アナザー11   作:諸々

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ヴィーネが蘇生してから丸一日が過ぎた日の早朝、ギルド前には大勢の人々であふれていた。

今回の騒動の顛末と事態終息に向けての策が、ギルドから発表されるからだった。

ざわめきが聞こえる中、ギルド長のロイマンが神ガネーシャとベルをひきつれて登場した。

とたんに静まり返る中、ロイマンは語りだした。

今回の防具をまとったモンスターの件は、2つの勢力が引き起こした事。

1つはイケロスファミリアたち、この目的は、かのモンスターたちを外国へ密輸して莫大な金を得る事だ。

もう一つはギルドの極秘ミッションでのガネーシャファミリアとベルたち。こちらの目的は、かのモンスターを調教し調査すること。

ミッション組が不思議なヴィーヴルを捕獲したところで、イケロスファミリアと奪い合いになった。

戦いのさなか、イケロスファミリアが捕獲していたかのモンスター達が、逃げ出しオラリオにあふれたのが真相だと。

ここで一番前に陣取っていた神ロキが思いっきり手を挙げて言った。

「質問や。そのミッションの内容ならガネーシャん所が絡んでんのはわかるんやが、その兎がわからへんわ。」

「その理由は聞いています。一つには彼がなぜかは判らんが、かのヴィーヴルと相性が良いらしい。

少し前より噂に上っていた防具を纏ったモンスター達は、基本的には逃げるのが当たり前だったです。

だが彼にたいしてあのヴィーヴルは、逃げることも攻撃することもなかったらしい。

二つ目は、彼がヘスティアファミリアだからです。結成してから半年足らずだが、戦争遊戯を経て急速に大きくなりました。

だからギルドへの貢献が圧倒的に少ない、王国との戦争にも参加してません。それでこのミッションで穴埋めしようとしたわけです。」

「金じゃアカンかったんか?」「2億の借金のあるところからですか?ギルドはファミリアを潰したい訳では無いですから。」

ロイマンは少し間を置き言葉を続けた。

「今後の事だが、まずオラリオ内に散らばったモンスターだが、神ガネーシャに一任、捕獲調査してもらいたい。」

今度はロキの隣にいたフィンが手を挙げ聞いた。「捕獲?殲滅ではなくて」

「かのモンスターたちは強化種の様に容姿と強さが一致しない。今回のように取り合いになると町への被害が大きすぎる。

またイケロスファミリアの調査から予想以上の数がいるらしい。今後のためにもぜひ調査しなければならないと考えている。

そこでギルドは全ファミリアに、かのモンスターへの手出しを禁止する命令を発する、違反者は都市追放を含む厳罰に処す。」

再びフィンが手を挙げた。「あのモンスターたちはかなりの手傷を負っている、そんな状態で調教可能なのか?」

ここでロイマンに替わりガネーシャが前に出る。

「俺がガネーシャだ。先ほどの話の通り我々が捕獲を任された。ダンジョン内での感触で調教は可能だと思っている。

ただし早く見つけないと灰にになってしまう恐れがあるので、みんなに情報提供をお願いしたい。

有益な情報にはそれなりのお礼を用意している。どしどし巡回しているわが団員に通報してくれ。

それと我々以外でちょっかいを掛けようとするファミリアがいたらそれも知らせてくれ。一番にはお礼に100万だそう。」

再度ロイマンに替わる、ただし今度はベルを連れてだ。

「さてイケロスの調書によると一部はもうすでに出荷されてしまっている。そこで彼にこの調査を命じる。」

「そんなの一人で無理に決まっているだろ」と女声で野次が飛んだ。

「場所はすでに確定している、それに何も一人でとは言っていない。彼の裁量で人を雇うのは自由だ。全ての場所で一定の成果が出れば

ここへ戻り再度協議するものとする。規定通り監視員とその護衛は付ける。明日午後一時に南門に集合だ。」と言って指令書を渡した。

以上だとばかり入口の階段を下りた。目の前にいたロキに小声でささやきいったん家へ帰って行った。

他の冒険者達が帰る中、ロキとフィンはその場にとどまっていた。すると他の冒険者の会話が2つ聞こえってきた。

