Sperareー稀望の物語ー   作:雪宮春夏

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 あけましておめでとうございます!
 雪宮春夏です!!

 昨年は更新停止の多発した一年になりまして、申し訳ございません。

 本年も止まらないと言い切る事は出来ない私ですが、それでも良ければこれからも宜しくお願いします。

 では、久々で番外ですが、どうぞご覧下さい。







 「注意」

 本編ネタバレの可能性があります。それが嫌だと言う方は閲覧をお控え下さい。


外伝 ある朝の日のこと

「はよっ! きづ、すげぇ髪だな?」

 背後からかけられた声に振り向くと、突然髪がぐしゃぐしゃとかき混ぜられる。

「まも………山本くんっ! 何すんの、止めてよっ!!」

 慌てて手を振り払おうとするより早く、手を離してこちらに笑いかけてきたのは端整な顔立ちの少年だった。小さい頃から仲のよい、幼なじみの一人、山本鎮である。

「他人行儀なのな、きづ。昔みたいに“まもちゃん”で良いんだぜ?」

 朗らかに笑う幼なじみに対して、ムッと顔をしかめる。

「何言ってんの? そんなの出来ないよ! もう子供じゃないんだから!!」

 ぷくっと頬を膨らませる絆奈の様子はしかし、まだ十分子供といって通るものだ。

「そっかぁ?」

 そこには敢えて触れずに、鎮は笑いながら絆奈の隣を歩く。

「あっ、きづさん!」

 学校に着くと廊下の方からかかる声。

 振り向くと朝練の終わった直後なのか、学校指定の体操着姿でパタパタと走ってくるのは見慣れた翡翠の瞳で、それは大好きな人を見つけたというようにキラキラと輝いていた。

「お早う! フユちゃん!!」

 勢いよくハイタッチする少女二人の、自分の時と違う馴れ馴れしい態度に、鎮の中では言い知れない何かが蠢いた。

「おはようございます。きづさん! ……鎮さんも」

 ついでのように添えられた言葉に、一言で帰すと、もう一人の幼なじみ、獄寺冬瓜は母親譲りの天真爛漫な笑みを浮かべて、2人から離れた。

 制服に着替えるために更衣室へ向かうのだろう。

「朝から部活なんて凄いよね……。フユちゃん。私なんてそこまで体力ないから尊敬しちゃうや」

 へらっと笑みを浮かべた絆奈と教室へ向かいながら当たり障りの無いように答える。

「まぁ、新体操部のエースだもんな。並中、昔は全国にも行ったこと有るって言うし、期待されてんじゃねぇの?」

「それをいうなら山本くんだって、剣道部の主将じゃん。まだ一年生なのに」

 二人とも凄いよ。私と違って。

 続けて呟かれた言葉に、咄嗟に鎮は言葉を探す。

 母子家庭で育ったせいか、絆奈は自分にあまり自信を持たない。

 勉強も運動も、決して出来ない方では無いのだが、己や冬瓜と並べて、自分を卑下してしまう所があった。

「俺の場合は、家に、じいちゃんがいるからな。いろいろ教えてくれっし……独学でエースになった冬瓜と比べんのも、どうかと思うぜ?」

 暗に師となる人が凄いのだとすり替えて、鎮は笑った。

 そう、絆奈が気にする事は無いのだ。俺は。……いや、俺たちは。

(……強くなきゃ、傍にいれねぇんだから)

 それは、いつもの朝の風景。

 そこに芽生える不安を飲み込んで、今日も山本鎮は、ただ、笑みを浮かべていた。

 

 




 投稿可能なギリギリの文字数となりました……!!


 それでは次は、近いうちに……!

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