起きたら八雲だったけど、姓が貰えないんだが… 作:柱の男の娘
あるのは徐々に溜まった作者の妄想だけ。
まぁまたもや突発的に書いた…
薄紅色の装飾が施された一室、其処は紅魔館のゲストルームとして黒無に貸し与えられた物である。
だが、その貸し与えられた当の本人は酷い頭痛に悩まされていた。
その要因は一つ、『意思たち』がやらかした事件とこの後あるだろう惨劇による物だと判断が直ぐにつく。
「もう夜中…グゥ、心を決めるしかないのか!?」
当然このような呟きを漏らせばアイツらは騒ぎ立て煽ってくるだろう事実は目に見えて明らかだった。
『
『ロリに生きるものこそ美しい』
『さぁ黒無よ──』
『『『おぜうの胸の中で眠り果てるがいい』』』
黒無の憂鬱は加速する、頭痛が騒がしく感じ大きく溜息を吐くことで軽減するが、こうなっては騒がし屋も引く気の無い意志が更に強固になり、黒無の頭の中ではヘビーメタルのライブのように声を荒げ立てるのだ。
黒無は今一度溜息を吐き捨て、サラサラと肌触りの良いベットでゴロゴロ転がる作業を止めた。ここまで来てどうやらやっと行くことを決めたようだ。
ベットから降り立ち、
ドレスはやや刺々しいデザインで背中をパックリ開けた大胆なものだが、決して黒無が選んだ訳では無い。彼女曰く、「藍の推しが強かった」との事だ。恐らく藍の自信作の一つなのだろう、締め付け過ぎず、緩すぎないという絶妙なバランスを誇っている。
「行くか…」
ドアノブを捻り、廊下へと踏み出す。黒いローファーでカツカツと広い廊下を叩きながら、黒無は予め教えて貰っていた紅魔館当主の部屋に足を向ける。
昼間に聞いた妖精メイドの喧騒も今では聞こえず、自身の足音だけが響くこの空間。
しかし、そんな空間にも変化が訪れた、足音が一つ増え、自身の足音に重なるように響くもう一人の存在の音。
黒無も誰かと気配を探ってみれば、自分とは向かい側に感じることが出来た。
目を凝らしてみれば七色に光るものが確認でき、こちらに寄ってきているようだった。闇から姿を現せば金の髪をサイドテールにした吸血鬼が立っている。
「あれ、咲夜だと思ったんだけど…貴女は誰?」
黒無はこの吸血鬼の事を知っている、彼女はフランドール・スカーレット。紅魔館当主であるレミリア・スカーレットの妹で能力が危険であると簡潔な説明文が記憶されている。
フランドールは血のように紅い双眸を瞼で見え隠れさせて答えを待っていた。例の奴らも煩いので黒無は簡単に自己紹介をする事にした。
「俺は黒無、ここの客として招かれている」
「ふぅん、お姉様のお客さんなんだぁ。私はフランドール、フランでいいよ、よろしくねクロナ」
「よろしくフラン」と返せばフランドールは満足そうに頷き、ポンと手を叩く。
「それでクロナはこの時間にどうしてお部屋から出てるの?今の時間帯は私たちの時間だけど…図書館にでも行くの?」
「あぁ、レミリアに呼ばれていてね。夜中に部屋に来いとさ」
「…ふぅん。アイツにねぇ~」
フランドールの目に怪しい輝きを見た黒無は早々に立ち去ろうと横切ろうとする。だがフランドールは黒無の手を掴んで顔を寄せてくる。
無垢な瞳に幼い狂気の色を見た黒無は戸惑いながらも対応する。
「ん、どうしたフラン。掴まれると動けないんだが…」
「う〜んとね、私がお姉様の所まで連れて行ってあげようかなぁって思って。ここは広いし大変だと思うの。でもフランならもうちゃんと覚えたし…安全でしょ?」
有無を言わさない面持ちに黒無は首を縦に振ること以外道がなかった。
「うん、じゃあ決まりね!お姉様のお部屋はこっちこっち」
繋がれた手はそのままフランドールは歩いて行く。道筋は元々確認していたので特にこれと言って考えが浮かぶ訳でもなくされるがままになっていた。
「はい到着」
フランドールがそう呟くとレミリアの部屋の前に居た。
フランドールが扉をノックすればレミリアの声で入るように促される。
「待っていたわクロ…フラン?」
「こんばんはお姉様、お客さんが居たから連れてきたの」
「こんばんはレミリア。言われた通りお邪魔しに来たよ」
レミリアはフランドールが入室してきた事に驚きはしたものの、入室の意図と黒無の姿を確認したら平静になり黒無たちに挨拶を返す。