1つ目はこんな内容だ。

「がはははは、これでインチキルーキも事実上オラリオ追放だ。いい気味だぜ。」「何で?」

「あの借金まみれに人が雇えるわけねえだろう。一人ではギルドが満足する情報を得るまで相当時間がかかる、それまで追放扱いだ。」

2つ目は

「金にがめついリトルルーキーの野郎が。モンスターはみんなのもんだ、独り占めしやがって許せねえよ。」

「でもモンスターの横取りはマナー違反じゃねえか?」「そりゃダンジョンの中だけだろ。ばかばかしい。」

「だがダンジョンの外にもモンスターはいるぜ、よくある討伐クエストでも死体はいる。それを横から魔石を砕かれたらたまったもんじゃないぜ。

それに調教用の依頼なら生きたままじゃないとクエスト未達になってしまうじゃねえか。未達は信用がた落ちだ。」

「モルド、だが今回は町中だぜ、例外だろ。」

「それを言ったら今回は、ギルドの極秘ミッションだ。ペナルティはキツイぜ、おまけに奴は借金まみれだ。」

「借金なんてする方が悪いだろ。」「あれは主神のだって話だぜ、大方戦争遊戯の時の馬鹿げた魔剣野郎の代金じゃないか?」

「………」「結局どっちなんだよ。」

それを聞きロキは軽く舌打ちする。それをフィンは苦笑しながら見つめた。やがて人がほとんどいなくなると二人はギルドに入っていった。

 

その少し前、ミイシャとエイナは上司に声を掛けられた。「二人のうちどちらかをベル・クラネルに付けるつもりだ。」

ミイシャが言った。「エイナは担当だから判りますけど、何で私なんですか?」

「フロット、前回の神会の資料は大々不評だった。彼のレベル3の神会は帰ってからだが、その時までに責任を持って纏めろとの事だ。ちょうどいいだろう。」

「そんなあ…」エイナは何かを考え込んでいる様で終始無言だった。その様子をちらっととみて上司は言った。

「ではフロット、君にしよう、これが指令書だ。ギルド支部等に見せれば便宜を図ってもらえる。今日はもういいから明日の準備をしなさい。」

ミイシャは指令書を自分の机に置いて、あわてて出て行った。

「チュール、彼のランクアップ時の資料を貸してくれ。」エイナはハッとしてあわてて答えた。

「お蔵入りしたあれですか?一応レベル3の時の物もありますが似たり寄ったりですよ。」

「両方だ。」「判りました。ですが何に使うのですか?」「神ロキに今回の件で協力を仰ぐために使う。」「???」

「護衛役のためだ。ベルクラネルはレベル3、よって護衛役はそれ以上が必要。だがこの事態でそれだけのレベルの者を出せるのは神ロキと

神フレイヤぐらいだろう。ロキファミリアはクラネルにかなり興味が有る様だ。ヴァレンシュタイン氏、ディムナ氏がギルドで会っていたからな。

監視役になれば必然的に彼の事が解るだろう。さらに興味を引くためにこれを使う。」『彼の事が解る』のフレーズにエイナはかすかに反応した。

上司は気付かずに資料を持って行ってしまった。エイナはもやもやした気持ちを抱えて受付業務の準備を始めた。

 

「お待たせしました神ロキ」ギルド職員の男が入ってきて言った。「ギルドがうちらになんの用や。」

「職員の護衛に人を出してほしいのです。レベルは4もしくは3の人を。」「何でうちらが出さなあかんねん。」

「そのレベルの人を出せる所は限られています。ぜひお願いしたい。」「それでは理由としては弱いな。フレイヤんとこでええやん。」

「ですが良いんですか。彼の情報を得られるチャンスですよ。」フィンの方を向いて言った。「どういう意味や?」

「彼にはずいぶん関心が有るようですね。ヴァレンシュタイン氏共々何回かお見かけしましたよ。護衛として行動を共にするといろんな情報が得られますよ。」

フィンに資料を差し出しながら言った。

資料をぱらぱらとめくりロキに渡して言った。「知っているつもりだったけど、こうして観ると改めてすごいね。」

ロキはうなっている。「これを見せられれたら嫌とは言えないね。引き受けよう。得られた情報は独占しても構わないかな?」

「こちらもそれでいいのであれば。」

フィンは苦笑して言った。「分かったよ。それじゃあ情報交換といこう。」職員は頭を下げた。

 

