アナザー11   作:諸々

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鍛冶編スタートです



ヴェルフ01

カン、カン、カン

小気味良い鎚の音が響き渡る工房。

瞬く間にナイフが形作られる。

ここでこの工房の主たる椿はようやく手を止め一息はいた。

「ふぅーー」

そしていつから有ったか分からない干し肉をかじり、水をこれでもかと言う勢いで飲む。

それから床にごろりと横になり寝入ってしまった。

ヘスティアファミリアから渡された結晶、あれをつい先ほどまで科学者の様に調べまわした挙句に

粉末を金属に混ぜ込んでから小さなナイフを作ったのだった。

 

暫く微動だにしなかった椿だがやがてむっくりと起きだして大きく伸びをした。

そして先ほど作ったナイフを手に取り調べ始めた。

「良し、早速ギルドに追加発注じゃ。」

そう呟くと椿はサンプルの小片をもってバタバタと駆けだして行った。

だが流石レベル5、すぐに戻ってきて部屋の整理を始めた。

その間も続々と荷物が届く、置き場所に困り押し付け、、もとい貸与していた武器などが詰まったカーゴたちだ。

そう、あの石の対価にヴェルフに渡す試作武器の選定をしているのだった。

そして一対の大戦斧をとりだしてにやりと笑って言った。

「これであ奴に宿題といこうか、果たしてあの半端者に気づくことが出来るか?」

 

荷造りを下の物に任せ椿は暫し物思いにふける。

それは離れてしばらくたったベルクラネルの事、正確には餞別に渡した剣の事だった。

不懐属性の片手剣、それはあの59階層の出来事の記念に仕上げた物だった。

仕上げたというひょうげんなのは以前作ろうとしたが途中で放り出した物を再利用する形だったからだ。

と言うのもオラリオでは兵站が極端に短く不懐属性が生かせないからだ。

価格は1級を超えるのに威力は2級以下、それが不懐属性の剣という物だ。

これまで敵が武器破壊をしてきた事が無いオラリオでは、小さな物なら予備を持てば良いし、大きな物は早々壊れる事は無いから不要だった。

それに不懐属性とは言えども切れ味は徐々に落ちていく、そして現地でのメンテナンスはかなりの技術がいる。(現状は椿のみか?)

現状オラリオでは不懐属性の使い手は武器を破壊しまくったあの娘以外にはほとんど聞かない。

(例えば1級の威力の武器なら1回の攻撃で倒せる敵だとすると、2級の武器では2回以上攻撃する必要がある。

敵を倒すのに時間が掛かるのは敵の数が多くなる深層では大きなデメリットになるのだ。)

言ってみればあの剣はローランシリーズのプロトタイプにあたるのだった。

 

あの娘が持っている剣、あれはどちらかと言うと攻撃寄りの作りになっている。

それはあ奴の現状には合っていないと椿は思っていた。

そこでベルに渡した剣はあの娘に合わせて耐久性を重視して造った。

不懐属性の武器はその耐久性を生かして叩きつける様に使うのは一般的だ、その意味ではあ奴の使い方は有りだと思う。

だからあ奴の剣には耐久寄りの方が合っている、そう椿は考えたのだ。

使っている剣をメンテナンスしたからバランスや握りは分かっているからその点では問題はなかった。

渡しそびれたのはあ奴の使っている剣か神造の剣だったのと、渡す理由が思いつかなかったからだ。

「神ゴブニュは何を考えてあんな剣をあ奴に渡したのやら?」

椿にはあの剣はアイズに合ってはいない、と感じていたからだ。

だが同時に神の深遠なる御心を推し量ることは出来ないとも感じていたのだった。

勢いに任せて作ったはいいが、どこにも持って行きようのない剣になってしまっていた。

だからベルに渡したのはちょうどいい引き取り先が出来たと椿は考えていた。

レベル3程度の力では壊すことなど不可能、神と離れレベルが固定しているなら5年はメンテナンスすら不要だろう。

そんな事を考えながら荷造りが出来るのを椿は待っていた。

 

ヘスティアファミリアから帰って来た椿は上機嫌だった。

「ヴェル吉のヤル気は十分、これからはちょくちょくのぞきに行ってみるか。」

中庭のヴェルフの傍にあったドロップアイテムの山を思いだしながら椿は満足げにそうつぶやいていた。

 




察しの良い方なら分かっていたと思いますが、椿からベルに渡された剣はこんな由来があります。
アイズを想定した剣、なおかつローランシリーズのプロトタイプを流用しているのだった。
(ひじょうにベタですみません。)
アーデ編では盾が重要な働きをしていましたがヴェルフ編では剣になります。
そしてこの剣がこの物語のエンディングへの布石になります。
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