ここで少し時間を戻す。
リリルカ・アーデはロキファミリア団長フィンの思いに触れ、ベルへの思いを新たにし、迷いなく進む。はずだった。
その後、お試し小遠征(当初の目的は達成できず)から帰ってきた。今回印象的だったのは巻き込まれたゴライアス戦だった。
他のみんなはそれぞれ持ち味を生かして活躍していた。だけれどリリは端に隠れて見ているだけしかできなかった。
「はーー、困りました。」と思わずつぶやいた。一時の興奮はさめ、未解決の現実が圧し掛かってきたのだった。
すなわちベルの成長に付いて行けない、今回の様にダンジョンでは役立たずになってしまう、そして時間が経てば経つほど悪化する。
彼の異常ともいえるステータスについて考えていると、気づいてしまった。もう時間はあまり無いかも知れない。
あの騒動はこれを知らせる『お告げ』だったのかもしれないと思ってしまった。
とは言え一人で考えても、ろくな事にならないのは前回で経験済み。
ステータスロックも知らなかった主神と本人を除いたメンバーに相談することにした。
「なんだあーリリスケ、いきなり呼び出したりして。」雰囲気を察してかヴェルフが、ことさら軽い口調で話を切り出した。
「ベル様の異常なステータスとそれにまつわる件についてです。もうリリはついていけません。いや行かない方がいいかもしれません。」
「おいリリスケ、誰もお前を邪魔者と思っていないぞ。」とヴェルフ。
「そうですリリ殿、貴女は頑張っています。そんな悲しいことをおっしゃらないでください。」と命。春姫も横で頷いている。
「ヴェルフ様は魔剣鍛冶師としての力が、春姫様はレアで凄すぎる魔法があります。命様のスキルも使い勝手がいい、
だけどリリにはベル様の戦いに直接役に立つものが有りません。」
「ですが、」命が言葉を掛けようとするがそれをさえぎっていった。「命様はコンバートの予定ですから。」
重い沈黙が訪れた。その沈黙をどう捉えたかリリが静かな口調できり出した。
「具体的に話しましょうか。このまま行けばベル様がレベル5なられるのはいつごろだと思います?5年後ですか?それとも3年後?」
誰も答えない。「このまま行けば3か月後でも、リリはあり得ると思います。そうなったらダンジョン適正レベルは深層、
レベル1サポータの行ける所ではありません。」
「それならベル殿に少し待ってもらえば良いのでは?」
「それはリリも考えました。ですがスキルになるほど憧れた存在」ここで狐の耳がピクリと動いたが誰も見ていなかった。
「それに追いつきたいと言う願い、その思いをリリの都合で遅らせても良いんでしょうか?
それにベル様は、事件と言うより強くなるための試練の方が正しいのでしょうが、に頻繁に遭遇しています。
待ってもらうと言う話し合いは実質意味がないのでは。」
「それは…」命は言葉を詰まらせたが、他の二人も気持ちは同じだった。
リリはさらに続けた。「この前の週1のステータス更新でのベル様の値を覚えていますか?」
「もちろん覚えてるぜ、トータル50オーバーUPだった。確かに凄いがスキルの影響だろ。」
「敏捷に限って詳しく見てみましょう。前回583が今回594で11UPでしたね。」
「そんな感じだったな。」ヴェルフが言い、命も春姫も同意した。
「ではベル様がレベル3にランクアップしたのはいつですか?」「そろそろ1か月ぐらいか。」とヴェルフ。
「次は簡単ですよ、1か月は何週間でしょうか?それから1週間を引くと何週間になるでしょうか?」
「1か月は4週間だから1引いて3週間だ。」ヴェルフは答えた。命が「あー」と声を上げた。
「ランクアップすると数字は0になります。普通数字のUPに目が行ってしまいますが、前回の数字の方が大問題なんです。
前回の更新までが3週間、と言うことはベル様はなんとその間に583、1週当たり194以上UPしていることになるんです。」
ヴェルフ、命は言葉を失ったように唖然としていた。ただ春姫は何かを考えている様だった。
「もちろんその間イシュタルファミリアとのまさに死闘が有ったわけですから単純にはいきませんが。」
「リリスケ、事態が深刻なのは理解したぜ。ただ俺には急過ぎる、少し時間をくれないか?」とヴェルフ。
「そうです、少し時間を下さい。タケミカズチ様は武の神、何か知っていらっしゃるかもしれません。」と命。
「相談なさるのは構いませんが、くれぐれもベル様のスキルの事は秘密でお願いします。神に嘘はつけません。
特に命様、再コンバートの条件に関わってくると思われるので、注意してくださいね。」