ホームへ帰るとリヴェリアとガレスが待ち受けていた。詳しい説明をした後ロキが聞いた。「人を出すんでよかったんか?」

「構わないよ。59階層の激闘はぎりぎりだった。これ以上の階層を調べるには、さらなるパワーアップがどうしても必要だ。

そのためには努力を惜しんではいられないからね。」

ガレスがいった。「具体的には誰にするんじゃ。」「ラウルにしようと思っている。」

「理由は?」とリヴェリア。「彼には色々な経験が必要だ。これでもう少し自信が付けば良いんだがね。」

「52階での罰の件もあるし、ちょうど良いかもしれんな。」とリヴェリア。「あとは…」フィンはため息を吐いた。

「「「「アイズ」」」」「だがどう策を練る、さすがに我々は警戒されるだろうからな。」とリヴェリア。

「なら誰が良いかのう。ベートかあの姉妹、うーんこう言う事には向いてないのう。」

そこへレフィーヤが顔を出した。「あのリヴェリア様、出されていた課題が終わりました。次は何をすれば良いですか?」

ロキと幹部たちは素早く顔を見合わせた。「もう終わったか。一度に詰めても効率は上がらない、今日は終わりにしよう。」とリヴェリア。

フィンが話しかけた。「ちょうど良かったよレフィーヤ、ちょっと意見を聞きたかったんだ。」レフィーヤは居住まいを正した。

フィンは今朝の事を話した。ベルがオラリオ外へ調査に行くこと、ギルドの護衛で家が人を出すこと、ラウルを出そうと思っていること。

レフィーヤの心を読んでいたロキがこっそりOKサインを出した。それを確認したフィンは話を切り出した。

「レフィーヤ、我々が心配しているのはアイズの事なんだ。彼に随分執心している。一緒に付いて行きかねない、君はどう思う?」

レフィーヤはハッとして答えた。「確かにアイズさんなら…、だったらなぜ護衛を引き受けたんですか?」

「他のファミリア、おそらくフレイヤファミリアになるのだろうが、そうするともめ事を起こすだろう、最悪戦争になりかねない。」

ガレスが言った。「ならいっそアイズに任せたらどうじゃ。その方が面倒にならんと思うが?」ロキとレフィーヤがガレスを睨みつけた。

「黒のミノタウロス、あれを取り逃がしている。この状態で第1級冒険者をオラリオ外へ出せない。僕らが彼の強さを調査することで納得させるしかない。」

リヴェリアが言った。「だったらラウルで大丈夫か?調査系の特殊なスキルは持ってないぞ。」

「あのアイズがここまで絡んで解らないんだ、よほどの人材でないと変わらないだろう。入れ込んでるアイズよりも男同士の方分かることも有るとでも言うさ。」

「ずいぶん入れ込んでおる様じゃが、アイズにも春がきたという事かの?」とガレス。

ロキが吼えた。「アイズたんはうちのもんじゃ、だれにもわたさへん。」

「まだそこまででは無いと思うが、アイズは強くなることへの強迫観念があるからな。ただしこのまま彼への関心が続けばそうなるかもしれん。」とリヴェリア。

「しかし問題は今やアイズもレベル6、ワシ等に抑えられるかどうか。」とガレス。

「それには僕に考えが有る。まずラウルにこの偽のギルドの指令書を渡す。これで時間が稼げるはずだ。出発してしまえば目的地は複数、ルートもあるから

アイズ一人では追跡は出来ないだろう。本物はレフィーヤ君に渡しておく、然るべき時にラウルに渡してくれ。」フィンは指令書を渡して下がらせた。

 

リヴェリアが少し考え込んでいる。「彼の成長は、スキルの様な個人的な物に感じるんだが?」

「まさにそれが君に直接調査を依頼しない理由だ。だが彼の存在は、アイズ、ベート、ティオナ達に直接良い影響を与えている。

その点でも繋ぎを作っておくのは悪くない。また可能性は低いと思うが属人的でないことも考えられるからね。

それと彼の無詠唱魔法は、あの食人花には非常に有効だろう。今度の遠征にはラウルたちを守るためぜひ連れて行きたいと考えているんだ。」

「確かにあの無詠唱魔法なら無駄に新型を呼び寄せることも無いだろうしな。ただ連れて行けるのか?」とリヴェリア。

「彼にはいろいろと貸が有る、いやとは言えないはずだ。それにそうせざる負えない状況なるだろうしね。…最後に魔剣だ。」

「魔剣?」とロキ。「そう、アポロンとの戦争遊戯で見たあの魔剣だよ、リヴェリアあれをどう思う?」

「あれは伝説のクロッソだろう。確かにあれが有れば60階層以後敵に対して強い味方になるだろうが、彼とは直接関係なかろう。」

「製作者の事は椿に聞いたんだ。」「なんやあの時に話しに出た奴の事か。すごいメンドクサそうな奴ちゃうんかいな。」

「そう彼は金では動かない様だね。だからベルクラネル彼を通じて1本でもほしい。あの魔剣があれば穢れた精霊の詠唱魔法に対する切り札になる。…

そろそろみんなも待ちかねていることだろう。朝食前に発表といこうか。」

 

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