そこはまさに湖だった。中ほどに島がポツンとある。
よーく見ると木がまばらに生えていて微かに光っているようだ。
依頼品はホワイトリーフの変種、光るホワイトリーフだ。
おそらくあそこに有るんだろうが湖を渡ることが難しい。
湖は深く、水棲モンスターがいっぱいいる。
ヴェルフが服を乾かしながらぼやく。
「少し潜ってみたが底が見えねえ、おまけにモンスターがうじゃうじゃ居やがる。
ポセイドンの連中でも連れてこないと行くのは無理だ。」
「船を使えばどうでしょう。」と春姫。
「この地下へ持ってこれる船では耐久性に問題がある。体当たりで簡単に壊れてしまうぞ。
もし湖の真ん中で襲われたら全滅だ。」とヴェルフ。
「異端児の方たちに頼るしかありませんね。飛んで行けば何とかなるでしょう。」とリリ。
「……リリスケはモンスターに変身できるんだよな?」とヴェルフ。
「ええ、よく知っている物ならば出来ます。逆に知らなければ失敗しますが。」
「なら飛べる奴、ハーピィなんかに変身すれば飛べるのか?」
「分かりません。ですがリリの身体能力以上の事は無理ですよ。」
「だが前の時、鼻は良くなったんじゃないのか?モンスターの特性に引っ張られ部分も有るんだろ。
それに此の所ぐんぐん力をつけて来ているんだ。可能性は有ると思うぜ。」
「そうですね、ベル様が居られなくなってから急速に力を付けられました。
今のリリ様ならきっと出来ます。」と春姫。
その言葉にリリは湖に駆け出して、少し離れた場所に行き服を脱ぎだした。
「おいリリスケ、何を…」目をそらしながらヴェルフが言った。
全裸になりハーピィに変身してから言った。
「変身中には服装は自由になるんです。動きを制限する物は極力避けるべきでしょう。」
その姿は軽装鎧を身にまとっている様に見える。力強く羽ばたきを開始するとふわりと浮き上がった。
ただその羽ばたきが起こす風で、綺麗に畳んであった服は吹き飛ばされる。
浮き上がったは良いが飛ぶには苦労している様で低空をよたよたと飛んでいる。
だが次第にコツをつかんできたのか何とか飛べるようになった。
「では行きます!」と言ってリリは島へ飛んで行った。
他の皆はただ見ているしかできない。春姫は何かに向かって祈っているようだ。
時折リリ目がけてジャンプするので水中のモンスターは明らかに狙っている。
よたよたしながらもなんとか島にたどり着いた。
木が生えている所でしばらく何かをしていたが、慌てて戻ってくる。
モンスターに構わず最短距離で戻ってきて岸に降りると変身を解いて言った。
「やりました。おそらくこれです。」大喜びなリリ。
「ちょ、おま」と言って服を探しに飛び立った地点に走り出すヴェルフ。命がそれに続く。
「リリ様、裸、裸です。」そう言い慌てて春姫が駆け付ける。
リリは気付いてその場にしゃがみ込む。
「変身すれば服は自由なんですよね。でしたらご自分に変身すれば良いんではないでしょうか?」と春姫。
その言葉にリリは詠唱を始める。{あなたの傷は…}
だが変身できなかった。今まで失敗することは一度もなかった。
茫然としていると命が散らばった服を持ってきた。
命と春姫が服を着せている間も一言もしゃべらない。着終わってヴェルフを呼んだ。
「おいリリスケ、どうした?」
「それがリリ様は魔法に失敗したみたいなんです。」
「?どういう事だ。」
「変身する時服装は自由にできるという事でしたので、ご自身に変身していただこうと思ったんです。
ですが変身できず、失敗したみたいなんです。」と春姫。
「…そうです魔法に失敗しました。こんな事は今まで無かったのに。」
「魔法に失敗したという事は…」と命。
茫然としているリリは気付かないが、他の3人は同時にひらめく。
何故を繰り返すリリにヴェルフが代表して答えた。
「失敗したという事は知らないという事だ。
お前は色んな事を知っているが、自分の事は分かっていなかったんだよ。」
リリはその言葉にここ数か月の事を思い起こし言った。
「結局リリはリリの事が分からなかったんですね。そして知らないくせに自分を嫌っていた。
そんな必要は全く無かったのに。」
そしてさめざめと泣いた。
結局リリはダンジョン探索メンバーから外れることになった。
指揮者とはいえ30階層以下はレベル1では無理でしょう。
あのレベル3のレフィーヤでも何度も死にかかっている場所ですから。
これでリリも終了。おまけで少しあるかも。