「遅行遅刻ぅぅぅーーー!!
まったく、藤ねえときたら……
「テストの採点があったらしいですね」
「藤ねえはもう少しおとなしくしていられないもんかねえ」
「でも、元気があっていいじゃないですか」
「まあ、それが藤ねえのいいところだしな」
そんな雑談を桜と交わしながら学校へ向かう、いつもの朝の風景だ。
「それじゃあ先輩また」
「ああ」
学校に着いて桜とわかれた。まだ授業が始まるには少しはやい時間のためか、学校には部活の朝練の連中がちらほらいるくらいだった。
俺は学校に入りまっすぐ自分の教室には向かわず、生徒会室に向かった。
「一成いるか? 入るぞ」
向こうからの返事を待たずにドアを開ける。そこには俺のクラスメイトであり友人である柳洞一成がいた、机に向かって何かの書類を難しい顔で見つめている。俺が入ってきたことに気がついて顔を上げた。
「衛宮か、朝早くから来てもらってすまんな」
「気にしないでくれ、それよりお前のほうこそ朝から大変そうだな」
「うむそうなのだ、この学校は文化系の部活への予算割がひどくてな、なんとか予算を回せないものかと思案していたところだ」
「生徒会長も大変だな」
「うむ、それでだ衛宮、そこにあるそれなんだが……」
一成が指を指した先には一台のストーブが置いてあった。
「これか、ちょっと見てみるよ」
「悪いな」
あらかじめ部屋に置いておいた工具箱の中からいくつか工具を取り出して、ストーブの様子を見る、たぶん電気系統のトラブルだな。
「直りそうか?」
「ああ、これならなんとかなりそうだ」
「かたじけない」
一成はよく古めかしい言葉を使う、寺の子どもだからだろう。
「いいって別に、俺が好きでやってることだしさ」
誰かの助けになれるならそれでいい、だから一成が申し訳なさそうにするようなことじゃない。
「ただちょっと集中してやりたいから、悪いけど外に出ていていくれるか?」
「デリケートな作業だな、うむ衛宮の邪魔はせん」
一成のその口調に思わず笑みがこぼれる。
部屋の戸が閉じて一成の気配が消えるの確認して、ストーブに向かう。
「デリケートか……確かにそうなんだけどな」
ストーブを修理するのに、人が近くにいて出来なくなるような繊細な作業はない。ただし、それは『普通』の場合だ。近くに人がいると集中しづらいというのも確かにあるが、俺の場合それ以外にも理由がある。つまり俺は『普通』ではないのだ。
俺はストーブに手を当てて、ふうっと息を吸い集中する。まわりの音が耳に入らなくなる。
バチッ!と電気が流れるような感覚が体の内側に走る。
――――配線がいくつか切れているな
――――あとは……大丈夫か
「……ふう」
力を抜いて集中を切った途端に、電気のような感覚も消えてなくなり、雑音が耳に入ってくるようになる。そして工具を取り出して、ストーブの修理にかかる。
今俺はストーブの内側を『見る』ことなく『把握』した、これが俺の『普通』じゃないやり方だ。
つまり俺は『普通』ではない『神秘』である『魔術』を使うことができる。
遅筆で申し訳ありません。
いくらか書き溜めていたのを誤って消してしまいまして、しばらくショックでポカーンとなってました。バックアップの取り忘れには気をつけたいです。
あといまさらですが、誤字脱字、文法の間違いなどがあれば遠慮なくご指摘ください。