アイシャとレフィーヤはそれぞれさりげなく別方向に。
ベルはエイナ、ククリと共にゆっくりと所定の位置に移動する。
相手を包囲する配置に、それが完了したら捕獲作戦を実行。
ワザと逃げ道を作りそこへ誘導、ベルが敏捷を生かして捕獲する。
「!!#%’”$&」相手が何か叫んでいる。
捕まえてみるとエルフの子供だった。
「何でこんな所に?」とアイシャ。
「何を言っているか分かりませんね。もしかしてエルフ語ですか?」エイナを見てベルが言った。
「それっぽいけど方言が強くてよく判らないわね。レフィーヤさんは如何ですか?」
「放せと言っているみたいですが知らない方言ですね、私も学区育ちですから他の部族の言葉は判りません。
エルフは部族によっては閉鎖的ですから、方言が多様で数も多いです。」
レフィーヤが知っている言葉で話しかけても相手はきょとんとするばかりだ。
だがエルフのレフィーヤが居ることで少し大人しくなった。
純粋エルフの間ではハーフエルフは大抵差別されている。
そのことを知っているエイナは、ベルの後ろで大人しくしている。
如何すべきか話し合っている間にリューが帰ってきた。
「そちらは?」とリュー。
「ここに隠れていたんですけど方言が強いらしく会話が出来ないんです。」とベル。
それを聞いてリューは会話を試みる。
「:+<。……)&*、…%&#」よく判らないがいろんな方言を試しているらしい。
「’%##”」すると突然喋り出した。
「どうやら会話できそうです。私が通訳します。」とリュー。
「ではお前の名前は?」と少し高圧的にアイシャが聞いた。
『…真名は言いたくないらしい。好きに呼べと言っている。』
「アイシャさん怒らせてどうするんですか。僕が聞きます。」この言葉にアイシャはそっぽを向いた。
「どうしてこんな所に?」
『ここで大きな魔法を感じた。ここ一ヶ月ぐらい前から感じていたが今日は一際大きかったから様子を見に来た。』
「どこに住んでいるの?」
『言いたくないらしい。』
「何人ぐらいで暮らしているの?」
『家族4人だそうだ。』
「村の人は?」
数回やり取りした後、首を傾げながらリューは言った。
『家族だけで暮らしているそうだ。』
『逆に質問だ。私たちについて聞いてきている。何と答える?』
その言葉に一同は考え込む。
「如何しましょうか、本当の事を素直に話しますか?」とベル。
「だけどいろいろ面倒なことになりそうだ、いっそひと思いに。」とアイシャ。
「駄目ですよアイシャさん、まだ子供じゃ無いですか。
それにエルフは理性的で平和を愛する温和な種族なん…」ここで雰囲気が変わったことに気付くレフィーヤ。
何かと思いアイシャを見るとベルを指差している。
ベルは空を仰ぎ何かをつぶやいている。エイナは後ろから抱きしめて頭を撫でている。
「エルフが理性的で平和好きで温和、…そう考えていた時期が僕にもありました…」とつぶやいている。
「お前さんこの一か月間奴に何をしたのか覚えていないのかい?」とからかいを含めアイシャが言った。
考えてみる、セクハラされる>激昂し杖で叩きまくる>疲れて動けなくなるまで追いかけまわす
自分の行動にレフィーヤは顔を真っ赤に染めたがあえて言い切った。
「と・に・か・く、過激な方法は大反対です。」
この事に関心が無いククリは兎も角エイナが発言していない。
それはあの子供が、自分の事を話題にしているらしい。
私を指差しリューさんに話しかけている。方言の為ほとんど解らないが所々の単語は判る。
”混ざってる、混ぜ物”とか”従属している、家畜”、”レベルが低い、下等”
”馴れ馴れしい、ベタベタする”、”豚、太った、多産”などがかろうじて判別できる。
どれもあまり良いイメージの物ではない、やはりハーフエルフへの偏見が有るようだ。
取り合えす旅の冒険者と言う事にした。しばらく川沿いの村に居ることも伝えた。
リューさんとレフィーヤさんに近くまで送って行ってもらう事になった。
「それにしてもここにそんな事が有ったなんて。」とエイナ。
「ギルドではどんな風に伝わってんですか?」とベル。
「あの魔剣戦争にはギルドは関わっていないわ。ギルドは基本オラリオ内の管理よ。
下手に外に干渉してダンジョンがら魔物が溢れたなんてことになったら大変だもの。
それとラキアが魔剣の力を背景に上手く各国を分断させたことも大きいわ。
だから末期の掃討戦にもギルドとしては参加していなの。
各ファミリアが勝手に参加したと言う事ね。」
「おいおいそんな事でファミリアが動くはずないだろう、ギルドのペナルティも有るだろうし。」とアイシャ。
「何人ものエルフたちが”ラキアに鉄槌を、それ以外は望まない。”と言って入団したのよ。
そしてギルドは領土的野心をオラリオは持っていない事を示すため、ラキア支配地域への直接干渉は禁止した。
言い換えればそれ以外は黙認した、実際ラキアの侵略は問題だったしね。」
「そう言う事ですか。」短期間に2度のファミリア抗争を経験したベルはしみじみと言った。
「そう言う事かい。」神に翻弄されたアイシャは苦々しく言った。
「それにしてもお前さんよく知っているね。」とアイシャ。
「この前ラキアが攻めて来た時に一通りレクチャーが有ったの。
経緯を知らないと対応を間違うかもしれないってことで。
自分でも気になったからその時追加で詳しい経緯を調べたのよ。」
そうこうしている内にリューとレフィーヤが帰ってきた。
レフィーヤは妙にすっきりした表情だった。
「レフィーヤさん、何かありましたか?」とエイナ。
「ようやくコツを掴みました。これで…」と赤黒く変色したあの棒を見せつけて言った。
「途中でアルミラージの大群が襲ってきたんですが、彼女が一人で撃退していました。」とリューが捕捉した。
『チャララーン、レフィーヤは兎バットを極めた。撲殺妖精Act2に進化しました。』
そんな幻聴を聞いた気がしてベルはぶるっと震えた。
レフィーヤさん、着実に兎マスター(短編とは違う意味で)への道を歩んでますね。
言うまでのありませんが、ここでのラキアとエルフの物語は独自解釈です。
だけど森に住むエルフを村ごと焼き払うと言う行為に疑問が有った為こんな物語を加えてみました。
現代でもイラク戦争を例に挙げれば、少し解ってもらえるかもしれません。
アメリカも突っ走ったんだからと言われるかもしれませんが、ラキアは軍神、
オラリオの神との戦争遊戯ならともかく子(エルフ)との一方的な殺戮は好みではないでしょう。
神々は6巻でヘルメスが神会で言っている通り一方的なものは面白くないそうですから。