遠坂凛は今にも死にそうな顔をしていた。
何か瀕死の怪我を負ったとか、病気で苦しんでいるとか言うわけではなく、活動を休止していた脳が不完全に覚醒し、意識が朦朧として思考が停止しているのが顔に現れているのであるる。
……ようするに遠坂凛という少女は朝は苦手なのだ。
脳で考えることなく自然と足が扉の外へ向かう、そのまま洗面所に行き顔を洗い脳を完全に覚醒させるという行動がほぼ無意識で行われる。
だんだんと覚醒して行く脳で凛は昨晩のことを思い出していた。
サーヴァントの召還を行った所までは覚えていた、そこで失敗して期待していた成果は得られなかったことも思い出した、そして失敗して出てきたサーヴァントが派手に家を吹っ飛ばしてほとんど瓦礫の山と化した我が家で、唯一無事だった部屋で眠りについたことも思い出した。
「……瓦礫の山?」
凛は今使っている洗面台をじっと見た。次に正面の鏡、そして右左後ろと視線をやった。
「……あれ?」
確かに昨日は壊れていたはずだと思い、数秒間考え込む。
「あの根性男の仕業かしら?」
冷静になってみると根性男に掃除を押し付けてしまったが、悪いのは召還に失敗した自分で家が壊れているのも全部自分のせいなのでは? あれは完全に八つ当たりではないかと思った。
「とりあえず一言謝っときましょうか」
これからの主従関係をはっきりさせるうえでも、余計な禍根は残したくないと思ったし、仮にも相手は英霊なのだからきちんとした礼儀を持って接するべきだとも思った。
さっそくラインを探って根性男のいる部屋を見つけ、そこへ向かう。
ドアを開けるとそこには正座して頭を床に擦り付ける根性男の姿があった。
「すまん! 俺としたことが家を壊したことを謝るのを忘れていた!」
土下座であった、凛は一瞬とまどったが、『常に優雅であれ』という遠坂の家訓が頭をよぎった。
「あら? 気にしないでいいわよ、あれは私にも非があることよ」
「いいや、それじゃあ俺の気が済まない、根性を鍛え直さないといけない!」
そういって根性男は立ち上がり腕を組んで仁王立ちをした。
「さあ、俺に根性の入った一発を食らわせてくれ!」
ようするにけじめをつけたいから一発ぶん殴ってくれということだろう。
「ふうんなるほど、伊達に根性根性言ってるわけじゃないのね」
凛は落ち着いてはいたが、昨晩のストレスはまだ残っていた。向こうからやってくれと言っているのだから、むしろやらないと無礼だろうと適当な理由を付けて、ストレス解消の的にしてやろうと思った。
「英霊に効くとは思えないけど一応ガードはしなさい」
そう言うと人差し指を根性男をむけて『フィンの一撃』を放った。
「うおお! なかなか根性のある一撃だったぜ」
そうは言ってるがダメージを受けた様子はない。
「まっ、こうなるとは思ってたけどね、これで家の件はお互いチャラよ」
「おし分かった! それで、お前が俺のマスターでいいんだな?」
「ええそうよ、私は遠坂凛、あなたのマスターよ」
「そうか凛! 俺は削板軍覇だ! これからお前を全力で守ることをここに誓う!」
「契約成立ね」
悪い奴ではなさそうだし、召還の時に持っていかれた魔力量を考えると心配していたほどハズレではないのかもしれないと凛は思った。
「ところであなたたった一晩でどうやって家を直したのよ」
「根性だっ!!!」
「…………」
前言撤回、やっぱり心配になりそうだった。
根性があればなんだって出来る!
次回くらいからはバトル展開いれたいなあ