この村へきてもう2週間以上経った朝、ベルは思わずため息をこぼした。
薬草探しは極めて順調だ。レフィーヤさんとの死のレース、アイシャさんとの模擬戦(左手に杖のハンデあり)さえなければ。
騒動が起こる場所辺りで必ず薬草が見つかるからだ。たぶん幸運のアビリティの所為だと思うけど戦いは余計だ。
特にレフィーヤさんは兎も角、アイシャさんは見られたり触られたりしても気にして無さそうなんだけど。
ハンデ付きで負けたらベットで再戦だ何て言うもんだから、3人のエルフの視線が怖くて絶対に負けられないよ。
最近は村長の奥さんたちは黒い谷で待機、レフィーヤさんと僕が現れるとアイシャさんの所に行って薬草を採取。
ククリは相変わらず時々現れるモンスターに対する僕の盾だ、たださすがに1~2発食らう程度で追い払っている。
ククリの呼びかけに無反応なことから、アルルとヘルガとの違いを感じ始めている所だ。
何とか他にククリが納得できる使い方を考えないと。悩みは増える一方だ。
ちなみに僕が盾を持っていくとククリがすねるので持って行っていない。
流石に今日は全力で『俺の所為じゃねえ。』と叫びたい気分だった。
今日の早朝、まだ暗い中ベットの傍でがさごそと音がするので目が覚めた。
何事かとあわてて手元の懐中魔石灯をつけると何やら白い物体が目の前に立っていた。
恐る恐る上を照らす。その光で顔をゆっくりとこちらに向ける。
明らかに寝ぼけている顔をしているが光を浴びてしだいに覚醒する。
ばっちり目が合う。膝までおろしていた下着を引き上げ、たくし上げていたネグリジェを右手で器用に戻して部屋を出て行く。
あわててベルは窓から飛び出した。
不気味に、復活の呪文を唱えない撲殺妖精が、撲殺専用の棒を持って追いかけてくる。
日に日に平行詠唱の精度が上がっていくのが地味に怖い。ファイヤーボルトの連射で威力を弱めて対処しているが。
レフィーヤさんの世話をエイナさんにお任せして、ほぼ日課の鍛練を始めようとする。
いつもの視線を感じる。今日は特に誰かに話したい気分だ。と言うのは今日最後の希望が潰えたからだ。
レフィーヤさんを抑えるのにエイナさんではレベルが足りない。アイシャさんは面白がるだけだ。
最後の希望はリューさんだけだった。だけど今日アイシャさんと一緒に出てきたが、言い合の末引っ込んでしまった。
「そこのキミ、いつも見てるね。ちょっと出て来てくれないかな?」
「何か用。」10歳ぐらいの女の子が出てきた。服は村人と同じ様な物だ。
少女の様な老人の様ななんとも不思議な雰囲気を持っているが、神威は感じない。
「チョッと話しがしたいんだ。」ベルは不思議な雰囲気につられて話しかけた。
「…良いよ、で何の話かな?」不思議な雰囲気はさらに強まった気がする。
その雰囲気に押されてレフィーヤさんとの事を話してしまう。
「………もちろん僕が悪かったこともあるんだけど、さすがにあれはね…」話している内に段々愚痴になってしまった。
「かわいそう。」ぽつりと彼女(外見は少女だが雰囲気は違う)は言った。
「…さすがにそこまでは、僕も悪かったんだし。」とベル。
「違う。」と彼女は首を横に振った。
「違う、何が?」
彼女は黙って指差した。エイナに抱えられたレフィーヤを。
「何を?」ベルは首を傾げた。
「かわいそう、思いを聞いてもらえなくて。」言葉を加え繰り返した。
「でも話しかけてもますます怒るだけで…」
「彼女とは話はできないの?モンスターみたいに意思疎通が出来ないの?」
「確かに反応が有るんだから聞いてはいるんだろうけど…」
「でも聞いてあげるしか方法は無いわ。」と言って村の方へ駆けて行った。
ベルは呆気のとられたが、強要出来る訳では無いのでそのまま見送った。
あまり意味のない会話だと思ったが、何故かベルの心に深く残った。
流石のエイナも今回はあきれていた。
「レフィーヤさん、大丈夫ですか。」
「大丈夫です。」とひっくり返ってちっとも大丈夫そうに見えない格好で言った。
「レフィーヤさん流石に今日は…」
「分かってます。ですがこのままでは調査が全然です。飴と鞭で揺さぶりをかけることが必要だと思います。」
(こんな相手をアイズさんに絶対近づける訳にはいきません。)
「レフィーヤさん、……」(ワザと悪者になるなんて…その覚悟や良し)
がっちり握手をするエイナとレフィーヤ。
「レフィーヤさん一緒にがんばりましょう。」
「はい、エイナさん。」