グラウンドには三つの人影があった。一つはグラウンドの端に立っているたぶん女の子だろう、どこかで見たことあるような気がするけど暗くて顔までは見えない。もう一つは一人目の隣に立っていた、白い学ラン?のようなものを羽織っている男だった、暗い中でも目立ってみえた。最後の一人は前の二人から少し離れた位置で学ラン男の方を見ていた、何か長い棒のような物を持っていた。
「……こんな夜中に何やってるんだ?」
さっきまで響いていた音もいつの間にか止んでいた。三人はしばらく何をするでもなくじっと睨みあっていた。辺りから音が消え、静寂が広がった。
「……っ!!!」
突然、学ラン男が消えた。次の瞬間、静寂を切り裂いてさっきまで鳴っていた音が再び聞こえた。同時に学ランの男が棒の男の目の前に現れた。何が起きたのか分からなかった、まるで学ランの男が瞬間移動でもしたとしか思えなかった。さらに今度は棒の男がその手に持つ棒を振り回したらと思ったら、学ランの男が大きく後ろに後退した、そして開いた間合いを詰めるように棒の男が前に出た。そこで初めて棒を振り回すことで風を切るような音が出ていることに気がついた。
あれは拙い、なんだか分からないけど絶対に危険だ。思わず足が後ろに動いた、砂を削るジャリっと言う音が出た瞬間、確かに一瞬だけだったけど棒の男がこちらを見た。見つかった。棒の男は大きく後ろに跳んで距離を取ると学ランの男達に向かって何か喋っていた、そしてすぐに俺の方に跳ぶようにして駆けてきた。
すぐさま踵を返し校舎に跳びこんだ。あれが何なのかは分からないけど絶対に追いつかれては駄目だ。後ろを振り向くことなく全力で走り続ける、階段を駆け上り廊下を突き抜け階段を下る。普段から毎日通っている学校の筈なのに今自分が何階どのあたりいるのか分からなかった。とにかく走った、走って走って走り続けてついに息が切れてきた。後ろに気配は感じない、思い切って振り向いてみた。そこには誰の姿も無かった。少しほっとして走るのを止め、視線を前に戻した。
「えっ……?」
窓から入ってくる月灯りに照らされて、男が立っていた。
「わりぃなボウズ、てめえには何の恨みもないが死んでもらうぜ」
「っ!!!」
息が詰まる。目の前のその男ははっきりいって奇妙だった、青いタイツのような服装にも目がいったが、それよりも男がその手に持っている物のほうに目がいく。それは槍の形をしていた、だけどそれは槍の形をした純粋な殺意の結晶のように感じた。善も悪も関係無くただただ殺す、それだけを感じた。
「せめて一突きで葬ってやるから安心しな」
死にたくない……いや、まだ死ねない、死ぬわけにはいかない。爺さんの意思と生き残ってしまった責がまだ残っている。俺は『正義の味方』にならなくちゃいけないんだ。だから俺は―――
「じゃあな、もしかしたらお前が最後の一人だったのかもな」
男が槍を繰り出した。心臓に向かって来る槍の動きがひどくゆっくりに思えた、ゆっくりゆっくりと槍が胸に突き刺さった……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
「すごいパーンチ!!!」
「……えっ?」
胸に刺さっていた、刺さりつつあった槍が突然抜けた。胸からはだらだらと血が流れ出て、意識が朦朧としてきている。ぼやけた視界には月灯りに照らされて輝いてみえる真っ白な学ランの背中が映っていた。
やっとこさ削板さんのすごいパンチが炸裂しました。
やっぱりこれが無いと削板さんらしくないですからね。