GIRLS und PANZER 〜夢の末路〜 作:なめろうP
万歳!万歳!万歳!____
目の前に広がる、生徒の群れ。時刻は午前8時を少しまわったあたりか。私、『西絹代』は、今から行う演説の為、全校生徒の前に立っている。万歳の声が静まるのを待ち、私は生徒に呼びかけた。
「知波単学園の諸君!諸君らが賛成してくれた【大洗救援作戦】は成功した!悪しき文科省の役人共に、正義の鉄槌を下したのだ!大洗は廃校はを免れ、今もなお学園艦にて、学生生活を営んでいる。喜ばしい事だ。」
つい先日の事だが、大洗女子学園はまさに興廃をかけた戦をしていた。文科省の不当な言い分により、再度廃校に追い込まれる事となったのだ。近々行われる戦車道の世界大会に向けて、予算を捻出する為だったらしい。しかし、大会優勝校を廃校にするというのは許されざる行為である。大洗と親交のある高校は、こぞって対策を練った。我が知波単学園においても例外ではなく、戦車道履修者に限らず、学園全体で解決すべき問題として取り組んだ。その矢先に聖グロリアーナ女学院の『ダージリン』殿から各戦車道強豪校への通達があり、大洗救援の為の作戦が決行される事となったのだ。結果として、大洗女子学園の廃校は取り消された。我々の勝利である...はずだった。
「しかし!卑怯な文科省の役人共が我々にした仕打ちはなんだ!」
生徒達から次々に怒号が上がり、グラウンドは一斉に喧騒に包まれる。ある程度収まるのを待って、私は続ける。
「その通りだ!奴らは我々をはじめ、大洗女子学園に加担した学園に対し、資金の大幅な減額と生徒の削減をするように通達してきた!」
いよいよ生徒の声は強くなる。礼儀正しく秩序を重んじる知波単学園の生徒が、もはや暴徒と化す手前まで怒りを顕にしている。文科省は我々に対し、わかりやすく言えば経済封鎖に近い事を行った。大洗女子学園が廃校にならなかったため、その余波が来ることはある程度予測できた。しかし...。新入生の人数を4割削減、学園艦の維持費用のための出費の大幅減額。他の学園艦においても規制はあったようだが、あの時大洗に加担した学園に対しては特に厳しいものだった。
「知波単学園の勇猛なる生徒諸君!諸君らはこのまま文科省の規制に従う事を望むか!」
ふざけるな!と。生徒達は一斉に叫びだす。
「ならば戦え!大洗女子学園は、学園艦存続の為に戦った!我々とて同じだ!知波単学園の命運は諸君らにかかっている!我々は我々の手で、文科省からわが校を防衛するのだ!」
万歳!万歳!万歳____生徒達の声は、私が朝礼台を降りてからもしばらく続いた。
「お疲れ様であります、西隊長!素晴らしい演説でありました!」
朝礼台の下では、後輩の福田がこちらに敬礼していた。次に朝礼台で発表するのは福田だ。彼女の発表は、戦車道履修者を増やすための宣伝だ。少々か弱く見える彼女に宣伝をさせ、母性をくすぐるらしい。緊張で顔を強ばらせている彼女に返礼をし、朝礼台の後方へとまわる。私の今朝の出番はここまでである。ふぅ、とため息が出る。私は知波単学園戦車部隊の隊長であるだけで、決して学園の運営そのものに関わっているわけではない。にもかかわらず私がこうして演説をしたのは、知波単学園の生徒会____通称【大本営】から命じられたからだ。特に気にしてはいなかったが、知波単学園の戦車道履修者は、大洗を救った英雄であるという空気が学園艦中に蔓延しているようだ。そこで私に白羽の矢がたった訳だが...。正直に言えば、私も今回の文科省の対応には不服だ。新入生の人数はもちろんだが、資金が減るのは痛い。我が校の戦車は他校のものと比べるとはるかに性能が劣る。その上でアンツィオのように資金難となれば、後輩達が戦車道を続けることも難しくなる。かといって我々も大洗のように文科省に抵抗出来るのかと言われれば、難しいところである。大本営には、大洗の生徒会長のような頭の切れる人間がいない。戦車道で解決しようにも、我々は突撃主体の伝統から抜け出せないでいる。私がもっとうまく作戦を立てられれば良いのだが、西住さんのように出来る自信もない。
「福田ァ!マイクが入ってないぞォ!」
結局のところ、今は大本営の交渉に任せるしかない。朝礼台の上で可愛らしく焦っている後輩を見ながら、私は悩む事をやめた。
今回は知波単学園でした。西さんかっこいいですよね!映画では少々ポンコツ気味な場面もありましたが...。今作ではかっこいい西さんを書きたいと思っています。それではまたの機会に。