している平行世界の束を見た

 聞こえてくる会話から太一の取った方法は使えないのは一目瞭然だった

 

「それから言っとくけど、太一は別にあんたの為にやった訳じゃ無いわよ。」

 

シャルロット(平行)

「…え?ぼ、僕を助けてくれる為じゃ無いの?」

 

「はぁ?何言ってんの?何で知り合って間もない奴の為にそんな大掛かりな事までして助けないといけないのよ?アンタ自意識過剰じゃ無いの?」

 

シャルロット(平行)

「うっ…それは…(向こうの鈴の言う通りだ…初対面の相手にそこまでしてくれる事の方がおかしいんだ…)」

 

 鈴の説明にシャルロット(平行)は何も言えなかった

 あの一夏でさえ学園の校則を盾にした穴だらけの時間稼ぎくらいしかしなかった

 初対面の相手の為に世界でも高い影響力のある篠ノ之束を動かし、一企業の問題を解決するなど本来ならあり得ない事なのだ

 

「太一がアンタの会社を助けた目的は今の世界の風潮を正す為よ。その方法としてデュノア社を利用しただけなの。アンタが助かったのはついでの結果でしか無いのよ。」

 

シャルロット(平行)

「…ついで…僕は…ついでなの…」

 

「そうよ。だから太一に助けを求めようなんて考えない事ね。多分だけど今のアンタじゃ頼んでも太一は絶対助けないわよ。」

 

シャルロット(平行)

「…え?」

 

ラウラ(平行)

「何故だ!!結果的にあの男はシャルロットを助けてくれたのだろ!?」

 

「結果的にはそうなったわ…でもね?私が『助けない』って言った理由は別にあるのよ。」

 

シャルロット(平行)

「…別の理由?」

 

「最初に教えたわよね?こっちの私達は【七つの大罪】を司る【七大魔王】の依り代だって…シャルロット(平行)…アンタの【大罪】は?」

 

シャルロット(平行)

「…【た、怠惰】…だよね?」

 

 鈴の問い掛けにシャルロットは答えた

 

「そう…【怠惰】…つまり『怠け者』って事よ。」

 

シャルロット(平行)

「ぼ、僕は怠け者じゃない!!」

 

「ならさ?アンタ、一夏に身の上話しをした事以外に今の状況を何とかしようと行動したの?努力したの?」

 

シャルロット(平行)

「!?」

 

「…やっぱりこっちのアンタもしてなかったわね?」

 

シャルロット(平行)

「うっ…」

 

「それで自分は怠け者じゃ無いって言える?相手の同情誘って後はそいつ任せの他力本願ってどう考えても怠け者がする行動でしょ?」

 

シャルロット(平行)

「………」

 

「太一はそれを一目で見破ったのよ。だからアンタの事情を知っても手を差し伸べなかった。セシリアから聞いたけどアイツはアンタにこう言ったそうよ。『その場を動かず、立ち上がらず、抗いもせず、逃げる事すらもせず、ただ手を差し伸べてくれるのを待っているだけの奴がどうなろうと知った事じゃない。』だそうよ。私も同じ考えだわ。そんな奴の為に見返りも無しに動いてやる必要なんて何処にも無いわ。」

 

シャルロット(平行)

「………」

 

「それにさっきも言ったけどこっちとそっちじゃ状況が大きく違うわ。特に篠ノ之博士の存在が大きく違うから流石の太一でも無理よ。あれは博士が味方である事が前提の方法だからね。逆に言えば博士を味方に出来れば同じ方法が使えるでしょうね?この世界のアンタにそれが出来ればね?仮に一夏を経由したとしてもアンタの為にあの博士が骨を折ってくれるとは私には思えないけどね?赤の他人の為にね?」

 

シャルロット(平行)

「………」

 

 シャルロット(平行)は何も言えなかった

 自分の現状を何とかしたと言う太一に頼もうと考えたがそれも鈴から無理だとすぐに否定された

 この方法は鈴の言う通り束が味方である事が大前提で出来た荒業なのだ

 そして、平行世界の束がシャルロット(平行)の為に動いてくれる筈が無い事はこの場にいる面々は良く分かっていた

 鈴は向こうのシャルロットの話を切り上げると…

 

「そう言う訳であの3人は私と違ってあの男の大法螺に引っかからなかったのよ。」

 

箒(平行)

「な、なら…私は?」

 

「さあね?アンタとは仲がいい訳じゃ無いから私と同じで手遅れって事しか知らないわ。まあ、アイツの事だからまだ惚れてるんじゃないの?こっちのアンタって【傲慢の魔王】に『世界一』認定されるだけあって『独占欲の塊』みたいな奴だからね。」

 

箒(平行)

「ど、独占欲の塊…だと!?」

 

「じゃなきゃ【ルーチェモン】の依り代に選ばれる訳無いでしょ?それにこっちとしてもあんな男願い下げだからアンタが捕まえていてくれるなら逆にありがたいわ。」

 

女性陣(平行)

「………」

 

 一夏に対して更にボロクソに言う鈴に平行世界の5人の怒りが次第に高まって行った

 だが、その時…

 

 コチン!

 

「アタッ!?」

 

 鈴を後ろから誰かが小突いた

 

「誰よ!ってアルファ!?」

 

 それはアルファことマドカだった

 

マドカ

「言い過ぎだぞ!」

 

「…だって…」

 

マドカ

「お前の気持ちも分かるが夢を夢のままにするのか、現実にするのかはその人の気持ちと努力次第じゃないのか?」

 

「それは分かってるわよ!!でもアイツに関してはどんなに努力しても全部『無駄』じゃない!!実らない努力がどれだけ『惨め』になると思ってるのよ!!」

 

女性陣(平行)

「…無駄…惨め…」

 

マドカ

「それでもだ!所詮私達は余所者だ!自分の同一の存在に自分と同じ思いをして欲しくない気持ちは分かるがやり過ぎだ!!」

 

全員(平行)

「え?」

 

 マドカの言葉に平行世界の5人は目を見開いた

 鈴がここまでハッキリと自分の経験を平行世界の自分達に伝えたのはこれが理由だった

 『自分と同じ思いをして欲しくない』と言うその気持ちからだった

 

鈴(平行)

「アンタ…私達の為に…」

 

「………」

 

鈴(平行)

「でも…私は…私達は一夏を…」

 

「…そう…なら好きにすればいいわ…何とか思い止まらせようと思ったけど…アンタ達全員手遅れって事ね…ご愁傷様…」

 

女性陣(平行)

「………」

 

 一夏への想いを捨てないと言う平行世界の鈴達に鈴は匙を投げた

 その時…

 

束(平行)

「だったらそっちのISと勝負だ!!!」

 

全員

「…へ?」

 

 口喧嘩をしていた2人の束の方からそんな声が聞こえた…

 

 




 <予告>

 何故か模擬戦をする事になってしまった2つの世界の面々

 互いの世界の実力を見極める為、誰を出すのか話し合う

 太一達側から出るのは?



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 それぞれの代表者

 今、冒険が進化する!


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