「えぇ、こんばんは二人共。それとありがとうフラン、後で何か持って行ってあげるから部屋に戻っていてちょうだい」
レミリアの言葉にフランドールは頬を膨らませる。
「それは狡いわお姉様!」
「狡いって貴女…別に私は遊ぼうと思ってクロナを呼んだ訳では無いのよ?」
「でもお茶会はするんでしょ?」
「それは、まぁ……」
レミリアは押しに強いフランドールに図星を突かれ顔を引き攣らせ、余裕を保っていた口元もパクパクと開閉している。
「ずーるーいー!私もクロナとお茶会したいわ!」
「いやだから、これはお仕事の様なもので……」
遂には口調までも崩れ始めるレミリアを見て黒無は憐れみの情を持ち始める頃、フランドールはニヤニヤと心底楽しいという様な笑みを浮かべる。
「へぇ、お仕事か…じゃあクロナは貰っていくね?」
「は?」
「じゃあってフラン、貴女は何を」
誰もがフランドールの言葉に呆けている間、当の本人はさっさとクロナを脇を抱え飛翔、開け放たれていた扉の仕切りを飛び出しレミリアの部屋から颯爽と脱走を図る。
「ちょっと待ちなさい!」
その声虚しくフランドールは速度を上げる。
「私の部屋に行こうよクロナ!」
「あぁうん…もう勝手にしてくれ」
黒無は頭を抑える、理由は単純明快で奴らが『幼女からのお誘いpart2だぁ!!』と発狂しているからだ。自身が妖怪で無ければ自分も発狂していたなと思うと同時にいっそ発狂した方が楽そうだとも考える。
黒無の受難はまだまだ続きそうだ。
図書館を経由して地下への階段を降下すれば重々しい重厚な扉が見えてくる。フランドールは躊躇いも無く開け、中に入れば黒無と繋いでいた手を離し、両手を広げ長い犬歯を覗かぜながら黒無に話し掛けてくる。
「ようこそクロナ、ここが私のお部屋だよ!」
其処は少女の部屋と言うには広く、淋しく、混沌としていた。
壁を見れば何度も修復された様に新しい場所から、黒く煤が掛かった様なものまで不自然なグラデーションを生んでいた。
家具はと目を向ければ必要最低限な物だけ、人形やその他暇潰しのためかパズルや積み重なった本があるのが分かる。
「さぁ遊ぼうよクロナ…の前に来ちゃったか」
「フラン、フランドール。人のお客さんを取らないで!」
階段の上を見ればレミリアが仁王立ちしており、その後にはメイド長の咲夜が付き添っている。大図書館の使用者である魔女のパチュリー・ノーレッジは面倒だと言って来なかったらしい。
「取るだなんて人聞きが悪いわお姉様。借りただけ…」
「あぁ、やっぱり悪影響しか及ぼさなかったわねあの白黒……」
まさに一触即発、姉妹喧嘩になるのも時間の問題だろう。
だが、今回に限ってはそうはならないだろう…
黒無の中のアイツらが騒ぎ出しているのだから。
『無難にメイド長に丸投げ』
『フランとエスケープ』
『後ろにベットがあるじゃろ?』
(……詰んでる?)
黒無の人外的天才思考は瞬時にシミュレートを始めた。
上の選択肢では、咲夜が主の意見を尊重し動かず。
真ん中の選択肢では、一晩中館を飛び回る。
下の選択肢では、具体的な行動が明言されていない為にシミュレートは断念となった。
だがこうなっては選択すべき物は既に決定している。
クロナはフランドールの手をとった後、レミリアの元まで向かい、留守になった手でレミリアの手も掴んだ。
突発的な黒無の行動に吸血鬼二人は呆けた声を上げるが、黒無はその声を無視して、部屋のセンターにドンと置かれているキングサイズのベットに三人で倒れ込む。
「じゃあ、俺は寝るから…おや、す……」
「え、ちょっとクロナ!?」
「あ〜あ、クロナ寝ちゃった…じゃあ私も寝るね。おやすみなさいお姉様、クロナ」
「あぁ、もういいわ。咲夜、今日はここで寝るから、貴女も業務が終わり次第休憩に入りなさい」
咲夜は微笑ましいものを見たような顔で綺麗な礼を取り退出した。
地下室では、三人の幼い少女の寝息が闇に溶ける程度の微かな音で響いていたそうな……
──(あっぶねぇ!!!)
黒無の受難はこうして終わりを告げ、そして明日のことを考え黒無の胃を痛めることになっていた。
ウム、ここまでよくぞ読み切った…又は飛ばした…
まぁ次回を期待することも無く今日という日を忘却するといい。