アナザー11   作:諸々

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ヴェルフ04

ヴェルフはあれからタケミカヅチの指導を受け剣術の稽古を始めた。

タケミカヅチの言葉に思う所があったし、他に疑問を解決する方法が思いつかなかったからなのだが。

ただ本格的に剣術を学ぶわけではない、そんな事をすれば何十年もの時間を使ってしまうからだ。

では何をしているかと言うとそれは武術の型のトレーニングだ、武術の型はその動きのエッセンスが詰まっている。

長い時をかけて完成されたそれは体験するには最適とタケミカヅチは判断した様だった。

但し使っているのはこれまで愛用していた剣ではなく新たに購入した剣を使っている。

これはタケミカヅチからの強制だった、ヴェルフは使いづらく感じたがその言葉に従っていた。

「ウォー、腕が…足がつる~」ヴェルフが吠えている。

「そうなるのは体のバランスが悪いからだ、体の隅々の筋肉の動きを全部意識するんだ。」タケミカヅチはそう答える。

「そんなこと無茶だーーー」

「その為に動きを遅くしているんだ、勢いで押し切るのではなく重心と体幹を常に意識してみてくれ。」

今の所トレーニングの時間の約2/3がスピードを遅くして行っている。

もう二週間近くこれを行い、ヴェルフは得物を変えたぎこちなさが取れてきたようだ。

「そろそろですかね。」タケミカヅチはそう呟きヴェルフに近づいて言った。

「ヴェルフ君調子はどうですか?」

「おぅ、何とかな。

だがスゲーな剣術ってやつは、こんな安物の剣でも前より威力がありやがる。」

ヴェルフはそう言って練習用においてある木の棒を軽々と両断して見せた。

「なるほど、では以前使っていた剣ではどうでしょうか?」

「おっ、漸く解禁か。

これが悪いとは言わねえけどやっぱり自分に合った剣が一番だぜ。」

早速自信作の愛刀を持ち出して振り回し始めた、がすぐに首を傾げて言った。

「あれ?、久しぶりだからか違和感が…

だがこれならどうだ。」

そしてさっき切った木の棒に再び挑んだ。

「えっ。」

ヴェルフは戸惑っていた、自分の剣の方が明らかに切れ味が悪い。

「もう一度だ。」そう言い再び木の棒を切りつけた。

「もう一度」

「もう一度」

「もう一度」

……

「くそっ!」そう言うとヴェルフは愛用していた剣を地面にたたきつけた。

 

荒れているヴェルフが落ち着くのを待ってタケミカヅチは声をかけた。

「理由を知りたいかい?」

「……今度は何をすれば良いんだ。」怒ったようにヴェルフは言った。

それに対してタケミカヅチは微笑んで答えた。

「ヴェルフ君、今回の事は前の事と無関係じゃない、長くなるが聞くかい?」

「おう。」そう言ってヴェルフはその場に胡坐をかいた。

「ではまず基本手にな所からおさらいしようか。

君たちの体は獣人も同じく手は二本足も二本、骨を中心に筋肉が取り囲みそれを動かしている。

へそを中心として腕の間に頭がある、急所と呼ばれるところもほぼ一緒だ、ここまでは良いかい。」

「…ああ」

「だから君たちの動き、特に力ある動作には制限があり決まりがある。

だからみんながある程度習得できる武術があり、それに対応する武器防具がある。」

ここでタケミカヅチは少し間をおきヴェルフの反応を見た。

 

「何故だ!!なぜこの剣の方が切れない。」ヴェルフは呻くように言った。

「それはねヴェルフ君、その剣が君に本当は合っていなかったからだよ。」

「そんなバカな、ちゃんと調整したぜ。

それに今まで違和感なんか感じなかったぜ。」

「その理由は簡単だ、君が最適な動きをしていないからだ。

俺に言わせればいい加減な動き、それをいい加減な武器が助長する。

人というものは慣れるものだ、動きに悪い癖が付きそれに合わせた武器を選んでしまう。

そうやって普通は間違った方向で固定されてしまうものなんだよ。」

「そんな話は聞いた事ねえが…」

「まずこの事は一部の神しか知らないだろうね。

そして知っている神も子が真剣に知ろうとしなければ教えないだろう。

何故ならそれも君たちの可能性だからね、自ら疑問に思いそれなりの努力をしないと教えはしないのさ。

で君はその条件を満たした訳だ、ではその回答を教えよう。

今回君に買ってもらった剣は言わば『平均の剣』とでも言うべき物だ。

おそらく誰もがこれじゃないと思うはずの物だよ、だから売れ残っている訳だね。

君が見せてくれた斧の内の一つはこれと同じものだ。

ヴェルフ君、さっき話した事を思い出して欲しいんだが、本質的には君たちに違いはあまりない事を。

むろん君たちにも個性がある、だけどそれは本来は大きく違うものではないんだ。

正しくない動きの癖に合った装備を使っているとその癖は修正されずに助長されてしまうものだ。

大抵の人に心地いいだけの物は最終的にはその人を殺してしまう、職人ならその事を頭の片隅に置いておくと良い。

君がわざわざ残す必要を感じないと言った物、それこそが本当にその人にあった武器と言える物なんだよ。」

ヴェルフはここで型の訓練を行う、ゆっくりとそして動きの隅々まで神経を尖らせて。

買った剣とこれまで使っていた剣を比べる。

そしてタケミカヅチの言葉を実感する、型の動きをすると今までの剣では良くない事が良く分かる。

その様子を見てタケミカヅチは言った。

「実感してくれた様で何よりだよ、鍛冶師として上を目指すなら知っておくべきだからね。」

「えっ」

「ヴェルフ君、君が打った剣を客に合わせるよね、その時どうする?」

「そりゃあお客に聞いてそれに合わせ…」

「そう、それが正しいとは限らない、その客は動きに悪い癖がついているかもしれない。

いやほとんどの子はそれを持っているだろうね、技を極めるため何万回と振らないと気づかないだろうから。」

ここでヴェルフは椿の口癖をおもいだした。

『ダンジョンへ潜り、数え切れないほど試し切りをしてきた。』

これを聞いた時ヴェルフはバカな事をやっていると思っていたが、実は後輩へのアドバイスでもあったのだろうか?

そう考えたヴェルフだがこの事は誰にでも言っている、そう思いなおしもう一つ気になっていた事を聞いた。

「もう一つ教えてくれ、この剣を買ったとき店員が変だったのは?」

「あぁーそれは」タケミカヅチは少しばつが悪そうに言った。

「今回話した事は武の神なら当然知っている。

だから神がその剣を買う事はマナー違反に当たるんだ。

買ったのは元ファミリアの君だから正確には違反じゃないけれど。」

「そうでしたか、俺なんかの為に有難う御座います。」

「君たちには返しきれない恩がたまっているんだ、気にすることは無いさ。

それにヴェルフ君なら何れ気付いたと思うよ。」

「それでも有難う御座います、俺だけならあと何年も先だったはずだ。

……神タケミカヅチ様、俺に武術を教えてくれ。」

「…冒険者に専念するのかい?」

「いやそう言う事じゃねえ、今貰いもんだがいるんな武器がある。

それの使い方を教えてくれ、もちろんさわりだけで構わねえよ。」

「じゃあ何回か型を見せよう、それなら大した手間じゃないからね。」

「それで構わねえ、よろしくお願します。」最後まで口調が微妙なヴェルフだった。

 

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